●やっと見れた、「ロード・オブ・ザ・リング」序夜。じゃない、「ラインの黄金」@新国立劇場。満喫。自分はまったくワグネリアンではないのだが、いざこうして目の前にすると完全に圧倒されてしまう。とにかくその日は「これから毎日、朝から晩までワーグナーを聴いて過ごしたい」という気分にはなる。
●キース・ウォーナーの演出は猛烈に饒舌なのがいい。至るところでいろんな仕掛けやアイディアが込められてて、新鮮で飽きないし、でも理屈っぽくはない、たぶん。もうワタシゃどうでもいい、問題提起とか今日的意義とか新解釈とか。いいじゃん、ワーグナーそのものは聴けるんだから。そんなことより、隙間なく埋め尽くされている画面(いや舞台か)を期待したい、多彩で複雑で愉快か可笑しいかバカバカしいか陰鬱か凄惨か、どっちの方向でもいいから劇場の外と強烈なコントラストを成すものを見たい。だからクールでポップな神話世界は大歓迎。大蛇もカエルもかわいいし。あと、日頃の舞台だと、1幕から2幕になっても3幕になっても、ぜんぜん舞台が変わらないし動かないっていうか、もうどうしてこんなに低予算でうら寂しいんだろうって思うこともままあるわけで、そういう意味でも溜飲を下げた。苦笑。
●ユッカ・ラジライネン(ヴォータン)、エレナ・ツィトコーワ(フリッカ)、トーマス・ズンネガルド(ローゲ)、ユルゲン・リン(アルベリヒ)、高橋淳(ミーメ)、稲垣俊也(ドンナー)、ダン・エッティンガー指揮東京フィル。アルベリヒの最凶ぶりが最強。ミーメ、ドンナーの日本勢も吉。「あれがこうだったら」「もう少しあれはどうにかならんのかな」的な惜しさがあちこちあったとしても、全体としては鳥肌立ったから大満足。
●8年前だっけ、前回は。見てない。その頃は演奏会そのものにうんざりしてたから。ラインの乙女たちは映画館の座席で戯れていた。半神ローゲは引越し屋の段ボール箱の中から現れた安っぽい手品師だった(縦縞のハンカチを一瞬にして横縞にする日本的な手品を教えてあげたい)。ネオンのWALHALLは一瞬意味がわかんなかったが(笑)ワルハラ城のことだった。地底王国にもデカデカとNIBELHEIMって書いてあったが文字が逆さま。指環を得たアルベリヒは娼婦を侍らせていた。指環の呪いで愛を失ったが娼婦は買える。なるほど、これでハーゲンが誕生するわけか。ていうかこの娼婦がグリムヒルデその人なのか。だとするとハーゲンは文字通りの「サノバビッチ」だ。カエルになったアルベリヒはスーツケースに捕らえられる。ニーベルハイムからの宝の山もみんなスーツケース入り。巨人族の一人(どっちだっけ)はフライアに本気で惚れていて、案外優しそうなヤツっぽい。ヴォータンはアルベリヒから指環を奪う際に、合口で指ごと切り落とす(この合口はもともとアルベリヒが持っていたもので、その後、ローゲが喧嘩中の巨人族に手渡して巨人兄弟殺害事件の凶器となる)。最後のワルハラ城グランド・オープンのシーンは、BRAVIAのCMみたいにカラフルな風船がいっぱいで、明るくて真っ白。入り口でローゲがチケットもぎり係りになってて異界の神々を賓客として招いている。WALHALLの看板はWAL - HALLに左右に別れてて、ここはHALLなんである。1,2,3,4,5....と番号札が立ってるのは、通路番号なのかクロークなのか。やれやれ、神々、こんなものを欲したばかりに。ローゲがリュクスで抜け作な強欲神々ライフに付き合ってられんわと倦厭するのもよくわかる。
March 19, 2009
「ラインの黄金」
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