August 29, 2008

北京の鉄人魚群

●猛スピードで記憶の彼方の過去完了となりつつある北京五輪、振り返ってみればいちばんおもしろかったのは何かといえば、それは日頃なじみレスなトライアスロン。五輪の「関心のなかった競技に目を向ける」力って偉大だ。そうかあ、トライアスロンって水泳からスタートするんだ、それから自転車に乗って、最後に走るんだあレベルな無知だった自分にもやってきた感動の嵐。
魚群。これは人じゃありません●まず水泳がスゴかった。プールの水泳競技と全然違う。あれって海じゃなくて湖だったのかな。自然の中で泳ぐから、レーンってものがないんすよ。だからみんなスタートしてしばらくしたら、ワァっと群れになる。何十人もの人間が群れになって泳いでいる。先頭から最後尾まで三角形になって泳ぐ群れ、それはどう見ても「魚群」。いやホントは「人群」だが、観戦してるワタシはほとんどサンマやイワシを見つめる漁師目線。人間ってこんなに泳げるんだ。今自分が未知の惑星からやってきた地球探査隊の一員で、この場面を目にしたとしたら、きっと勘違いする、この惑星には群れを成して泳ぐ水陸両棲哺乳類が文明を築いていると。なんか感動するでしょ。
●あと自転車(バイクっていう)。みんな牽制しながら走ってるんだけど、序盤で3人だけ圧倒的に先行する。でも解説の人はこの3人をまったく相手にしてなくて、地力のある選手たちじゃないから、いくらバイクでリードを広げても、ランで遅れるから気にしなくていい、後続の有力選手たちからは眼中になしだって言う。でもこの先行した3人、それぞれ国籍はバラバラなのに3人でドラフティングしながら助け合うんすよ。
●つまりバイクは先頭がキツくて、後ろのほうはスリップストリームに入れるから楽チン。なので、3人で「オレたちが独力でいくらがんばってもメダルはムリ。だったら3人で交代で先頭に立って助け合おう。そうすれば表彰台に立てるかもしれない」という交渉が無言で成立してる。でも実力がバラバラだから、遅れそうになる選手も出てくる。そんなときは、キツそうな選手を後ろにおいてあげて、なるべく3人で走ることで優位を確保しようとする。本質的に敵同士なんだけど、助け合わない限り3人全員確実に負けるという戦略性がおもしろかった。結局、この3人は途中で一人が脱落し、残った2人もランになった途端に後ろの集団にあっという間に追いつかれてしまったが。
●と楽しんだんだけど、後で知ったが本来のトライアスロンではこういったバイクでのドラフティングは禁止されているそうだ。他人の助けを借りずに、独力で走りきってこその鉄人という考え方。オリンピックのようなトップレベルの大会では、力が拮抗しててどうしても集団にならざるをえないということなのか、解禁されているらしい。

トラックバック(0)

このブログ記事に対するトラックバックURL: http://www.classicajapan.com/mtmt/m--toraba.cgi/979

このブログ記事について

ひとつ前の記事は「「画家と庭師とカンパーニュ」(ジャン・ベッケル監督)」です。

次の記事は「来週は早朝バーレーン」です。

最新のコンテンツはインデックスページへ。過去に書かれた記事はアーカイブのページへ。

ショップ

国内盤は日本語で、輸入盤は欧文で検索。