January 20, 2009

ここほれニャンニャン!

ここほれニャンニャン!●近所の公園を散歩していると、いつも見かけるノラ猫がクンクンと地面の匂いを嗅ぎながら、抜き足差し足で慎重に歩いている、ネコ的にはそれが集中度最高だろうっていうくらいに真剣にクンクンする、そしてある地点にひきつけられていく。そこにはただ他の場所と同じように、土がある、もしかすると少し掘り返した跡がないこともない、黒褐色の湿った土。この地点Xでノラ猫Aはひたすらにクンクンする。そして前足で軽く土を掘り返し、またクンクンして、また掘り返して、クンクンして、ふと気が散ってよそ見して、また鼻を近づけてクンクンする。
●「よく飽きないね」っていうくらいに現場をじっくり吟味した後、ノラ猫Aは去ってゆく、何事もなかったように。ところがその直後、今度はノラ猫Bが少し離れた場所から、懸命に鼻をクンクンさせながら、忍び寄ってくる、そのネコ軌道は明らかに地点Xへと向かっているではないか、ほらやってきた、やっぱり、ノラ猫Bも地点Xにひきつけられていく、まるで惑星の重力に逆らえずに落ちてくる隕石のごとく。鼻を地面にほとんどこすりつけながら、不審そうな顔をして前足で地点Xの土を掘る、掘る、気が散る、でも掘る、時々身構える。何かそこにいるのか、そいつは生きているのか、死んでいるのか。しばらく現場検証を続けた後、ノラ猫Bもやはり何事もなかったかのように地点Xを去るのだ、さっきまであんなに興味津々だったのに。
●ノラ猫Bに続いて、人間Cも地点Xに近づいてみることにした。しかし人間なので地面をクンクンするのは憚られる、怪しいオジサンがいますと通報されても困る、だからクンクンせずに近づいて、じっくりと地点Xを凝視してみたが、なにも見つからない。掘るべきだろうか、掘らずにおくべきだろうか。人間Cは腕組みしながらうーんと考える。過去の成功事例を紐解けば、イヌに指定された場所を掘った結果、大判小判金銀財宝を手にしたケースがあった。しかしその事例では、事前に人がイヌに食糧などを与えわが子のように育てていたという前提があるのであって、人間Cはそのような善行を積んでいない。なによりイヌではなくネコである。怪しい。なにかヤな予感がする。そこにあるのはワナであり企み。ノラ猫AもBもグルになって人間Cを誘っているのではないか。発掘作業は行わないことにして、踵を返す。

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