●いよいよ、出ました。片山杜秀の本(2)ということで「音盤博物誌」。前作「音盤考現学」は、吉田秀和氏に「近来の快著」とまで絶賛された。その第2弾、おもしろくないはずがない。いや、まだ手にしたばかりなのだが、なんと、初版限定で「袋とじ」付録が付いている! 久しぶりだな~、袋とじの本って。中身は「カタヤマモリヒデの作り方」と題された片山氏のトークセッションを収めたものなんだけど、小見出しに「本を目方で買う男」とかあって笑ってしまった。
●で、本編は「レコ芸」連載「傑作!? 問題作!?」をまとめたものだ。100回あった連載(8年以上続いた長寿連載だった)の後半を収録。前作同様、その切り口は実に鮮やか。ナタリー・シュトゥッツマンが歌った「冬の旅」の回についての大見出しが「生産しない女」(笑)。まず小見出しを「インドの中心で生産を叫ぶ」と掲げて、芥川也寸志の「エローラ交響曲」から論じる。続いて「欧州の中心で非生産と叫ぶ」として、このアルトが歌う「冬の旅」を解題する。あちこちの見出しを拾い読みしただけで楽しくなる本などめったにない。
●博覧強記によって一見無関係に見える事柄にも文脈を創造的に与えてゆく。これが批評というものだろう。
May 30, 2008