May 8, 2009

熱狂の後に~金沢篇

lfjk2009.jpgラ・フォル・ジュルネ金沢のことも書いておかねば。去年もそうだったんだけど、金沢に行くとみんな異口同音に「金沢ならではのラ・フォル・ジュルネにしなければ」って言う。だからワタシもついほとんどオウム返しに「金沢ならではのラ・フォル・ジュルネを見たい」とか言っちゃったりしてたんだけど、今回少し気づいた。
●能とモーツァルトのコラボレーションとか、会場前で和服美女がお茶をたててるとか、邦楽専用ホールで室内楽を演奏するとか、そういうギミックは確かにあったほうがいいし大歓迎なんだけど、これらが金沢らしさになっているわけではないね、おそらく。本質的には(東京に比べて)街も会場も小さいってことが、重要なんだと思う。今回のラ・フォル・ジュルネ金沢は、ぶらっと音楽堂にやってきて当日券を買うだけでも十分に楽しめる程度に席に余裕があったし、その一方で人気の公演は満席で、公式発表によるとあの超絶大混雑した前年よりも今年のほうが総来場者数は多かったんである(公演数は増えたから)。何を聴くにも、食べるにも、休むにも、移動するにも、ぜんぜんストレスがない。ホールの音響もいい。快適に音楽を楽しめる。
●これ、街の規模が今の数十倍だったら、そうはいかなかったと思う。東京で同じことはムリ。1500席の音楽専用ホールをメイン会場にできるのも、ホールとホールの間を5分以内で移動できるのも、他の会場で終演が遅れたからとお客さんが入ってくるのを待っててあげれるのも、サンドイッチを待ち時間ゼロ秒で買えるのも、休憩するためのイスを探してウロウロしなくて済むのも、街がこの規模だから。
●チケットの買い方にしても、この街では「当日」から逆算して考える人が多いんじゃないか。当日券でも買えるかな→心配なら当日早めに行って買おう→それも心配なら前日までに買おう→それすら厳しいならもっと前もって買おう……。発売日の発売開始時刻にあわせてチケットをゲットみたいな人はおそらくかなり少数派。
●ほかにもいろいろユルいんすよ。当日券が売り切れて、でもまだお客さんが並んでいたら、立ち見でも入れるとかっていうのは、中小都市じゃ普通の感覚だと思う。ナントでも立ち見とか通路で座って聴いてる人をたくさん見かけたけど、あれと同じ。セキュリティも厳重にはほど遠い(行儀の悪い人の存在を前提としていない)。関係ないけど、自分が在宅のときに、家のカギをかけてないでしょ、金沢の人々。東京じゃ在宅時でも二重三重にカギかけて全員セコムしてますよー(ややウソ)。
●そういう意味で今回の音楽祭はナチュラルに「金沢らしさ」全開だった気がする。ワタシはこの街の生まれだから、いたるところで「あー、そういえば、ここはこうだったんだ」と思い出すというか納得したんだけど、逆に東京スタンダードのノリで見ると不合理に見えたりすることもきっとあるにはちがいない。幼児がうるさいとか怒る人がいませんように。いずれにせよ「ラ・フォル・ジュルネ金沢」が東京の縮小コピーになる心配は要らなさそう。
●来年は金沢も「ショパン」ではあるけど、そのままショパンだとOEKの公演が協奏曲2曲だけになってしまうので、なにか独自にテーマを広げるってことなんでしょか?

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