●ワタシゃこの本の前書きを読んで目からウロコがゴソッと削げ落ちた→「サッカーとイタリア人」(小川光生著/光文社文庫)。イタリア人がサッカーに熱狂するってことはワタシらはみんな当然のこととして受け入れている。彼らは自分の街のクラブを応援する。ナカタや中村俊輔らがイタリアに移籍するごとに、地元の人々が日本のテレビの取材に答えて、「ウチのクラブは最高さ! ナカ~タ(ナカム~ラ)には期待しているよ!」みたいなことを答える映像が繰り返し流される。でも、イタリア人ジャーナリストの話としてこんな一言が書いてあるんすよ。
「イタリアのサッカーファンというのは、基本的にはユヴェントス、ミラン、インテルの3チームのどれかを応援している生き物なのだよ、知らなかったのかい?」
●そうなのかー。いや、ユヴェントスが全国区の人気を誇ってるとはよく言われるけど、一部のコアサポを除けば結局三大クラブなのか。レッジョ・ディ・カラブリアの人々はセリエCにいようがAにいようが、みんなレッジーナを応援し続ける、ってものでもなくて、そりゃまあレッジーナは好きだけど、一方でユヴェントス、ミラン、インテルのどれかを応援してるからセリエAの優勝争いにも関心が向く、どうやら。ビッグクラブと地元の小クラブの両方に愛情をうまく使い分ける感覚ってのはいいっすね。これはサポ心理として、いろんな面で便利なので、積極的にマネしたい(笑)。ただし三大クラブの勢力が及ばない例外としてナポリ、フィレンツェ、ローマが挙げられている。またイタリアに比べるとイングランドのサポは、所属するディビジョンにかかわらず自分の街のクラブだけをサポートするという話も興味深い。
●と、これは前書きの話で、本編のほうも大変おもしろい。大半は一度や二度は耳にしている話なのだが、書き手が上手いので知っていることも知らないことも楽しめる(←これ理想的)。キエーヴォやパルマのサクセス・ストーリーとか、ジーコとウディネーゼ、語りつくされているマラドーナとナポリの運命的な出会いと別れ、など。同じ街のクラブ、キエーヴォとヘラス・ヴェローナの関係なんて、今次々と各地でJを目指すクラブが誕生している日本でも似たような現象がこれから見られるかもしれない。「キエーヴォって何?」って方には、猛烈痛快な4章「ロバが飛んだ日」をオススメ。読むしか。