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2008年12月アーカイブ

December 31, 2008

2008年を振り返らない

●今年もいよいよあとわずか。この一年を振り返って見ようかと思ったけど、一年は長い、そしてベストCDとかベストコンサートを挙げようかなと一瞬考えて、手帳をペラペラとめくり返して見るとやはりこの一年は長かった、そして何かを選ぶってのは難しいなあと嘆息しつつ、2008年をたった今ここで回顧しない。と、去年も書いた気もするけどまあいいか。
●でも2008年、ワタシの音楽生活でいちばん何が変わったかといえば、たぶん家で音楽を聴くにあたって、PCを通じて聴く時間のほうがCDプレーヤーで聴く時間より長くなった「元年」みたいなことかも。いや、CDは相変わらず中心に位置するものではあるんだけど、ネットラジオをつけっぱなしにする時間が増えたというか。自分で選ぶより、勝手に飛び込んでくるものを浴びたい気分ともいえるし、CD棚をもう増やしたくない、むしろ電子化して減らしたいっていうか。あと、CDとiTunes Plusなら後者を選ぶ、でもiTunes PlusじゃないんならCDのほうを選ぶ、でもブックレットが欲しいと無条件にCD、とはいえDGみたいにmp3ダウンロードできてブックレットがPDFならmp3を選ぶとか、中身を入れる容器をどうするかにいちいち個別に迷ったりしたのが2008年。「アルバム」って概念はどこまで「アルバム」なんすかね。
●それから音源のDRM(著作権管理機能)関係。クラシック音楽界に関しては、メジャーレーベルが率先してDRMを過去の遺物にしつつあるというのが現状認識で、リスナーフレンドリーで吉な状況なんだけど、唯一惜しかったのはAmazon mp3のサービスが2008年中に日本で始まらなかったこと。一年前は始まるって言ってたのに。
●コンサートは自分としてはよく通ったほう。今年は革靴でたくさん歩いた。
●きわめてすばらしいコンサートに出会うと、「ああ、今ここで体験しているこの時間が終わらないでくれ。先に進まないでくれ」っていう気持ちになるじゃないっすか。まれに。それと同様に、CDを聴いていて「ああ、これはすばらしすぎる、だから先に進まないでくれ」という感情がわいて、その結果として「ストップボタンを押したくなる」ことって、ないですか、ワタシはある、きわめてまれに。すばらしすぎるから、聴くのを止めたくなる。実際には止めないんだけど、なんていうかなー、理屈を付けるとすると「ふと聴きはじめてしまったが、この喜びを今味わってしまうのはもったいない、もっと準備があって驚きながら聴くべきだ、今の自分はそんな状態じゃない」的なロジック。
アンデルジェフスキのベートーヴェン●2008年でそんな気分になったのを一つ思い出して見ると、このかわいそうなくらい名前の日本語表記が定まらないアンデルジェフスキのベートーヴェン。これ、バガテルop126のほうが先にあって、続いてピアノ協奏曲第1番が入っている。コンチェルトの余白にバガテルじゃない、逆だ、バガテルの余白にコンチェルトなのだ! ってのは言い過ぎとしても、こんなにみずみずしいバガテルはグールド以来。偏愛しがちな曲でもあり、枯れてて、でも潤ってる。なんていうかな、若くて優秀なピアニストって毎年たくさん出てくるじゃないっすか。優秀じゃない人を探すほうが難しいくらい。みんな超優秀。尊敬すべき。でもみんながグールドとかホロヴィッツではない。グルダでもないし、ミケランジェリでもない。優秀っていう以上のもの、どんなに小器用な常人ががんばってもマネできない領域があって、そこではこんなシンプルなバガテル弾いても「ストップボタンを押したくなる」気分にさせることが可能。才能に疑いがないってすばらしい。
●あけましておめでとうございます。まだあけてないけど、前もって。よいお年を。

December 30, 2008

天皇杯準決勝 マリノスvsガンバ大阪@国立競技場

マリユニ●天皇杯準決勝マリノスvsガンバ大阪。行って来ました、国立競技場へ。負けるために……。
●疲労やケガの影響、モチベーションの低下などもあってか、ガンバ大阪は今季見たことがないくらいに低調。事実上マリノスのホームゲームみたいな状態だったこともあり、ほとんど一方的にマリノスが攻めていたような気がする。が、これは幻想なんである。攻めていたというより、ボールを持っていたのであって、あたかもピッチの半分しか使っていなかったように見えて実は枠内シュートがきわめて少なく、まれにガンバがボールを持って攻めてきたときに感じるクォリティの差、それはうっすらとした屈辱。
●知ってる、本当はこのチーム、元旦の晴れ舞台に立てるような状態じゃない、シーズン中は降格争いやってた、監督もよくわけのわからん交代があった、実績を残していたスター選手たちはどんどんピッチからベンチへ、さらにはスタンドへ、別のチームへと去っていく、先発してる選手は若手だらけ、空中分解してバラバラになったチームをこれから土台から作っていく段階だ、きっと本当は、それなのにこんな準決勝に立っている、J1のクラブを2チームも倒したサガン鳥栖に勝てたおかげで。あの鳥栖戦も内容的には寂しかった。
●0-0で延長戦に突入、清水が退場となってからは耐える展開、なんとかPKまで持ちこたえるかなと思った116分に山崎雅人にゴールを奪われてしまった。
●「勝利を信じて~♪」みたいなのが、もうワタシはぜんぜん受け入れられない。もともと苦手なノリだけど、最近ますますそう。勝利を信じるってどういう意味なの? ちっともサッカー的ではない。だって天皇杯はプロもアマチュアも含めた日本最強のチームを決めるトーナメント戦っすよ。それはすなわち、日本のすべてのチームが敗北する(たった1チームを除いて)ってことであって、まさに必敗の戦いであり、どう考えても信じるなら勝利より敗北。というかサッカーは負けるものじゃないっすか。サッカーはミスのスポーツであり、敗北のスポーツ。1試合のプレイ機会のほとんどはミスに終わり、シーズンが終われば1チーム以外はすべて敗者になる。だからサッカーを見るんじゃないか。サポになった瞬間から決定付けられるもの、それは敗北。
●そう自分に言い聞かせて、帰り道の不快に耐える。敗北、寒さ、混雑、空腹、疲労感、ベンチに座る坂田@元ワールドユース得点王、クビになる大島、毎年行方不明になるブラジル人助っ人、ウチを出てヨソでブレイクする選手たち、清水の意味不明すぎるレッドカード、狩野の不用意なパスミスから感じた悪い予感……。ああ、すばらしく耐え難い。いいな、サッカー、いいな、スタジアム。また来よう。われわれは勝たねばならない、負けるために。

December 29, 2008

「チャイルド44」(トム・ロブ・スミス著)

●この週末からめっきりメールのトラフィックが減った。いよいよ年末年始モード。
チャイルド44●で、そういえばしばらく娯楽度の高い小説を何も読んでいなかったことに気づき、突如激烈な飢餓感を感じ、選ぶ楽しみすら放棄して盲目的に「このミス」今年度海外編1位を獲得したこの本をゲット、「チャイルド44」(トム・ロブ・スミス著/新潮文庫)。さらば現実、ハロー虚構、ワタシは読む、読み耽る、ということで何の予備知識もなく読み始めたら、最初の1ページから下巻の最後のページまで、そのまま明け方まで一気読みしてしまった。満喫。
●一応ミステリというフォーマットがあって、連続猟奇殺人犯がいて、それを追う捜査官が主人公となるわけだが、設定にひと捻りがある。舞台はスターリン体制下のソ連で、なんと、主人公は完璧なまでに体制に順応した国家保安省の高級官僚なのだ。ソビエト的な価値観において、人民による連続殺人などという体制を否定するような事件はあってはならない(連続殺人とは資本主義の病理から生まれるものだから)。そして隣人を密告して強制収容所送りにすることがソビエト的な正義とされる社会では、捜査官に求められるのは悪事の剔抉などではなく、体制の肯定なのだ。したがって、事件に対して、主人公がまず取った態度は「それは不運な事故であり、犯罪ではない」というものだ。なんてヘンなミステリなんだろ。
●で、これにトマス・ハリスの「ハンニバル」を連想させるイヤ~な感じの猟奇性と、歪な社会集団のなかで人間の尊厳をいかに回復するかという重厚なテーマが組み合わさって、大変読み応えのあるエンタテインメントに仕上がっている。これでデビュー作とは。1979年生まれという作者の若さにも驚く。自分の好みからすると小説中での「子供の扱い方」に少し引っかかるところもあるんだけど、ヒントになった実際の事件がその通りのものなのでしょうがない。いずれにせよ傑作。いちばん痛快なところはネタバレになるから言えないのが残念だ。
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●各エントリーの末尾に「はてなブックマークに追加」ボタンを付けてみた。これって意味あるのかなあ? いま一つ確信を持てないんだけど、どこかでどなたかのお役に立てますように。

December 26, 2008

年末年始は「第二」で

新日本フィルライブ
●日経BP「ネットで楽しむオーケストラ 新日本フィルライブ」に新たに一曲公開。アルミンク指揮でベートーヴェンの交響曲第2番。年末は「第九」もいいが、「第二」もいいぞ! ぜひお聴きいただければ幸い。
●今月はなんと「レコ芸」1月号のオーディオコーナーに原稿を書いた→「総まくり/ネット社会のオーディオ&ヴィジュアル」。でも「iTunesとは~」「ネットラジオとは~」みたいな超基本的なところからの話なので、このブログを読んでる方には目新しい話はほとんどないはず。
●一昨日の「ベーコン」がサンタさんバージョンになってた。おかしすぎる。

December 24, 2008

「カルメン」~ UKオペラ@Cinema

●メリクリ! 近所中で電飾がやたらと外に向かって明滅している、年々と激しくなり夜道が眩しい。
●新宿のバルト9で見てきたUKオペラ@Cinemaの「カルメン」。最近映画館でやたらとオペラを見てる気がする。このUKオペラ@Cinemaはソニーが配給するLivespireの一環で、オペラをデジタルシネマとして映画館で上映してくれるという企画。ロイヤル・オペラおよびグラインドボーン音楽祭で上演された舞台が対象で、現時点で発表されているのは4演目。まずはビゼー「カルメン」ではじまって、モーツァルト「フィガロの結婚」、フンパーディンク「ヘンゼルとグレーテル」、ヘンデル「ジュリオ・チェーザレ」と続く。
カルメンとドン・ホセ。グサッ! キャーー!●ワタシが見た「カルメン」は昨年のロイヤル・オペラでの公演で、パッパーノが指揮、フランチェスカ・ザンベッロが演出。カルメンがアンナ・カテリーナ・アントナッチ、ドン・ホセがヨーナス・カウフマン。主役に限らず全体に役柄に無理のないルックスの歌手が演じていて、しかも演出が非常に説得力があるというか、オペラ的お約束に頼らずにドラマをきちんと描き出していて、実にリアルな愛憎劇になっていた。特にヨーナス・カウフマンのホセは最高。1幕のマジメな伍長さんぶりと、最後の惨めで未練たらしいダメ男ストーカーっぷりとの対比がとても鮮やか。刺殺シーンとか、「やっぱこう来るよなっ!」と妙に納得。
●あと、ミカエラ(ノラ・アンセレム)の感じが悪いのもいい(笑)。このオペラで最大の性悪はミカエラだといつも思うので。あんた、ホントに田舎のホセのお母さんと会ってるの? 田舎の素朴な少女であることを特権的に利用しようと企む油断のならない女。カルメンよりずっと怖い。
●第1幕の前奏曲の後半、音楽が悲劇を予感させる部分で、舞台上にはすでにボロボロになったドン・ホセが捕まっている。覆面をした執行人がドン・ホセを引き連れる。つまり、これからはじまる舞台は、今まさに死刑を執行されようとするホセの思い出なのだ。残されたほんのわずかな生の時間で、初めてカルメンシータに出会ったあの日から今に至るまでのことを走馬灯のようによみがえらせたのだろう。これは苦い。でも物語中でも「カルタの場面」で示されるように、カルメンとホセの行き着く先は死しかない。
●「METライブビューイング」と似たように、開幕前にパッパーノが簡単な案内をしてくれたり、休憩中に予告編とかグラインドボーン音楽祭の紹介ビデオなんかが流れたりするのがフレンドリー。東京だけではなく、意外と地方都市でも上映されるみたいなので、リラックスしてオペラを観たいという方にはオススメ。生の舞台ともDVDとも違う、別種の楽しみがあると思う。ちなみに「ジュリオ・チェーザレ」は少し古くて2006年の舞台なんだけど、これはあのグラインドボーンでダニエル・デ・ニース(ドゥ・ニース)が歌ってるヤツっすね、ウィリアム・クリスティ指揮OAEの演奏で。

UKオペラ@Cinema上演スケジュール
http://www.livespire.jp/opera/schedule/index.html

photo by Catherine Ashmore © Royal Opera House 2007 Provided by Digiscreen
December 23, 2008

こんがりと焼けた表面部にテラテラと脂が溶け出して

●これはステキな新サービスだっ! bacolicio.us は、なんと、あなたのお好きなウェブページの画面に焼いたベーコンの画像を貼り付けてくれるぞ! やり方は超簡単。ベーコンを張りたいサイトのURLを http://bacolicio.us/ の後に続けるだけ。たとえば、このページであれば、こんな感じだ。

http://bacolicio.us/http://www.classicajapan.com/wn/2008/12/230115.html

 本家のサイトではwikipediaのこんなページに活用している。

http://bacolicio.us/http://ja.wikipedia.org/wiki/ベジタリアニズム

 さあ、みんなで自分のブログにベーコンを貼ろうぜっ!

目玉焼き

●後日検索用に自分用備忘録、遡って意味不明系で。◎近江楽堂で寺神戸亮「ヴィオロンチェロ・ダ・スパッラによるバッハ無伴奏チェロ組曲」。プレトークと2番、3番、6番。失われた楽器を巡るミステリー。くすんだ味わい。ヴァイオリンは自由だ。◎サントリーホールで読響定期。広上淳一指揮、ルノー&ゴーティエ・カプソンでブラームスの二重協奏曲、ブラームス~シェーンベルク編曲のピアノ四重奏曲第1番管弦楽版。巨匠降臨。猛烈楽しい。腹の底から。◎浜離宮朝日ホールでアリス=紗良・オット。「月光」と「超絶技巧練習曲」。20歳。ギャル成分。スリム。サイン会に長蛇100名。意外ヤバ、特に前半。◎オペラシティで「ル・ジュルナル・ド・ショパン」。ケフェレック、エル=バシャ、ジャン=フレデリック・ヌーブルジェ。「今からこの仕事の担当者を決める。えーと、担当はキミ。一人で全部責任背負ってやってね」と「えーと、担当はキミとキミとキミ。三人でうまく分担して協力しながらやってください」の違い。偶然発見ピアノ専用最強席。◎東京芸大奏楽堂で芸大合唱団、メンデルスゾーンのオラトリオ「パウロ」。若者だけが可能な成人合唱と少年合唱の間にある特殊声部。昔のJリーグサポ。

December 22, 2008

FIFAクラブワールドカップ2008決勝とか

●FIFAクラブワールドカップ(旧称トヨタカップ)2008決勝は、リガ・デ・キトvsマンチェスター・ユナイテッド。マンチェスター・ユナイテッドに退場者が出たにもかかわらず、リガ・デ・キトは攻め手がないなあと思っていたら、つい寝不足でウトウトしてしまう。不覚。
●かつて、海外サッカーの情報がほとんどなかった頃は、トヨタカップを観戦するのは大きな楽しみで、特に国立競技場で見たACミランのカッコよさというのはワタシのなかでは伝説になっている。でも今はいろんなことが微妙。だって、普段からNHK-BSでマンチェスター・ユナイテッドのリーグ戦は放映されてるわけで、日頃のプレミアリーグの信じられないようなレベルの高さを承知の上で、エクアドルのリガ・デ・キトとの戦いを「世界一決定戦」と定めるという「物語」を受け入れられるかどうか。
●試合後、ちらっとしか見てないけど、テレビのスタジオに来てなかったっすか、クリスティアーノ・ロナウドとルーニー。明石家さんまといっしょに映ってた気がするけど、あれは寝惚けてて夢を見てたんだろうか。翌日の「いいとも」のゲストがルーニーだったりして! いやあれは日テレじゃないからありえないか、でも「いいとも」が日テレだったら来てたかも、ルーニー。タモさんにお友達紹介してくださいって言われて、ファーガソン監督とか呼んじゃって、じゃあその翌日は教え子のベッカム呼んで、次に奥さんのビクトリアが出演して、その次の次くらいに日本の芸能人に戻ってくるのかなみたいなブーメラン的展開を期待したが、そうだ、「いいとも」はフジでした。
●クリスティアーノ・ロナウドって、いじめっ子だったと思うんすよ、絶対。今もいじめてるし、敵ディフェンダーを華麗な足技で。ロッカールームでパク・チソンがいじめられてませんように(謎)。パク・チソンのゴールが見たかった。京都にいたときから上手かったけど、ここまでビッグになるとは想像できなかったなー、パク・チソン。
●FIFAクラブワールドカップに優勝したら、翌年はヨーロッパ・チャンピオンズ・リーグへの参加資格がもらえるっていうご褒美はどうだろう。逆流する勝者。丸のてっぺんはどこだって言われたかのごとく、循環して何が「世界一」なんだかわけがわからなくて、でもACLなどの段階から目の色が変わる、全世界的に。

December 21, 2008

「クラシック新定番100人100曲」(林田直樹著)

クラシック新定番100人100曲●読了、「クラシック新定番100人100曲」(林田直樹著/アスキー新書)。最初の1曲から最後の100曲まで、前から順番に読んだ。LINDEN日記でおなじみの林田さんの新刊である。新書という一見気軽そうな装いに反して、これは渾身の力作。ぜひ書店で手に取って中身をご覧になることをオススメしたい。
●この新書の特徴はモーツァルトだろうがフィンジだろうが、とにかく一人の作曲家につき一曲の名曲を紹介しているところにある。しかもそのチョイスがところどころ普通ではなくて(実に林田さんらしい)、たとえばストラヴィンスキーなら「詩篇交響曲」だったり、シューマンならヴァイオリン協奏曲、サン=サーンスならクラリネット・ソナタとか来ちゃう。100人のランナップも斬新で、ジスモンチとかカプースチンが入ってくる。大胆っすよね。
●でもその100曲の選択とか「名曲紹介」という外側の意匠よりも、肝心なのは中身。林田さんのこれまでの豊富な取材体験やライヴ体験が反映された、氏以外の誰にも書けない100本の読み物に仕上がっている。その基本姿勢はきわめて真摯で、一曲一曲その作品に正面から体当たりでぶつかってゆくのがすばらしい。そもそも体験とはどれだけ質と量を積んでも決してオートマティックに文章化されるものではなくて、そこで「音楽って何だろう」「音楽について書くってどういうことなんだろう」という疑問と格闘するプロセスがあってようやく読み物として昇華するもの。そこのところを惜しまない。
●林田さんとワタシはかなり昔に「音楽の友」編集部で文字通り机を並べていたという間柄である。先輩である氏からワタシが仕事を教わっていた。会社を離れてからも直接間接に教わるところは多かった。そして、今度は著書を読むことでまたひとつ新たに教わったという気がする。

December 19, 2008

ガンバ大阪vsマンチェスター・ユナイテッド@FIFAクラブワールドカップ2008

ガンバ大阪●旧トヨタカップ、現FIFAクラブワールドカップの準決勝、ガンバ大阪vsマンチェスター・ユナイテッド。この大会、決勝が予定調和的に欧州vs南米の対決になることが期待されているし、事実今までそうならなかったことはない。なので、猛烈にガンバ大阪を応援する(笑)。だってJリーグ代表なんだし。マンチェスター・ユナイテッドがいきなり敗北すると、この大会がどうなるのか気になる。
●ガンバは大健闘した。ユナイテッドは明らかに普段のゲームよりユルユルだったし、おかげでガンバもボールを保持できたんだけど、それでもああやって強豪相手に臆せずに攻め合いをできるのは偉大。ビディッチとクリスティアーノ・ロナウドにゴールを決められた後、橋本のパスから山崎がゴールを決めて1-2になったじゃないですか。その直後、まるで「じゃあ、本気でプレイしちゃうよ」っていうかのごとく、1分も経たないうちにルーニーにゴールを奪われて突き放された。普通はここで俯いてしまいそうなもんだ。ワタシだったら(いや、ほとんどの人は)、ベソかきながらピッチを去る。
●でもガンバは居直って攻めた。だから守備も崩壊したけど、3-5になった。同じ土俵で戦えない相手と試合をするときに取りうるもっとも立派な態度だと思うな、やられても顔を上げ続けるっていうのは。ワタシはマリノスサポだから、意外な場面の連続に純粋に大喜びして見てたけど、これが自分のチームの戦いだったらどれだけ心を動かされたか。「負けて悔しい」とかいう感情を抱くには、まだまだJリーグと欧州ビッグクラブの差がありすぎる。
●遠藤保仁がユナイテッドのファン・デル・サール相手にコロコロPKを挑むとか、もう空想上にしかないような場面だし。あれ、コロコロPKにしてはスピードがあった。だからギリギリで決まった。ファン・デル・サールは相手が蹴るまで微動だにしなかった。
●試合終了の笛が鳴ると、安田理大がクリスティアーノ・ロナウドとユニ交換。試合前から狙っていたにちがいない。でもお互いマッチアップするポジションにいたわけだから、これは納得。
●クリスティアーノ・ロナウドを「ロナウド」って呼ぶ中継がヤだ。ロナウドは(元)ブラジル代表の9番だろ。縮めるなら「クリスティアーノ」か「クリロナ」か。「ロナルド」なら許せる。もともとロナルド・レーガンにちなんでるわけだし。
●あと、異様な頻度でシュートの本数を数え上げるアナウンサーが謎。野球のヒットの本数みたいな感じで伝える。そんなサッカー中継、ほかで聞いたことないぞ。

December 18, 2008

自主申告する「感動の物語」

●最近、みんな作る側が自分で「感動」って言っちゃうじゃないですか。映画とか小説とか何でも。他人の言葉を引いてきて「感動しました!」って言うのはわかるんだけど、自分で先に言っちゃう。広告とかで「魂を揺さぶる感動の物語」「涙が止まりません!」みたいに前もって自主申告するのがもはや割とフツー。
●今後は「感動の物語」の自主申告制はもっと進むにちがいない。宣伝文とか帯よりもいっそタイトルに「感動!」って入れてしまえばいいということになって、実際テレビ番組表なんかがそうなってるわけで、いずれこれが音楽の世界にも蔓延すると、たとえば注目の作曲家が書いたはじめての交響曲のタイトルが、

交響曲第1番「感動」

 とかになったりするかもしれない。
●で、こんな交響曲全集ができる、きっと。

交響曲第1番「感動」
交響曲第2番「涙が止まりません!」
交響曲第3番「魂を揺さぶる感動の名曲!」
交響曲第4番「2人の北欧の巨人の間にはさまれたギリシャの乙女」
交響曲第5番「傑作」
交響曲第6番「最高傑作!」
交響曲第7番「舞踏の神化!」
交響曲第8番「最後から2番目の最高傑作!!」
交響曲第9番「交響曲の歴史を塗り替える不滅の金字塔であり最高傑作ファイナル、今全人類が涙する、兄弟よ、神よ、抱擁せよ、そして伝説へ……」

December 17, 2008

ドイツグラモフォンの 7-day Stream/YouTubeシンフォニーオーケストラ

ドイツグラモフォン●つい最近ドイツグラモフォンのサイトで 7-day Stream っていうサービスが始まったんだけど、これは画期的かも。今までドイツグラモフォンはDG WebShopとして、自社音源を320kbps mp3という好条件でダウンロード販売してて、それだけでも立派だと思ってたら、こんどは7-day Stream。つまり7日間限定でストリームで聴ける。料金は1アルバムで0.99ユーロ(国によっては0.99ドル。ユーロであれドルであれ99セント)。で、99セント払って聴いて、「じゃあこれはダウンロードしたい」と思ったら、普通にダウンロード購入すればいいわけなんだけど、このときに99セント返金してくれるんすよ。
●つまり、どうせ最終的に買うんだったら、試聴料金として99セント払っても損はしないわけだし、買わないんだったら1週間聴く料金として99セント払ったと思えばOK。「期待して聴いてみたけどなんか違ってた」とか「1回聴けば十分」っていうことも多々あるわけで、そういう意味では恐ろしく親切なサービス。逆に「1回聴けばいいだろ」と思って99セント払ったんだけど、聴き出したら予想を超えてすばらしくて、手元に置きたくなってダウンロード購入しちゃうケースも多くなりそう。ダウンロード購入しても1枚10.99ユーロ程度なんだから、円高の現在ではかなり割安に感じる(一時の信じられないユーロ高の頃とは大違い)。ダウンロード購入するとPDFでブックレットが付いてくる(けど付いてないのもある)。
●ただし7-day Streamなら何でも聴けるかっていうとそうでもなくて、一部アルバムは7-day Streamに対応していない。あと、7-day Streamだと一部のトラックは聴けませんっていうのもある。でもまあ、だいたい聴ける。
●なんていうかな、これって何かを根こそぎ変える感があるんだけど、どうなんすかね。極端な話、1枚99セントなら新譜は全部一回聴いてみるっていうのができるわけだ。ストリームだから音源を外に持ち出すことはできないけど、家のスピーカーで聴くことを前提にすると、いろんな広がりが見えてくるなあ。これ、DG以外のレーベルもやってくれないだろか。ステキでもあり、一方で危険でもあり。レーベル側からすると、本当にリスナーに「これ欲しい!」と思わせないと、なんでもかんでも99セントで済ませられちゃうわけだし。自社音源に自信がなきゃできない。いろんなものが問われている気がする。
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●各所で話題の「YouTubeシンフォニーオーケストラ」。オケの方はニューヨークのカーネギーホールで演奏できるチャンス。渡航費滞在費はGoogle社持ち。どなたでも応募可能。曲はタン・ドゥンのオリジナル曲、指揮はマイケル・ティルソン・トーマス。連載「クラシック・ジャンキー」でもご紹介中。

December 16, 2008

「バレンボイム音楽論──対話と共存のフーガ」(ダニエル・バレンボイム著)

ダニエル・バレンボイム●お正月のウィーン・フィル・ニューイヤーコンサートはバレンボイムが指揮するんだっけ。に、似合わん……。来年のスカラ座来日公演でもバレンボイムが指揮。去年のベルリン国立歌劇場来日ももちろんバレンボイムだった。スゴいことになっているなあと思っているところに本が出たので、持ち歩いて少しずつ読んでいた。
●「バレンボイム音楽論──対話と共存のフーガ」(バレンボイム著、蓑田洋子訳/アルテスパブリッシング刊)。音と思考、聴取、オーケストラについての音楽論(ハーヴァード大学でのレクチャーがもとになっている)、サイードとともに設立したイスラエルとアラブ諸国の若者たちによるウェスト=イースタン・ディヴァン・オーケストラについて、そしてバレンボイムの音楽観からその人となりまで伝わってくるいくつかのインタヴューなど。文を読んで受ける印象は、バレンボイムの音楽を聴いて受ける印象とよく似ている。こういうのは言動一致じゃなくて、なんていうんだろうか、言楽一致?
●おもしろい本には2種類あって、一つは頭からおしまいまで「うんうん、なるほど」とうなずきながら共感して読める本で、もう一つは「ええー、そんなこと言うんだ、考えるんだ!?」と異なる価値観から眺めたらどう世界が見えるかを伝えてくれる本。ワタシにとってはこの本は断然後者。たとえば、バレンボイムはピリオド系楽器による「いわゆるオーセンティックな」演奏を厳しく批判してて(「モーツァルト」の章)、それが一から十までワタシには共感できない内容なんだけど(笑)、なにしろバレンボイムみたいな天才が言っているんだからとても刺激的だ。ウェスト=イースタン・ディヴァン・オーケストラの活動についてもそうで、音楽と社会のかかわり方について、こんな考え方や方法論があるのかと驚くところが多かった。

December 15, 2008

松本初号機発進

エプソンダイレクトショップ●新パソ導入完了。エプソンダイレクトのマイクロタワーMR6000。ふー、気の重い作業だったけど、買い換えると「今まで何をしてたのか」と思うくらい快適だな、新しいパソコンは。何をさせてもビュンビュンと高速処理してくれる。キビキビしてて偉いよ、君は。今後グズグズしがちな飼い主に似ないように。
●でもな。先代のパソコンだって、最初は驚くほど速かった。たぶん、半年くらいは無敵感を楽しめる。それがだんだんと何をやるにもキレが悪くなって、鈍重になり、しまいにはブラウザでウェブを見るのにも「どっこいしょ」って掛け声かけながら、ヨロヨロと画面を描画するようになる。なんだかパソコンって人間みたいだね! 生きてるねっ! ……ふぅ。
●新たに環境を構築するのに週末をつぶした。グズなので、まず最初の一歩、掃除して前の機種を片付けるのがなかなかできない。配線を外すとか、重いニューパソを段ボールから取り出すとか、そういうのが苦手。で、電源入れてセットアップしたら、山のようなバックアップデータを外付けハードディスクからコピーして、必要なソフトウェアを順次インストール&設定する。エディタ、メーラー、画像編集ソフト、ブラウザ類、ブックマーク、フォント、FTPなどの細かなツール類、バックアップソフト、iTunes、RealPlayer、Skype、Excel、OpenOffice……。この作業が延々と続く。OSがXPからVistaに代わったこともあって、あれこれと余計に時間がかかる。
●なんかな、身軽じゃない感じがダメだな、これは。ホントなら最小限のインストール&設定だけで乗り切りたい。「これがなきゃPCは使い物にならない」みたいなツールは少ないほどいい。クラウド・コンピューティングってわけでもないんだけど、なんでもローカルでやらなきゃいけないものでもないし。少し整理せねば。ホントは細かなツール類を使いこなすのが楽しんだけど、楽しさと効率が両立してくれないのが悲しい。
●松本から送られてきたから「松本初号機」って名づけよう、PCの名前。

December 14, 2008

磐田vs仙台@Jリーグ入れ替え戦

●まさかジュビロ磐田が入れ替え戦を戦わなければならなくなろうとは。相手は久々のJ1復帰を目指すベガルタ仙台。第1戦は仙台で行われて1-1のドロー。で、第2戦。テレビ中継で見る。第1戦もそうだったけど、入れ替え戦はなんかワールドカップ予選みたいなひりひりした空気が流れていて、自クラブが関係なくても見入ってしまう。
●ホームのジュビロが圧倒的に優位にゲームを進めるものかと思いきや、開始早々から仙台が猛烈に飛ばしてきた。手倉森誠監督は第1戦後のインタビューで「相手にアウェイゴールを与えたこと」を悔やんでいたのが印象的で、第2戦はアウェイゴールを奪い返すべく、序盤から攻勢に出るように指示を与えていたんだろう。絶対にこのペースは90分続けられないし、実際に後半は早々と足が止まりだしたけど、戦略としては納得がいく。
●ジュビロは19歳の松浦拓弥が第1戦に続いて大活躍。1ゴール目は足でもなく頭でもなく、胸でゴール。胸に当てたボールをキーパーの頭越しにゴールに入れた(明らかに狙って入れた)。2点目は圧巻で、スピードに乗ったドリブルから相手ディフェンダーを交わしてゴール。まるでメッシみたいだ。小柄だし、ボールを持つ姿勢も似てるし、そういえば風貌も似ていなくもない。そうかー、19歳くらい若いと、メッシのマネしながら上達したりするんだろなあ。
●得点でも内容でも磐田が完勝するかと思った2-0で迎えたロスタイム、仙台はゴール前のフリーキックのチャンスに10番のリャン(梁勇基)が見事に決めて1点差。ロスタイム4分の内、この時点ですでに3分くらい経ってたと思う。これがアウェイゴール優先ルールの怖いところで、さっきまで楽に磐田が勝てると思っていたが、こうなると仙台が2点目をとれば2-2で仙台が昇格する。磐田にとってはまさかの緊急事態。で、その最後の残り1分で仙台はチャンスを作り、シュートを弾幕のごとく川口能活に浴びせた。
●試合はそのまま磐田が勝利したけど、最後に仙台は鬼気迫るサッカーを見せてくれて、彼らは負けたんだけど多くを手にしたという気がする。きっと隣のパラレルワールドでは仙台の最後のシュートがゴールに突き刺さっていた。そしてベンチでオフト監督が茫然自失となり、ゴン中山が顔を覆いながら泣き崩れていた。15年前みたいに。

December 12, 2008

ニューパソ発注

●重い腰を上げて、ようやくおニューのパソコンを発注。このブログの過去のエントリーを検索して確かめたんだが、現在使用しているデスクトップ機は2004年3月に購入したもの。途中で一度壊れたマザーボードを交換しているので1.5台分相当ではあるが、すでに4年半を超えているんだから、性能的にはもう限界。しかも購入時点ですでにお安いモデルだったし。今回は悩んだ末に納期の早さと故障時対応の良さを期待してエプソンダイレクトに頼んだ。
これが進化した未来の超高性能パソコンだっ!(ウソ)●が、きっと大変っすよ、PCのデータやらアプリの引越しは。丸一日で終るかどうか。スムーズに作業を進めるために自分用手順書みたいなのを作ってるんだけど、最初にインストールすべきアプリやツールを挙げてみたら、30~40くらいになる。これに個々の設定やらデータやらを移行しなければならないと思うと憂鬱だ。OSだってなじみのないVistaだから、とまどうことも多そう。これが面倒だから、いつも古いマシンを限界ギリギリまで引っ張ってしまう。
●パソコンがもっと進化して、一度購入したら10年くらいは買い替えなくて済むようになってくれんかなと思う、白物家電並みに。ていうか、それは進化が止まると実現するのか。

December 11, 2008

カルミニョーラのヴィヴァルディ

カルミニョーラのヴィヴァルディ●感染してしまった、ヴァヴァルディの222に。もう一ヶ月以上前になると思うんだけど、カルミニョーラとヴェニス・バロック・オーケストラのコンサートを聴いたんすよ、この欄でも書いたけど。で、その公演でアンコールで弾かれたヴィヴァルディの知らない曲というのがあって、これが凄まじい破壊力を有した曲で、一度耳にしたらもう忘れられない。何だ?この未知なる曲は。っていうと、どれだけステキなメロディなのかと思われるかもしれないんだが、そうじゃない。もうあまりにも楽しくてバカっぽいから、「脳内ぐるぐるメロディ」に定着して頭から離れないんである。演奏会が終ってからずーっとメロディがこびりついてて、逃れられなくなる、何日でも何週間でも。
●その曲がヴィヴァルディのヴァイオリン協奏曲ニ長調RV222という曲で、しょうがない、こうなったらCDを買うしかない。毒をもって毒を制する作戦でゲットした、「ヴィヴァルディ:後期ヴァイオリン協奏曲」。あー、これだこの第3楽章だ。amazonの試聴リンクでも聞けるけど、こんな感じの曲で、頭の中でループになる。CDだと微妙に行儀が良いけど、実演ではさらに弾けていた。この曲、これから広まるんじゃないかなあ。こんなに感染力が高いんだし。
●ゾンビ、いるでしょ(いや、いないか)。ダニー・ボイル監督の映画「28日後……」だったかな、ゾンビから逃げるオヤジと娘がいるんすよ。で、なんか頭上でカラスが死体をついばんでいたりして、オヤジが「クソ」とか言ってその辺を蹴っ飛ばしてカラスを追い払うんだけど、そのとき死体からポタリと血液が落ちて、それがオヤジの目に入っちゃう。これでもうダメだから。ゾンビに咬まれたらゾンビになる、そしてゾンビの血が体内に入っただけでもゾンビになる、数十秒で確実にゾンビになる。もうこのオヤジがかわいそうで、これ記憶だから細部は違うかもしれないけど、オヤジは娘に向かって「アイ・ラブ・ユー」って言って、でもすぐに「オレを撃て」だか「逃げろ」とか、ゾンビ化しつつあるなかで最後にわずかに残された理性を振り絞って言うわけ。ゾンビになったら即座に娘を食っちゃうから。たった一滴の血液なのにね、ひどいね、恐ろしいね、ゾンビ。
●で、それくらいの感染力がある、ヴィヴァルディのヴァイオリン協奏曲ニ長調RV222には。たとえるならゾンビというほどゾンビ並、すなわち最強にして最凶であり最高。

December 9, 2008

「とりぱん」第6巻(とりのなん子)

とりぱん●実は第1巻からずっと楽しみに読んできた「とりぱん」最新刊(とりのなん子著/講談社)。東北の地方都市に住む作者が、庭に設置したエサ台にやってくる鳥たちであるとか、日常の田舎暮らしだとかを描くという、それだけであり何も起きない身辺雑記系なわけであるが、その何気なさが羨望して悶絶するほどの圧倒的に至福な光景であり、この日本が誇るべき鳥マンガを明日生誕100周年を迎えるメシアンに読ませてあげたかったぜー、と思うほど傑作、鳥的に、自然的に、ケダモノ的に。
●これ、第1巻くらいのときは「あー、鳥ってかわいいなあ、おもしろいなあ、でもこんな身近なネタで連載続くんだろか。すぐにネタが枯渇しないか」と思った。もちろん、ワタシはまちがってた。どんどんおもしろくなっている。ネタが増えたから? いやいやぜんぜん。そうじゃなくておそらく作者がマンガ家として腕を上げているから。第6巻は感心したなー。
●なんかオシャレでステキな「エコ」って、あるじゃないっすか、ジャンルとして。そういうのと正反対に位置する、日本のローカルなフツーの生活が描かれているのがいい。特に北の寒さとか。寒いのもヤだし大雪も嫌いだが、あの冬の生活ってすごく豊かに見える。謎。
●ウチの近所の公園に池があって、今カモ類がたくさん来てるんすよ。「とりぱん」読んだら、カモの写真を載せたくなったので載せる、脈絡レスに。
カモかも
●ここはオナガガモ、マガモ、キンクロハジロ、カイツブリなど、いろいろいてかなり楽しい。ガチョウやらノラ猫も。ゴイサギ、カワセミも見かけたな。
●拙著「クラシックBOOK」、しばらくぶりに重版して第6刷。ありがたいことである。深謝。

December 8, 2008

週末フットボールパラダイス~驚愕の最終節編

Jリーグ カレンダー●Jリーグ最終節。仕事だったので生観戦どころかテレビ観戦もほとんどできなかったのだが、これは優勝争いも残留争いもおもしろかっただろうなあ。特にJEF千葉。FC東京に2失点して、もう自動降格が確定的だと思ったら、4点奪って逆転勝利、さらにライバルのヴェルディ東京、磐田がともに破れて、奇跡の残留決定。これをフクアリで観戦していたJEFサポの気持ちを想像するだけで震えてくる。「サッカーは何が起きるかわからない」ってみんなもワタシも口癖のように言うわけだけど、本当に何が起きるかわからないということは何かが起きてから初めてわかる。
●ヴェルディ降格。傍から見てると、元代表のベテランとか元ヴェルディのスターに頼らずに、J2以上で実績のある日本人監督を呼んで、若くて安くてよく走る選手をガンガン起用して鍛えればいいのにと思うわけなんだけど、彼らには彼らの事情があるんだろう。ウチ(マリノス)も他人のことを言っている場合ではなく、少し似た香りを感じなくもなくて危機感あり。石崎監督とかゲルト・エンゲルス監督とか、呼んでくれないものか(ボソリ)。
●ジュビロ磐田はベガルタ仙台と入れ替え戦。第1戦は12/10(水)仙台、第2戦は12/13(土)磐田。NHK-BS録画中継あり。必見かと。
●優勝は鹿島。連覇。鹿島はいつも世代交代がうまい。
●J2へ昇格を果たしたのは、栃木SC、カターレ富山、ファジアーノ岡山。順調にJ2のクラブが増えてきた。来季から18チーム体制。そろそろチーム数が程よくなってきたので、どこかで降格の制度が必要になってくる。J2から降格しても存続可能なクラブ経営っていうのが難しそう。

December 5, 2008

うっかりクリックとか

●最近、世間で「横に長めのウェブページ」がフツーになってきてるじゃないですか。横800ピクセルとか900ピクセルで3段組だったりする。で、大体右段は広告用スペースになってて、正方形とか長方形とかの大型の広告なんかが入る。でもワタシはブラウザを横に広く開かないから、だいたいこういう3段組の右側がブラウザの画面からはみ出がちで、スクロールバーを上下させるときに、ついうっかりその辺の広告をクリックすることが多いんすよ(ってわかるんだろか、この説明で)。それで「あ、しまった」と思ってバックするわけだけど、ウェブ広告のクリック率って案外こういうところで支えられているのかもしれん、と思って軽く戦慄。
●書籍「のぶカンタービレ! 全盲で生まれた息子・伸行がプロのピアニストになるまで」(辻井いつ子著/アスコム)。全盲のピアニスト辻井伸行誕生の物語。母親の辻井いつ子さんが著者。なので音楽書ではなく、子育てが主題。母親のわが子への尽きることのない愛情が描かれている。
●唐突だけど、ゾンビ・オーケストラって誰かやってるのかな。指揮者から楽団員全員がゾンビ。ありそうでなさそうで実はありそうな気がする。

December 4, 2008

地下鉄のミツキー

地下鉄鼠●地下鉄有楽町線のホームで電車を待ってたら、なにかが線路のあたりで動いたような気がしたんすよ。ん、なんだ?と思って目を凝らしたらネズミがいたのです、ゴソゴソとかモゾモゾとか落ち着かずに動いてて、レールの上にちょこんと乗ったり、枕木のあたりでうろちょろしたり。えーと、もうすぐ電車が参りますって表示出てますよー、ネズミさん。君の名を仮にミツキーとしよう。ミツキー、そこ危ないから、早く隠れて。どうしよう、電車来ちゃう。緊急非常停止ボタンはどこだっ! いやそれやって都会の地下鉄ダイヤ大混乱で、理由はミツキーのピンチでしたって言ったら駅員さんから叱られる。ニュースになる。「鼠身事故のために有楽町線のダイヤが1時間にわたって混乱しました」とか?
●ワタシ以外に誰かこの危機に気づいている者はおらぬのか! と、あたりを見回すと誰も気づいていないっぽい、しかしすぐに右隣の乗り場にポツンと一人立つ若い女性がミツキーを見つけた、顔の表情が「あっ」となって、かすかにうろたえてる。どうする、彼女。どうする、オレ。線路にズサーッと飛び込み、ミツキーを抱きかかえて、再びホームにジャンプ、その間わずかコンマ5秒、鼠命救助で表彰される自分、そんな英雄的行為について夢想する代わりに、冷静に検討してみた。
●あの鼠は明らかに地下鉄に棲息してる。昨日も一昨日もそこにいたはずだ。有楽町線は朝から晩まで数分おきにやってくる。車両に轢かれるようなポジショニングをしていたら、鼠は一日たりとも生きられない。ミツキーは背が低いので、レールに乗らない限り、車両は頭上を通り過ぎていくだけであろう。ゆえに……
●と考えてる間に、ゴーッと電車がやってきて、何事もなくワタシは乗車した。隣の乗り場の彼女も、ケータイ開きながら忙しそうに。

December 3, 2008

「ご縁玉 パリから大分へ」(江口方康監督)

ご縁玉●しばらく前、ニュースを眺めていたらこの訃報が。「いのちの授業」山田泉さんが死去。山田泉さんは自らの乳がんとの闘病体験を語って命の尊さを伝える「いのちの授業」に取り組んできた大分の元養護教論。山田泉さんのことを知ったのはつい最近で、彼女を題材としたドキュメンタリー映画「ご縁玉 パリから大分へ」(江口方康監督)の試写を見せていただいた。この映画は、山田さんとフランスのチェリスト、エリック=マリア・クテュリエとの交流を描いている。
●この写真にある、チェロを弾いているほうが山田さんで(といっても全然弾けなくて、エリックに教わりながらギ~と鳴らしているのだが)、それを横で見守っているのがエリック=マリア・クテュリエ。外見がアジア系なのはベトナム戦争の孤児でフランス人養父母に育てられたから。彼はご存知パリのアンサンブル・アンテルコンタンポランのチェリストで、普段はバリバリと尖がった現代音楽を弾いているような人だ。映画の中にも少しだけ演奏シーンが出てくる(指揮者のスザンナ・メルッキ[マルッキ]も)。二人の間に音楽的接点はない。エリックは育ての母を乳がんで亡くしている。知人を介したパリでの偶然での出会いがきっかけで、エリックは大分に山田さんを訪ねる。
●エリックは覚えたての日本語を片言で話す。山田さんはじめ、大分の人々はみな日本語で話す。言葉によるコミュニケーションは容易には成立しないはずだが、それを飛び越えて媒体となってくれるのがチェロであり音楽なのだ。エリックはみんなのためにバッハを演奏する。山田さんのために即席の不思議なチェロによる音楽セラピーを施す。片方に「限りある命をいかに生きるか」という答えがあり、片方に「音楽家に何ができるか」という問いがある。
●東京では今月20日より渋谷ユーロスペースのモーニングショーで上映される。その他の地域についてはこちらの公式ブログにて。公開の前に訃報が届いたことが残念でならない。

photo © Inter Bay Films
December 2, 2008

ヴィオロンチェロ・ダ・スパッラによる無伴奏チェロ組曲

寺神戸亮 バッハ●「バッハの無伴奏チェロ組曲は本当はチェロのために書かれた曲ではなかったんじゃないか」という疑問から出発し、失われた楽器ヴィオロンチェロ・ダ・スパッラ復元を経て、ヴァイオリニストが無伴奏チェロ組曲を録音するに至るという鮮烈な音楽史ミステリー。それがCDとして結実したのが6月にリリースされたこの一組、寺神戸亮さんのヴィオロンチェロ・ダ・スパッラ演奏による「バッハ:無伴奏チェロ組曲」。昨日、2008年度レコード・アカデミー賞器楽部門を受賞と発表あり。祝スパッラなのである。
●もうスパッラは写真だけでもインパクトありすぎで、なにしろ肩掛けチェロなんていうくらいだ、遠目から見てヴァイオリンかな、あれデカいな、ヴィオラかな、いやもっとデカいよ何コレみたいな驚きがあって、遠近感が狂ってるっぽい図になる。CD発売元のコロムビアさんのサイトがステキで、寺神戸さんご本人による充実した映像付き解説がある。さすがにフツーのチェロほど巨大ではないですが。
●それにしてもこれ、重そうだ。肩を鍛えるために星一徹ならヴィオロンチェロ・ダ・スパッラ養成ギプスとか作ってくれそう。さらに星飛雄馬並の強肩ヴァイオリニストのためにコントラバス・ダ・スパッラが復元されたという凶報がっ! ウソ。そんなものはない。
●で、ちょうどこのタイミングで、実演でスパッラの無伴奏チェロ組曲を聴く機会あり→寺神戸亮ヴィオロンチェロ・ダ・スパッラ、ツアー。12/4(木)~16(火)、東京、所沢、大阪、浜松。16日は初台、近江楽堂にて。生スパッラを体験したい方はどぞ。

December 1, 2008

JFLシーズン閉幕。横河武蔵野FCvs琉球FC

●あと一節を残すことになったJリーグ、鹿島、川崎、名古屋が可能性を残す優勝争い、さらには熾烈な降格争いも激しく気になるフットボールな週末、さらに言えばJ2だって気になる。ともかく山形のみなさま、J1昇格おめでとうございます! 広島はすでにJ1復帰決定済み。昇格のための入れ替え戦に出場する第3位は、最終節までもつれて、仙台、セレッソ大阪、湘南に可能性が残されている。
●で、そのJ2の下、日本の3部リーグたるJFLだ。JFLはこの週末が最終節だったんである。最終節のホームゲームであるので、これはなんとしても足を運ばねばと、武蔵野陸上競技場の横河武蔵野FCvsFC琉球戦へ。
●FC琉球って、あのトルシエが総監督になってるチームっすよ。でも総監督って何なんだろう。どれくらい日本に滞在するのかよくわからないんだが、武蔵野には来ていないっぽい。総監督の下にフランス人監督がいて、さらに欧州のクラブから移籍してきた外国人選手まで3人所属していて(誰一人ベンチにも入っていなかったけど)、しかもかつてJ1で実績を残したベテラン選手なんかもいて、なんだかJFLのノリと全然違う。予算規模はスゴく大きそうなんだけど、順位は18位中16位で上を目指すどころか足元が危ないのが謎。ちなみに、混同しがちだが、FC琉球と沖縄かりゆしFCは別クラブ。
●で、本日は前半試合開始早々は武蔵野が圧倒的に攻めた。一瞬武蔵野陸上競技場が脳内サンチャゴベルナベウになるくらい、華麗なパス回しを見せてくれて、あっさり先制ゴールを奪ったときには、本日は気持ちよく久々の勝利に浸れる予感がした、でもそんなのは予感だけで終わるんだなこれが。前半の終盤からもう足が止まり気味で、後半にあっさり追いつかれると、耐える展開に。最後は1-1で終わって安堵したほど。もう一つすっきりしない最終節になってしまった。
●リーグ序盤には首位を争っていたのだが、終わってみれば順位は7位。上の6つのうち、4つがJリーグを目指すJ準加盟クラブだったことを考えると健闘したのはまちがいない。守備が安定した好チームだった。で、JFLの優勝がどこかといえば、「Jの門番」とも呼ばれる恐るべき社会人クラブ、Honda FC。彼らはJリーグを目指していないので、勝ってもJ2には昇格しない。にもかかわらず、いつも強い。プロを目指すクラブもあえて目指さないクラブも混在しているのがJFLのおもしろさ。
●J準加盟クラブがJFLで4位以上の成績を収めると、J2昇格の資格を得る。2位から4位には、栃木SC、カターレ富山、ファジアーノ岡山のJ準加盟クラブが入った。成績以外にも必要条件はあるみたいなんだけど、来季はこれらのクラブがJ2に昇格するんだろうか?
●JFL昇格を目指す戦いもある。全国地域リーグ決勝大会が行われた結果、町田ゼルビアとV・ファーレン長崎が来季よりJFLに上がってくるようだ。町田ゼルビアは東京じゃないっすか。「東京第三勢力」を標榜する武蔵野に続いて、「第四勢力」が誕生することになる。ってことは武蔵野vs町田の多摩ダービーが実現するではないかっ!
●FC東京にも東京ヴェルディにも共感できない都民の方にはぜひともオススメしたい、来季のJFL。

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