●しばらく前、ニュースを眺めていたらこの訃報が。「いのちの授業」山田泉さんが死去。山田泉さんは自らの乳がんとの闘病体験を語って命の尊さを伝える「いのちの授業」に取り組んできた大分の元養護教論。山田泉さんのことを知ったのはつい最近で、彼女を題材としたドキュメンタリー映画「ご縁玉 パリから大分へ」(江口方康監督)の試写を見せていただいた。この映画は、山田さんとフランスのチェリスト、エリック=マリア・クテュリエとの交流を描いている。
●この写真にある、チェロを弾いているほうが山田さんで(といっても全然弾けなくて、エリックに教わりながらギ~と鳴らしているのだが)、それを横で見守っているのがエリック=マリア・クテュリエ。外見がアジア系なのはベトナム戦争の孤児でフランス人養父母に育てられたから。彼はご存知パリのアンサンブル・アンテルコンタンポランのチェリストで、普段はバリバリと尖がった現代音楽を弾いているような人だ。映画の中にも少しだけ演奏シーンが出てくる(指揮者のスザンナ・メルッキ[マルッキ]も)。二人の間に音楽的接点はない。エリックは育ての母を乳がんで亡くしている。知人を介したパリでの偶然での出会いがきっかけで、エリックは大分に山田さんを訪ねる。
●エリックは覚えたての日本語を片言で話す。山田さんはじめ、大分の人々はみな日本語で話す。言葉によるコミュニケーションは容易には成立しないはずだが、それを飛び越えて媒体となってくれるのがチェロであり音楽なのだ。エリックはみんなのためにバッハを演奏する。山田さんのために即席の不思議なチェロによる音楽セラピーを施す。片方に「限りある命をいかに生きるか」という答えがあり、片方に「音楽家に何ができるか」という問いがある。
●東京では今月20日より渋谷ユーロスペースのモーニングショーで上映される。その他の地域についてはこちらの公式ブログにて。公開の前に訃報が届いたことが残念でならない。
December 3, 2008
「ご縁玉 パリから大分へ」(江口方康監督)
photo © Inter Bay Films
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「ご縁玉」。ドキュメンタリー・フィルムです。養護教諭として「いのちの授業」をなさ 続きを読む