August 26, 2008

中古CDはあっても中古データはない

●昔さんざん中古CDショップにはお世話になってて、今でもそのような場所では本能的反射的にワクワクしてしまうんだけど、「中古CDショップ」ってものは外見上十年一日がごとく変わっていないように見えて、中身というか意味合いは恐ろしく変化したと思う。前は「だれかが一度買ったけど気に入らなかったか飽きたかしたCDが売られている場所」という認識だった。でも、今は違う。
●中古CDをPCに突っ込み、リッピングして1bitたがわぬ同一のデータをハードディスクに保存し、さらにそれを簡便に扱うためにmp3とかWMAとかに変換してみると、はっと気が付く、このデータはまさにiTunes等々の音楽配信サイトから購入したデータに等しいではないか(しかもDRMも施されていない行儀の良いデータだ)。「中古」を買ったと思ったら、いつの間にか「新品」ができあがってしまうというマジック! デジタルってすばらしい。放送とか通信とかに先駆けて(CDという形で)いち早くデジタル化を英断した80年代前半の音楽界は、こういう近未来を予期してなかっただろうけど。
●だから今、中古CDショップに行くと、そこは「音楽の原データ置き場」に見える。ワタシはもうそんなことはメンドくさくて絶対やらないと断言できるけど、もし今20代前半くらいの若者だったら(つまり時間と物欲と好奇心は有り余るほどあるけど、それ以外はなんにもない状態なら)、中古CDショップで購入したCDを次々とリッピングして(必要な場合は解説書やジャケットもスキャンして)、その後、同じCDを中古品としてショップに売るだろう。中古CDの買値と売値の差額を、iTunes等でデータを購入したときの価格との比較対象とみなしたかもしれない。容赦も妥協も愛もない即物的な方法で、もっとも効率よく聴きたい音楽を大量に聴く方法を探し出したにちがいない。
●でもまあ、今はそこまで飢えてないし、欲望より節度が大切だと思っちゃうから、想像しただけでお腹いっぱいで、そんなことよりバーゲンコーナーに奇跡の出会いがあるんじゃないかとか、フツーにヲタっぽいロマンを求めてしまうだけなんであるが。

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