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December 16, 2008

「バレンボイム音楽論──対話と共存のフーガ」(ダニエル・バレンボイム著)

ダニエル・バレンボイム●お正月のウィーン・フィル・ニューイヤーコンサートはバレンボイムが指揮するんだっけ。に、似合わん……。来年のスカラ座来日公演でもバレンボイムが指揮。去年のベルリン国立歌劇場来日ももちろんバレンボイムだった。スゴいことになっているなあと思っているところに本が出たので、持ち歩いて少しずつ読んでいた。
●「バレンボイム音楽論──対話と共存のフーガ」(バレンボイム著、蓑田洋子訳/アルテスパブリッシング刊)。音と思考、聴取、オーケストラについての音楽論(ハーヴァード大学でのレクチャーがもとになっている)、サイードとともに設立したイスラエルとアラブ諸国の若者たちによるウェスト=イースタン・ディヴァン・オーケストラについて、そしてバレンボイムの音楽観からその人となりまで伝わってくるいくつかのインタヴューなど。文を読んで受ける印象は、バレンボイムの音楽を聴いて受ける印象とよく似ている。こういうのは言動一致じゃなくて、なんていうんだろうか、言楽一致?
●おもしろい本には2種類あって、一つは頭からおしまいまで「うんうん、なるほど」とうなずきながら共感して読める本で、もう一つは「ええー、そんなこと言うんだ、考えるんだ!?」と異なる価値観から眺めたらどう世界が見えるかを伝えてくれる本。ワタシにとってはこの本は断然後者。たとえば、バレンボイムはピリオド系楽器による「いわゆるオーセンティックな」演奏を厳しく批判してて(「モーツァルト」の章)、それが一から十までワタシには共感できない内容なんだけど(笑)、なにしろバレンボイムみたいな天才が言っているんだからとても刺激的だ。ウェスト=イースタン・ディヴァン・オーケストラの活動についてもそうで、音楽と社会のかかわり方について、こんな考え方や方法論があるのかと驚くところが多かった。

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