●ああ、いかん。昨夜も深夜のバイロイト音楽祭生中継につきあってしまった。ティーレマンの「ワルキューレ」。第1幕だけのつもりで聴きはじめたが、あまりにすばらしくて延長。第3幕の頭まで粘ったところでバタンキュー(死語)。幕間に長い休憩が入るから、この時間帯だとどうしても最後まで聴いてられない。一昨夜の「ラインの黄金」はヴァルハラ城入城に至らなかったが、昨夜の「ワルキューレ」ではブリュンヒルデがヴォータンに勘当されずに済んだ。このまま全四夜、前半だけ聴いていると、いつの間にかハッピーエンドな「指環」が完結するかも! なわけないか。
●よく「写実的な演出」って言い方をするけど、「ニーベルングの指環」の場合はもともとが神話世界だから、そういう場合は何て言えばいいんだろ。「ト書きに忠実」っていうレベルじゃなくて、真に神話的な、どう見ても本物の神や巨人や侏儒や大蛇が登場する演出というのはたぶん存在しないと思うのだが、音楽だけを聴いているときはワタシはそういうCGをバリバリと使ったような映像を空想している。特に「ワルキューレ」はそう。
●ワタシの脳内舞台では、ワルキューレとは重力を感じさせない存在だ。ワルキューレたちはペガサスに乗って空を飛ぶ。飛ばないワルキューレはワルキューレじゃない。ブリュンヒルデが登場するときは、基本的に空から飛んでくるので、(想像上の)観客の視点は空中のブリュンヒルデにある。戦場で戦死した英雄を回収すべく地表へと降下するとき、視線は下から見上げるのではなく、上からだんだんと大きくなる地表を見下ろすことになる。横にはほかのワルキューレたちも飛んでいる。彼女たちは重力から自由だ。
●さらにワルキューレたちは痩せていて、下肢が長いことになっている。ワルキューレたちはみな八頭身、いや九頭身くらいの長身痩躯で、長槍を装備している。下肢がやたらと長くウェストは細い。すなわち、「新世紀エヴァンゲリオン」における汎用人型決戦兵器、あるいは「DEATH NOTE」における死神(リュークとレム)のような体型をしている。ワルキューレが迎えるのは死者であり、彼女たちが持つ死のイメージは、エヴァや死神たちと重なる。
July 30, 2008