August 28, 2008

「画家と庭師とカンパーニュ」(ジャン・ベッケル監督)

●まだ上映していると思うが、少し前にBunkamuraの映画館で「画家と庭師とカンパーニュ」を観てきたのだった。これは全力でオススメ。あちこちの映画サイトに「男の友情物語」とか「フランスの田舎が美しい、エコでロハスな癒しの物語」とか「泣けます」って書いてあっても、ヤな感じと思ってはいけない。
●パリで成功した画家が、田舎の別荘にやってきて庭師を雇う。すると、それは大昔に悪ガキ仲間だった同級生だった。画家は庭師と対話する。本質的にはそれだけの話なんだけど、今のワタシたちにとってこれほど同時代的で切実なテーマを描いたものはない。この話、前提として二人の階級差がある。画家はオヤジが薬屋で、家業を継がずにパリに出てアーティストとして成功した男。成功はしたけど他人への共感能力が著しく低く、家庭はバラバラ。庭師は労働者階級の出身で、ずっと地元に残ってて、国鉄で長年働き、今はリタイアして庭師をやってる。質素に暮らし、単調な日常の中に限りない喜びを見出している。可哀想なのは画家のほうで、豊かで幸せなのは庭師のほうだ。画家は一方的に庭師から人生の喜びを学ぶ。忌まわしい言葉なのであからさまに書かないが、「勝ち」とか「負け」とかで人の人生を二分する表現があるけど、ああいう世界から宇宙の果てっていうくらい遠い幸福観が描かれている。
●庭師と出会った後に、画家がパリにもどって知人のギャラリーに顔を出すんすよ。どれもこれもなんだかよくわかんない黒い絵が飾ってある。そしたらそこにいた若い気取った男が、小難しい批評言語みたいなのを並べて屁理屈こねて絵を褒める。以前だったらこの画家も話を合わせたかもしれないんだけど、庭師の素朴な生き方に感化された後だから、この若者をコテンパ(死語)にやり込めちゃう。抱腹絶倒。こんな痛快なシーンはないっすよ。
●あとフランスの田舎の家庭菜園とか猛烈にステキでビバ農業な気分になれる。そこで……(続く?)。

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映画を感じて考える~大作、カルトムービー問わず映画批評 - 画家と庭師とカンパーニュ/Dialogue avec mon jardinier(映画/DVD) (2010年2月27日 11:05)

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