●普通のクラシックのコンサートで、しかも交響曲の演奏中に声を上げて大笑いしてしまおうとは、ワタシ、いやみなさんも>ブリュッヘン指揮新日本フィル。「ハイドン・プロジェクト」の2月20日、交響曲第99番、第100番「軍隊」、第101番「時計」。オラトリオやオペラだって悪くはないけど、やっぱりハイドンは交響曲最強、そうシミジミと感じつつ、枯葉が舞っているのを眺めるように透き通ったハイドンを味わっていたのだ、が。
●「軍隊」交響曲すなわちトルコ趣味であり、軍楽隊の打楽器群が登場する、トライアングル、シンバル、バスドラム。第2楽章アレグレットで彼らが活躍し、第3楽章に入る。するとなぜか軍楽隊のメンバーがそうっと袖に引っ込むではないか。へー、曲の途中に退場しちゃうんだ……あれ? まだ出番なかったっけ?
●すると第4楽章終盤の出番に彼らは再登場し、なんと袖から袖へと行進するんである、軍隊式っぽく軽いフリも入れつつ、微妙に衣装も着けて。高いシャコー帽みたいなのをかぶった先頭の男性が、クレッセント(音が出る長い棒)を振っているという、わけのわからない光景が眼前に広がる。演奏しながら行進して、休符の間は横を向いて客席を凝視。お、可笑しすぎる。ちょうど曲が終わるタイミングで見事に袖へ消えた。ありえない。腹痛え。この演出、おもしろすぎるって!
●えっ、ぜんぜんおもしろそうじゃないって? ああ、これはっすね、「爺ギャグの法則」発動なんすよ。一般にオヤジギャグって悲惨じゃないですか。場が白けて、もういかなる気遣いでも救われなくなる。でも同じギャグを爺が使うと死にそうに笑える法則。しかも、もう神様か仙人かっていうくらいに尊敬を集める爺が使うと最終兵器になる。「おお、これこそ今のブリュッヘンにしかできないハイドンだ」とクラヲタ度全開で聴いている聴き手に向かって、たとえるならブリュッヘンが唐突に「ガチョーン」とやってみせるくらいの破壊力。もうワタシは以後「軍隊」を笑いなしに聴くことはできない。そうだ、ハイドンのユーモアってこれだったんだ!(えっ?)
●「時計」も第2楽章でヴィオラが聴きなれないアルペジオのピツィカートをやったりとか、むしろ今日の曲こそ「びっくりシンフォニー」な一夜。オーセンティシティの追究の果てにある、驚愕と哄笑。
●いや、演出はこんなだけど、演奏はきわめて真摯。念為。
February 23, 2009
ブリュッヘン式「軍隊」ガチョーン
トラックバック(0)
このブログ記事に対するトラックバックURL: http://www.classicajapan.com/mtmt/m--toraba.cgi/1108