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December 21, 2008

「クラシック新定番100人100曲」(林田直樹著)

クラシック新定番100人100曲●読了、「クラシック新定番100人100曲」(林田直樹著/アスキー新書)。最初の1曲から最後の100曲まで、前から順番に読んだ。LINDEN日記でおなじみの林田さんの新刊である。新書という一見気軽そうな装いに反して、これは渾身の力作。ぜひ書店で手に取って中身をご覧になることをオススメしたい。
●この新書の特徴はモーツァルトだろうがフィンジだろうが、とにかく一人の作曲家につき一曲の名曲を紹介しているところにある。しかもそのチョイスがところどころ普通ではなくて(実に林田さんらしい)、たとえばストラヴィンスキーなら「詩篇交響曲」だったり、シューマンならヴァイオリン協奏曲、サン=サーンスならクラリネット・ソナタとか来ちゃう。100人のランナップも斬新で、ジスモンチとかカプースチンが入ってくる。大胆っすよね。
●でもその100曲の選択とか「名曲紹介」という外側の意匠よりも、肝心なのは中身。林田さんのこれまでの豊富な取材体験やライヴ体験が反映された、氏以外の誰にも書けない100本の読み物に仕上がっている。その基本姿勢はきわめて真摯で、一曲一曲その作品に正面から体当たりでぶつかってゆくのがすばらしい。そもそも体験とはどれだけ質と量を積んでも決してオートマティックに文章化されるものではなくて、そこで「音楽って何だろう」「音楽について書くってどういうことなんだろう」という疑問と格闘するプロセスがあってようやく読み物として昇華するもの。そこのところを惜しまない。
●林田さんとワタシはかなり昔に「音楽の友」編集部で文字通り机を並べていたという間柄である。先輩である氏からワタシが仕事を教わっていた。会社を離れてからも直接間接に教わるところは多かった。そして、今度は著書を読むことでまたひとつ新たに教わったという気がする。

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