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December 8, 2007

過ぎ行く「ばらの騎士」イヤー

●「ばらの騎士」2007シリーズということで、野口方子さんのドレスデン国立歌劇場『ばらの騎士』『サロメ』上演批評を掲載。観た人も観なかった人もどぞ。
●今年は新国立劇場、チューリヒ歌劇場、ドレスデン国立歌劇場と「ばらの騎士」が3プロダクションもあったわけだけど、ワタシは全部スルーしてしまった。こ、こんなはずではっ。
●「ばらの騎士」って4人の登場人物設定が絶妙っすよね、男性女性若者非若者いろんな立場からいろんな見方ができて。もう若くない元帥夫人、その愛人である若者オクタヴィアン、同年代の夢見がちな感じの娘ゾフィー、成金貴族で煩悩まみれなオックス男爵。基本視点は元帥夫人に置かれているから、男性でも「もう若くない女性」の視点で見るのがフツーだろう(オクタヴィアンに現在形で共感してこのオペラを観る男性はきっと少ない。若者視点でもこの男はどちらかといえばうざい)。
●でも若者だったときに想像できなかったけど、今ならありうると思うのはオックス男爵視点。ある面でもっとも現実的な存在。なにしろ恐ろしいことに、昔は元帥夫人にすごい年上感を感じてたのに、今やオックス男爵だって年下だ。どこかで見かけた設定だと、オクタヴィアンは17歳、ゾフィーもたぶん17歳以下、元帥夫人が32歳以下(やれやれ)、オックス男爵が35歳くらい。オックス男爵ですらまだまだフルコートでサッカーできるくらい若い。十分共感可能というか、むしろ唯一共感可能でもおかしくない。
●「ばらの騎士」の少し未来として、オクタヴィアンとゾフィーの美しい魔法のような瞬間なんてのはあっという間に終わるというのは容易に想像できる。オクタヴィアンはふたたび元帥夫人の寝室でけだるくゴロゴロしてるかもしれないし、瞬く間にオックス男爵みたいな男に成り果て、ゾフィーが新しいカンカンと仲良くしているかもしれない。あと今なら演出上ありえる展開としては、オクタヴィアンは結局オックス男爵と結ばれるという線だな。オクタヴィアンはズボン役なんだから、キャストによってはこれが唯一美男美女のペアということもありうるという点をうまく伏線として活かしたい(何によ?)。

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