April 21, 2009

「夢遊病の娘」@METライブビューイング

みんないい人!●もう先週だけど、METライブビューイングでベッリーニ「夢遊病の娘」(夢遊病の女)。ナタリー・デセイとフアン・ディエゴ・フローレスのコンビ。エヴェリーノ・ピド指揮、メアリー・ジマーマン演出。舞台はスイスの山村……ではなくて、現代のニューヨークの稽古場。つまり、これから「夢遊病の娘」を上演するためにリハーサルしているという設定の「夢遊病の娘」なんである。メタ「夢遊病の娘」。おお、なるほど!
●と一瞬思ったが、そういうメタフィクショナルな仕掛けで筋が通っているかというとそうでもなさげ。「もしかして、これは劇中劇として見ても筋が通るし、一方、内側の劇としても筋が通っているのでは」的な二重構造を期待をしたが、ワタシにはそういう整合性のある物語は見つけられず。でもまあ、このほとんど究極の「他愛もない話」に、ムリヤリあれこれ意味づけしてくれなくてもいいか。最後の最後になって、やっとみんなチロリアンな衣装を着て登場してくれて、踊ったり笑ったり歌ったりしてるのを見て溜飲を下げるワタシは、宇宙一フツーなオペラ観客。最初からそれでやれよ~とか(おいおい)。でもこの場面の音楽の愉快さって、ホントに突き抜けている。こんな筋書きなのに時代を超えて愛される作品を書いたんだから、ベッリーニは猛烈に天才。
●音楽はひたすら美しい。フアン・ディエゴ・フローレスの声だけでも充足できる。
●なんにも調べずに書くけど、きっと作曲当時、「夢遊病」っていうのがスゴくホットな話題だったんすかね。伯爵が本を読みながら「夢遊病」の説明をする場面なんて、台本作家のはしゃぎぶりが感じられる。アミーナのお母さんが前もって「娘がそこで疲れて眠っているので、みなさん静かにしてください」ってお願いする場面が脱力。それ伏線って言うよりネタバレだし。
●オペラ世界の中で人生を送らなければいけないとしたら、「夢遊病の娘」の村人になりたい。エルヴィーノがアミーナと結婚すると聞いたら、わー、おめでたい~と祝福し、やっぱりエルヴィーノはリーザと結婚すると聞いても、それでもおめでたい~と祝福する。村のほのぼのライフを満喫したい。
●「夢遊病の娘」にオチをつけるとしたら、こうするのが王道だと思う、すなわちアミーナは夢遊病の娘だったんじゃなくて、本当の正体は幽霊(笑)。夜な夜な幽霊が村を歩いているという村のウワサは、正しかったのであって、アミーナは幕が開く前にもう死んでいる。お母さんは娘の死が受け入れられなくて、霊魂を現実のアミーナだと思っている。本を読んで「あれは夢遊病だ」と言い張る伯爵は、霊的存在を認めない頑固な現実主義者。エルヴィーノは命を落とすことでアミーナと結ばれる……。M・ナイト・シャマランに演出させると、きっとそんな話になる(笑)。
●METライブビューイング、今シーズンは残すところロッシーニ「チェネレントラ」のみ。5月30日(土)~6月5日(金)。詳細は公式サイトで。
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J.G.バラード死去。享年78。2つ前のエントリーで「楽園への疾走」のことを書いたばかりだったのに。哀悼。

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