●まだ読んでる、サイモン・シンのノンフィクション「宇宙創成」(新潮文庫)。一気読みではもったいないので。
●原子核物理学と天文学を橋渡ししたユダヤ系物理学者フリッツ・ハウターマンスが、反ユダヤ主義的な発言に対してやり返した一言。
「きみたちの先祖がまだ森の中で暮らしていたときに、僕の先祖はすでに小切手を偽造していたんだぜ!」
いいっすね。ハウターマンスは太陽の中心部での核融合(水素からヘリウムへ)の理論を作った人で、ソ連の秘密警察とナチスのゲシュタポの両方からスパイ容疑をかけられ苛酷な尋問を受けたという珍しい経歴を持っている。
●で、ハウターマンスのジョークに笑った後、たまたまWOWOWで放映された映画「ヒトラーの贋札」を見たら、収容所のユダヤ人たちがポンド紙幣を偽造していた(笑)。恐るべきシンクロニシティ。
●「宇宙創成」は下巻に入ると時代が現代になるから、人間味のあふれるエピソードが増えてきて、ますますおもしろい。ビッグバン・モデルに浮き足立ったカトリック教会(「創世記」の科学的解釈だ!)、徹底的にビッグバンを否定した定常宇宙論のフレッド・ホイル(子供の頃にこの人の書いたSF小説を読んだことを思い出した)の人物像など、とても興味深い。