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June 23, 2009

昼から「チェネレントラ」

●先週、新国立劇場のロッシーニ「チェネレントラ」に出かけた。平日午後2時からの公演。新国立劇場に限らず、平日昼の公演って増えてる気がするし、お客さんもよく入っている印象がある。新国の昼公演はこれで2度目なんだけど、太陽が頭の上にあるのに暗い劇場にこもるってのが不思議な気がする。まあでもそれは週末の昼でも同じか。いや、なにか違うな。
●そのうち平日午後公演ではなくて、平日午前公演が増えると予想。午前10時開演とか。そのほうが足を運びやすい人が多いと見てるんだけど、どうっすかね。リタイア世代も現役世代も。
●公演のほうはいろんなブログで絶賛されている通り、大変すばらしいものだった。アントニーノ・シラグーザとヴェッセリーナ・カサロヴァが登場、ジャン=ピエール・ポネルによるバイエルン国立歌劇場のプロダクションをレンタルして上演(再演演出グリシャ・アサガロフ)。オケはデイヴィッド・サイラス指揮東フィル。シラグーザのスターぶりを満喫。
●オペラ・ブッファで苦手なのは舞台から客席への「笑いの強要」。ワタシがオペラの文法に慣れてないからなのかな、あまりにくだらない「コミカルな仕草」とかで笑わされそうになるとそれまでの愉快な気分がさっと吹き飛ぶことがあるんだけど、そういう笑えるか笑えないか、レイジ・ウィルスに冒されてゾンビになるかどうかという点で言えば、ギリギリ笑えるほうに分類される舞台。危険な瞬間はあってはらはらしたけど、セーフ。ワタシの周囲にもゾンビになっていたお客はいなかった。オペラ劇場って、日常にひそむゾンビ化しやすい場所トップ5に入ってると思う。実際、よく見かけるし(←それ何の話?)。
●「チェネレントラ」すわなち「シンデレラ」。これはだれに対してもあらすじの説明が不要なオペラっすよね。イジワルな継母がいて、可憐な娘がいるわけだ。継母は毎日鏡に向かって言う。「鏡よ鏡、世界でいちばん美しいのはだぁれ?」。あっ、ちがった、これ「白雪姫」だ!
●いや、「チェネレントラ」って継母じゃなくて継父になってるんすよね。あと「魔法」っていう要素がないので、カボチャの馬車が出てこないのが惜しい。ガラスの靴も出てこなくて、代わりにブレスレットを片方残していく。魔法使いじゃなくて哲学者が出てきて、微妙にお説教くさい。継父が「チェネレントラの財産に手をつけてしまったのに」的なことを言う。つまりファンタジーよりもリアリズムなんだなと実感。
●ワタシが王子なら、決してアンジェリーナ(チェネレントラ)を選ばない。アンジェリーナには「カルメン」のミカエラと同じ匂いがする。つまり、一見そういう役柄ではないようでいて、実はヤな女。オペラ界のヤな女トップ3はだれだろう。ミカエラ、アンジェリーナ、あとは……そうだなあ、「トゥーランドット」のリューとか? アンジェリーナの「感じの悪さ」は、冒頭の「♪昔あるところに王さまが~」の歌とか(そんなの歌うかフツー)、初対面の王子(従者と偽っている)に真っ先に身内の悪口を言い出すところからも伝わってくる。大声で「わたしは正義~」とか叫ぶ人を信じてはいけない。一方、クロリンダとかティーズベは若いからバカなだけで、大人になって地位を得たり責任を背負ったりすれば成熟した優しくて賢い女性になりうる。あの哲学者にはどうしてそれがわかんないのかなあと全力で歯ぎしりしてみた(←どんなオペラの見方だよ!)。

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