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May 16, 2008

僕たち「海外組」がホンネを話した本(秋元大輔編著)

海外組にもいろいろある●最近読んだサッカー本でいちばんおもしろかったのがこの本。『僕たち「海外組」がホンネを話した本』(秋元大輔編著/東邦出版)。「海外組」のインタビュー集なんだけど、中田ヒデとか中村俊輔が出てくるわけじゃない。その代わり、世界にはこんなに「海外組」がいたのかと思うほど、いろんな選手や元選手が登場する。メジャーなところでは日本からパラグアイ、メキシコ、スペインと渡り歩いている福田健二とか、ポルトガル、フランスに渡って帰国した広山望とか。あ、城彰二もいるか。オランダに行ってた平山相太とか。でも世界はもっと広い。
●たとえばリトアニア・リーグでUEFAカップ予備予選にも出場した経験を持つ竹中穣(知ってた?)。いったいどうやったら日本のサッカー選手がリトアニアでプロになるかと思うでしょ。大学出てイングランドに行ったわけですよ。で、まずは3部リーグあたりに履歴書を送ったりする。でもクラブから声がかからないから、街で草サッカーする。どんどん街に草サッカー仲間が増えて、知り合いだらけになる。そしたら知り合いにサッカークラブの下部組織のコーチがいて、事情を説明したら代理人を紹介してくれた。その代理人がリトアニアのクラブの話を持ってきたから、ぜんぜん知らない国に渡って選手になった、と。そういう信じられないような話だらけ、この本は。
●デンマーク・リーグでプレイした橋本卓、ポーランド、ルーマニア2部リーグ、カメルーン(!)、イタリア2部と渡り歩く直川公俊、シンガポール、オーストラリア、マレーシア2部を経由してJリーグに帰った石田博行……。ヒデや俊輔の話よりもずっとおもしろいに決まっているではないか。和久井秀俊の話もおもしろかったなあ。アルビ新潟シンガポールでプレイして、代理人に紹介されてスロヴェニア2部に移籍、そこで活躍して今度はオーストリア2部を紹介されて移籍。オーストリアじゃ助っ人外国人としての扱いだからプレッシャーが半端じゃなくて、負けると道を歩いていても文句を言われるし、サポーターから後ろから殴られたこともあったという。それにしても、こういう下部リーグの世界でもちゃんと代理人ビジネスが発達してるってのにも感心させられる。
●あ、やたらマイナーなところに注目してしまった。メジャーなところもありますよ。名古屋で現在大活躍中のヨンセンとか。ノルウェー・リーグを語ってくれるんだけど、ベテランだから味わい深いことを言ってくれるんすよ。「プロの条件は、人生で全力を尽くすこと。そしてもっとも大切なことは、どんな状況でも楽しむこと」とか。逆説的に言えば職業人の世界は楽しいことばかりじゃないってことを言っている。だからこそ楽しむことがいちばん大事であるという話。