●先日、朝日の夕刊見てたら、映画「つぐない」評が載ってたんだけど、思いっきり豪快に筋を割っていた。おかげで先日ご紹介したマキューアンの原作「贖罪」にとても忠実だってことはわかったんだけど、いいんすかね。
●これから上映される映画を一本ご紹介。映画「ラフマニノフ ある愛の調べ」。これはもう「のだ◎め」どころじゃないっすよ、クラヲタ・ポイント突きまくりで。史実と虚構が実にバランスよくミックスされた本格伝記風映画、しかも全編ロシア語。しかし話の内容は字幕を読まなくてもなんの場面かわかりそうなくらい、音楽好きにはなじみ深いエピソードが続く。
●本筋としてラフマニノフと彼をめぐる女性たちっていう核があるんだけど、まあそれは置いといて(おいおい)、クラヲタ的に盛り上がれる場面を挙げてみる。たとえば、ラフマニノフの交響曲第1番初演大失敗シーン。史実として、この曲の初演は失敗だったんだけど、それにはオーケストラの演奏がひどすぎた、特に指揮をしたグラズノフが酔ってたっていう話があって、それをちゃんと映画内で再現してくれている。その場に臨席してたリムスキー=コルサコフがこれまた本物そっくりでおかしい(ていうかラフマニノフ役もかなり本物に似てる)。このとき、ロシア五人組の一人キュイが新聞で苛烈な批評を寄せた話は有名だ。「地獄の音楽院の課題にこの作品が交響曲『エジプトの7つの災難』として提出されれば、きっと地獄の住民を熱狂させるだろう」みたいなヤツ。あれもこの映画のなかでほんの一瞬だけど間接的に登場してサービス満点。
●で、音楽面のストーリーでハイライトになるのはピアノ協奏曲第2番、やっぱり。交響曲第1番で傷ついたラフマニノフが、精神科医ダールの治療で立ち直る。ダールがラフマニノフに向かって懐中時計をぶらぶら左右させて「あなたは眠くな~る」みたいなのをやってくれちゃう。まさに「のだ◎め」の千秋真一飛行機恐怖症克服の元ネタともいうべきシーンがここに!
●ロシア時代だけじゃなくて、アメリカに渡ってからのスタインウェイとの微妙な交流なんかも描かれていて、96分ながら中身はもりだくさん。虚構のさしはさみ方もうまい。ハリウッド的な快速テンポで語られる話ではないので、古典的なスケール感で悠然と味わうのが吉。4月19日(土)Bunkamuraル・シネマ、銀座テアトルシネマ他にて全国順次公開。
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