●フランスのARTE Live Webが、ザルツブルク音楽祭でのアーノンクール指揮ウィーン・フィル公演を無料映像配信中。7月26日のコンサート。シューベルト(ウェーベルン編曲)の6つのドイツ舞曲D820、ヨーゼフ・シュトラウスの作品数曲、シューベルトの交響曲第8番「グレート」。
●映像のクォリティは低いものの、音質はそう悪くない。どういう仕組み(契約)でこういうのを無料配信できるんすかね。ありがたい。アーノンクールは相変わらずパワフル。極太ゴシック体でところどころ斜体や平体がかかって歪んでるみたいな強烈シューベルト。ラストは拳と空手チョップ入りでむちゃむちゃ盛り上がって、最後の一音は脱力ディミヌエンド。
●こういうのを見ちゃうと有料コンテンツが急に割高に思えてくるという弊害があるなあ(笑)。
●といいつつ、ベルリン・フィル「デジタル・コンサート・ホール」の来季のシーズン・パスを購入してしまった。昨シーズンからの継続申し込み者に対するプレミアムがもう少し何かあってもいいような気もするのだが、これに匹敵するサービスがほかに見当たらないのも事実。
2009年7月アーカイブ
ザルツブルク音楽祭のアーノンクール指揮ウィーン・フィル
映画「パリ・オペラ座のすべて」(フレデリック・ワイズマン監督)
●プレス試写会にて映画「パリ・オペラ座のすべて」(フレデリック・ワイズマン監督)。これは大変おもしろい。おっと、でも最初に注釈を。題名に反して、この映画には一切「オペラ」は登場しない。原題はLA DANSE - LE BALLET DE L'OPERA DE PARIS。つまりオペラ座の「バレエ」だけについてのドキュメンタリーだ。でもワタシはワクワクしながら見た。
●これはフレデリック・ワイズマンの基本的な表現スタイルなのだろうが、画面に映っているものに対して一切説明をしない。ナレーションも入らないし、キャプションも入らない。そして、取材対象者へのインタビューも採らない。撮影されている人間がカメラを意識する場面はゼロで、ただひたすらパリ・オペラ座の内側にもぐりこんで目にできるものを映し出す(それが160分も続く)。
●本番公演の映像もほとんどないと思うのだが、じゃあなにが見られるかといえば、まずは第一にレッスン。ダンサーたちの厳しい稽古だ。それから舞台のリハーサル、ゲネプロ。ミーティング。レセプション。劇場のお客さんが普段目にできないものだけを黙って映す。
●たとえばミーティングの場面では、事務局長がダンサーたちに年金制度について説明している。オペラ座のダンサーは国家公務員で、しかも40歳から年金が支給されるという特別な待遇にある(定年は42歳)。「国家公務員の年金特別制度改革が行なわれるが、ダンサーへの待遇は変わりませんよ、でも危機感を持って職務に向かわないと今後どうなるかわかんないですよ」みたいなニュアンスの話。生々しい。ダンサーたちが少し見当違いなところで拍手をする場面とかがあって、これをワイズマンは見せたかったんだろう。
●アメリカの大口寄付者を招待するのに、どんな特典をつけようかと会議をする場面も印象的。「これならリーマンブラザーズは一口か二口は買うわね」みたいな一言が、いま見ると味わい深い。
●舞台のリハーサルは、「くるみ割り人形」みたいな古典的な演目から、コンテンポラリーなものまでさまざま。ワイズマンは説明を入れないから、見る人の立場でもどうとでも受け取れるんだけど、たぶん、バレエもオペラもなにも知らない人が見ると、こんな感想を持つ可能性がある。「バレエなんて古くさい芸術だと思っていたけど、今はヨーロッパでもモダンなスタイルが試みられているんだなあ。本家パリ・オペラ座でもこんなふうに伝統を打ち破ろうとしている」。一方で、たとえばバレエには通じてないがオペラやコンサートには親しんでいる人が見ればこういう見方もありうる。「コンテンポラリーなバレエってこういう舞台で、あんな感じの音楽が付くのか……。なんだか閉塞感があって、古くさいなあ。こうして並べて見ると、古典はぜんぜん古びていないから、やっぱり偉大なものはいつになっても偉大だ」。バレエ・プロパーの方が見れば、さらにぜんぜん違う視点があるはずで、どんな解釈でも成立しうる。普通のドキュメンタリーにあるはずの説明がないから。
●説明がないといえば、本当になくて、ガルニエ宮の「くるみ割り人形」のポスターがアップで映った後に、ささっとバスチーユでの「ロメオとジュリエット」(ベルリオーズ)の舞台に切り替わったりして、これ、「くるみ割り」だと思われないか、とか(笑)。でもワタシだってバレエのことはまったくわからずに楽しんだわけだから、これでいいのか。
●「パリ・オペラ座のすべて」は今秋Bunkamura ル・シネマ他で公開。ちなみに、今回の公開を記念して、ユーロスペースでワイズマンの18作品が上映される(9/12-9/25)。日本初公開となる「エッセネ派」をはじめ、上映時間6時間の「臨死」、屠殺を描いた「肉」、「DV-ドメスティック・バイオレンス」、「DV 2」、精神異常犯罪者のための刑務所を題材にしたデビュー作「チチカット・フォーリーズ」他。問題作が並ぶ中でバレエというテーマが浮いて見えるが、現代社会を映し出す切り口として、病院、福祉施設、軍隊、学校、警察、裁判所といったものと並んで「劇場」があると思えばいいのだろう。
イブラヒモヴィッチがバルセロナに移籍
●イブラヒモヴィッチがバルセロナに移籍決定。代わりにエトーはインテルミラノへ。バルセロナにとってエトー以上のストライカーはいないと思うんだが、でもまあこれはしょうがない。すべてを達成してしまうと、もうメンバーを変えない限り落ちるしかなくなるから。
●ところでオランダVVVの本田圭佑の移籍話がぜんぜん聞こえてこないんだが、どうなったんだろ。せっかく2部リーグでMVPをとったのに、このままVVVに残ってしまうとチームにも本人も損失になってしまう気がする。
●天皇杯出場権を得た横河武蔵野FC、初戦は大分トリニータと(10/11大分)。これ、NHKで中継してくれないかなあ。天皇杯でJリーグ勢を相手に戦う下部リーグのチームは「アウェイ一発勝負」で戦わなければいけないので、条件的にはものすごく厳しい。スペインのカップ戦(コパ・デル・レイ)は逆になってて、たしか序盤は下部リーグのほうのホームで一発勝負の試合をしていたと思う。レアルマドリッドのホームにアマチュアクラブが来てもお客は入らないが、アマチュアクラブのホームにレアルマドリッドがやってきたら確実に盛り上がるわけで、大会的にはこちらのほうがだんぜんおもしろくなる。
アナログ茶の間ライフ
●ミューザ川崎の「フェスタサマーミューザ」へ。チョン・ミョンフン指揮東フィルのブラームスがスゴすぎる。交響曲第1番と第2番っていう演目でお腹いっぱい。たとえるならステーキ食べて鰻重食べたみたいなご馳走感。帰宅すると深夜にバイロイトの「ラインの黄金」中継が待っている……。
●出版情報を一つ。「芭蕉布 普久原恒勇が語る沖縄・島の音と光」(磯田健一郎編著/ボーダーインク刊)。「芭蕉布」他で知られる沖縄を代表する作曲家普久原恒勇氏のロングインタビューを単行本化。版元は那覇のボーダーインク。東京の書店ではなかなか見かけないかもしれないので(出版流通の仕組みって複雑なんすよ)、ご関心のある方はリンク先の版元サイトからお求めになるのが吉かと。
●続いてテレビ放送情報を。NHK-BS「クラシック倶楽部」にて、ピアニスト大井浩明さんのベートーヴェンが取り上げられる。NHK大阪のスタジオに計6台のフォルテピアノ&クラヴィコードを持ち込んで、ベートーヴェンの生涯に沿って、作曲家が使用した楽器がどう変遷したかをたどる構成。曲はリスト編曲の「エロイカ」第1楽章、「テンペスト」ソナタ第1楽章他。NHKのサイトにまだ詳細が出ていないので、アルテスさんのページにリンクしちゃおう→放送予定。放送日時は8月5日(水) 6:00~6:55(BS-hi)、9/15(火) 10:55~11:50(BS2)。これは見るしか。アナログ派は9月になるのか。
●アナログテレビってどうなるんすかね。いや、2011年7月に放送が終了するのは知ってるんだけど、ホントに終了すると「なんか機械の買い替えとか接続とか難しくてよくわかんないから」とかいってそのままテレビから引退する家庭がポツポツありそう。10世帯に1世帯くらいとか(←ズレてる?)。
●「うわ、肝心なところでゴールマウスに『アナログ』の巨大文字がっ!」(←2011年6月頃のサッカー中継想像図)
バイロイト音楽祭放送中
●バイロイト音楽祭開幕。せっかくの生中継なのでペーター・シュナイダー指揮の「トリスタンとイゾルデ」を途中まで。GMT14:00開演なので、日本(JST+9)では午後11時開幕。週末なのでこれなら一応は聴けるが、さすがに最後まではムリ。生中継だから休憩時間もそのまま付き合うことになるわけで、最後まで聴くと朝になる。バイエルン放送の番組表は7時間の枠を取ってあった。
●こうして毎年第1幕とかだけ聴いてると「トリスタンとイゾルデ」がハッピーエンドの話に思えてくる。二人ともクスリで超ラブラブでおしまい、みたいな。
●バイロイトに関してはハンガリーのBartok Radioも中継をしてくれているので、例によってアーカイブを聴かせてもらう手もあり。このサービスっていつかなくなるだろうと思ってたんだけど、意外と平気なのが謎。このあたりとかで聴ける。
●おっと、二日目の演目「マイスタージンガー」のファンファーレがはじまった。これも第1幕だけでも聴くか。
●バイロイトと言えば、昨年は映像付きの有料中継が話題になった(参考:ネットで聴くバイロイト音楽祭@日経PC)。カタリーナ・ワーグナー演出の「ニュルンベルクのマイスタージンガー」1公演で49ユーロはありえん価格設定だなと思ったが、今年はどうなったかというと、14.90ユーロで「トリスタンとイゾルデ」が生中継される(8月9日)。生中継ではムリな方は8月10日から23日までオンデマンドで鑑賞可能。ベルリン・フィルのデジタル・コンサート・ホールが一公演10ユーロほどだから、これは妥当な価格設定か……いやいや、この手のものは自分で体験してみないとなんとも言いようがないな。音質画質のクォリティとか、カメラワークはどうか、アクセスしやすいか、混雑してないか等々。うーむ、どうしよう。微妙かも。
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関連リンク:
クラシックのネットラジオと音楽配信リンク
ゾンビと私 その8 - The Zombie Survival Guide: Complete Protection from the Living Dead
●フランクフルトに数百人の「ゾンビ」が出現(ロイター)。この記事には写真が少ないので探してみた。Zombies Invade Frankfurt。
●フツーに怖いよ、これ。どうしてこんなことするの。「ゾンビのメイクを施した」っていうけど、本物が混じってたらどうするのか。これが皆既日蝕と重なってたら、確実に街は壊滅していた。
●そんなゾンビ恐怖症のみなさまとワタシにとって、生き残るために必読の書と思われる本を発見した。その名も The Zombie Survival Guide: Complete Protection from the Living Dead (Max Brooks著)。これだ! これぞまさしくワタシたちが必要としている本では?
●同書の案内文に書かれた「ゾンビの攻撃から生き残るための10のレッスン」はこんな感じだ。
1. ヤツらが生き返る前に準備せよ。
2. ヤツらは恐怖を感じない。ならばあなたも怖がるな。
3. 自分の頭を使え。ヤツらの頭を切り落とせ。
4. 刃物は弾切れを起こさない。
5. 最善の防具は、ぴったりとした服と短い髪。
6. 階段を昇れ。そして破壊せよ。
7. クルマから降りよ。自転車に乗れ。
8. 動き続けろ、姿勢を低くしろ、静かにせよ、警戒を怠るな!
9. 安全な場所はない。より安全な場所があるだけだ。
10. ゾンビが去っても、脅威は続く。
●なるほどー。いちいちタメになることばかり。でもこれ英語なんすよね。読めないと思うが、一応注文しておくか……。どこかの出版社で翻訳してくれないだろうか?
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不定期連載「ゾンビと私」
日蝕来たる
●皆既日蝕とまではいかないが、東京でも75%まで太陽が欠ける部分日蝕。といっても空を見上げても曇り空、もともと暗かったので蝕のためにどれくらい暗くなっているのかはわからない。知らなきゃ気がつかない程度なんだから、25%の本気度で雲を突き抜けてこれだけ世界を明るくする太陽の力ってスゴい。
●屋久島とか上海とか、皆既日食になる地域は本当に真っ暗になったんすね。星が見えるくらいに暗い、と。ネット中継やテレビを見たが、これは画面からはあまりうまく伝わらないタイプの感動なんだろうなあ。昼に暗闇が訪れ、すぐにまた夜明けがやってくるなんてきっと鳥肌モノ。蝕のメカニズムを知らなければ、神の仕業としか思えない。ていうか天体の運動とか物理法則そのものが神の仕業とも言えるが。
●アシモフの短篇小説「夜来たる」を思い出す。舞台となる惑星には6つの太陽がある(連星自体は現実世界でも珍しくない)。6つの太陽のうちいくつかが常に空に見えるので、この星には夜が来ない。ところが2000年に一度だけ、この星にも夜が来る。うろ覚えだが、たしか空に太陽が一つしかないタイミングで蝕が起きて夜が来るという設定だったと思う。昼しか知らない文明が初めて夜というものに直面してなにが起きるか……という話。せっかくリアル日蝕が来たのに、ハヤカワ文庫は品切or絶版のもよう。もうアシモフなんて売れないのか。
●日蝕とともに人々がゾンビ化するという悪夢を恐れていたのだが、どうやら無事だったようだ、ワタシの知る限りでは。
ネットラジオで夏の音楽祭
●そうだった、「夏の音楽祭」のシーズンに入っていたのだった。Proms2009はもう始まっているし、バイロイト音楽祭ももうすぐ開幕する。
Proms2009
すでに開幕。各公演7日間に限りオンデマンドで聴ける。時差を気にしなくていいのがありがたい。
BAYREUTH BROADCASTS 2009 (opera cast)
毎年バイロイト音楽祭の放送日程を特設ページにまとめてくれるoperacast.com。7/25~欧州各局生中継。再放送までおさえてくれる親切仕様。個人運営サイト。
おかか since 1968 Ver.2.0
おなじみ、おかかさんの海外ウェブラジオで聞けるクラシック音楽ライブ番組表(労作に感謝)。ザルツブルク、エクサンプロヴァンス、シュヴェツィンゲン、オールドバラ等々、番組表もすっかり音楽祭の季節。
●特にこの時期は聴きものが多いので、基本、諦めが肝心(笑)。どんなに時間があってもほとんどは聴けないんだし、全部聴いてるヤツはいない。フツーはバイロイト一本聴くのだって大変なわけで。いやそれともどこかに神みたいなネトラジ廃人もいるのか。いるんだろうな。きっといる。
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●本日は日蝕。皆既日蝕は屋久島とか奄美大島に行かなきゃ見れないみたいだが、東京でも75%まで欠けるという。東京で蝕が最大になるのは11時12分。曇り空だとなにも起きないのだろうか?
「ティファニーで朝食を」(カポーティ)
●電車で読む用にササッと今すぐ本屋で一冊買わなければいけない、薄い文庫で絶対にハズさないものを。ということで手にした、いまさらながらの名作、しかし去年生まれた新訳でもあり。
●「ティファニーで朝食を」(トルーマン・カポーティ著/村上春樹訳/新潮文庫)。なんとワタシはあの有名な映画のほうを知らないので、なんの先入観もなくカポーティが描いたホリー・ゴライトリーという女性の人物像を頭に思い描くことができた。ああ、いるいる、こういう自由奔放で気まぐれで、どうしようもなく魅力的なんだけれど心底憂鬱な女性……と、一瞬思ったが、よく考えたらそんなホリーみたいな人なんて本当は見たことも会ったこともないのだ。物語が喚起する仮想的な記憶ってスゴい。
●ホリーみたいな生き方をしていると、「いやったらしいアカに心が染まるとき」があるのは避けられない、つまり、なにかわからないけど悪いことが起きそうで、怖くなる、不安に苛まれて、自分を見失いそうになる。そういうときにホリーを救ってくれるのは「タクシーをつかまえてティファニーに行くこと」。すると、気分がすっきりする。
●これは共感できるだろうか。できるような気がする。男の場合はリアル・ティファニーでは役に立たないので、なにかそれに代わる場所が必要かもしれない。クラヲタだったら、超ステキなCDショップとか? いやいや、違うな。CDはあまりにも本物すぎる。もっとまやかしみたいなものじゃなければ、タクシーをつかまえて飛び込んだりはしないだろう。
●「たしなみのある男性なら、女の子が化粧室に行きたいって言えば、五十ドルは渡してくれるわ」。しまった、そうだったのかっ!(笑)
あの土地に住めるか
●長距離列車に乗って移動していると、「人はどこにでも住んでいる」ことに気づく。駅と駅を結んで線路が走っているわけだから、人が住んでいるから電車が走っているというべきかもしれないが、田んぼや畑の間にも、あるいは山と山の間にも、川と野原の間にも、住居があり集落がある。車窓の風景を眺めていると「あの家で自分は暮らせるだろうか」ということをよく考える。都市ならどこで暮らすこともできて当然として、たとえばあの田んぼの中の一軒家でも暮らせるのか、と。
●農業は自分にはできないだろう。クルマを運転しないから足がなくて生活ができないかもしれない。あ、あそこにショッピングセンターが一軒あった。あの店から徒歩20分圏内ならクルマなしでも住めるかもしれない。
●生のコンサートやオペラはあきらめるしかない、だが意外と音楽生活は充実するかもしれない。国内なら島でもなければどこにいても今と同じように通販でCDを購入できるし、ネットのおかげで情報格差もないし、ADSLがあればネットラジオも聴ける、ベルリン・フィル・デジタルコンサートホールにもアクセスできる、オーディオに凝るようになればある意味生演奏では聴けない豊かな再生音を楽しめるようになるかも。
●空想上のワタシは指名手配中の政治犯になる。公安から逃れるためにニセの身分証明書を携え、絶対に見つからない隠れ家を探しているのだ。自分とこれまでになんの地縁もない土地を選ばなければ。徒歩圏内にショッピングセンターがあってADSLが通ってて、賃貸住宅があるところ。たとえば、あのポツンと建っている一軒家が貸家だったりしないだろうか……いや、あの場所は大雨のときに土砂崩れに遭うかもしれない。あのステキなマンションはどうだろうか。しかし少し都会すぎるか、いやいや田舎によそ者が突然あらわれるほうがよっぽど怪しい、60歳過ぎなら「退職して移住しました」で済むが、いまならなんと自分の職業を説明すればいいのか、きっと本当になにか仕事を始めるしかないだろう、たとえばカフェを開店するとか、日本に真の革命を起こすまでのガマンだ、マスターになって自家焙煎のコーヒーを焼き、お客様に「いらっしゃいませ」と声を掛ける。常連さんができて、地元のタウン誌に「コーヒーのうまい店」みたいにとりあげられたりして、ちょっぴりそれが嬉しかったりする、いやいやダメだダメだそれでは公安に見つかるではないか。
●組織から「なるべく外出するな」という指令が下る。こうなるとスーパーにも足を運べなくなるので、米も醤油もamazonで買う。でも野菜はどうする、Oisixとかでいいのか。割高だが地下に潜伏している以上はしょうがない。「お取り寄せ」商品だらけで、意外と贅沢な食生活になるかもしれない、太り過ぎないように運動を始めなければ……。
●と果てしなく妄想しているうちに目的地に到着する。
夏はサマー、祭りはフェスタ
●東京はいきなり真夏になった。ここ数日、おそろしく蒸し暑かった。外を歩いているとくらくらするほど暑い。吹き出る汗が止まらない。頭がぼうっとする。集中力を欠きがちで、仕事ははかどらないし、かといって遊ぶにも暑すぎる。冷房が効いた部屋に入ると一瞬ほっとするが、今度は体が芯から冷えて、体調がおかしくなる。そういう夏が、わりと好き。春の次くらいに。
●7月26日から8月16日まで、今年もミューザ川崎で「フェスタサマーミューザ」が開催される。首都圏の9つのオーケストラが順次登場するのだが、公演のフォーマットは微妙に普通のコンサートと異なる。原則として公演時間は約70分程度で短めで、平日夜公演は20時開演が多いという川崎近辺の方以外も足を運びやすくなる設定。平日昼の公演もあるし、もちろん休日の公演もある。料金はかなり安価。同じホールで複数のオケを聴き比べるというのも楽しいんではないかと。オススメ。
フェスタサマーミューザKAWASAKI2009(@電子チケットぴあ)
ニューヨーク・フィルがiPhoneアプリ/マゼールのマーラー交響曲全集
●また親切な方から教えていただいた情報。ニューヨーク・フィルがiPhoneアプリを配布中。iPhoneアプリを提供する初のオーケストラである、と。ワタシはiPhoneもiPod Touchも持っていないので試せないのだが、以下からダウンロードできる。無料。メニュー写真を見ると、ニューヨーク・フィルの演奏会情報、チケット購入のほか、同オーケストラのライヴ音源を聴けるようになっているようだ。
http://nyphil.org/buy/eStore/iphoneApp.cfm
●そのニューヨーク・フィルだが、2002~2009にかけてのロリン・マゼール音楽監督時代を記念して、ライヴ録音によるマーラーの交響曲全集を配信している。交響曲第8番「千人の交響曲」のみ8月25日のリリースとなるが、それ以外の1番から第10番アダージョはすでに各配信サービスで販売されている。
●販売チャンネルは、iTunes,米amazon.com, emusic, HDtracks, ClassicalArchives, instantEncoreとたくさんそろっていて、「そういうことになっているのか」とあれこれ発見があったのだが、このあたりについてはまた改めて話題にしたい。iTunesも米amazon.comもDRMフリーの行儀の良いファイルを販売しているが、後者は諸般の事情で日本からは購入不可。iTunesのほうは日本語&日本円で購入できる。
マーラー:交響曲第9番 マゼール指揮ニューヨーク・フィル
バリーニによるリスト編曲の「第九」
●リストってワイマールの宮廷劇場で開かれたベートーヴェンの生誕100年を祝う演奏会で、「第九」の指揮をしてるんすよね。20世紀半ばくらいにどんなベートーヴェンが演奏されてたかはワタシらは録音で知ってて、一方でベートーヴェンが生きてた時代にどんな「第九」が演奏されてたかも(本当はわからないかもしれんが)ある程度復元されてることになってるわけだけど、その両者ってぜんぜん違うことになってるじゃないですか。だとすると、その中間くらいにあるリストの時代の「第九」ってどんなふうに演奏されてたんすかね。机の引き出しがタイムマシンになってたら、過去に旅してリスト指揮の「第九」とか録音して持ち帰りたい。
●リストはベートーヴェンの交響曲9曲をピアノ用に編曲している。今はオケの演奏を聴きたいと思えばいくらでも録音で聴けるし、それどころか「第九」についていえば生演奏だって12月半ば以降は首都圏で毎日(場合によっては1日にいくつも)演奏されるわけだ。だからリスト版「第九」を聴く機会はそう多くはないんだけど、ときどき気合の入った録音が出てくる。これはイタリアのピアニスト、マウリツィオ・バリーニが最近DECCAに録音したディスク。スケールの大きな音楽を作っていて、実に雄弁。本来オケと独唱と合唱で演奏するものをピアノ一台で演奏してるわけだから、そこに「欠落」を感じてもおかしくないのに、このバリーニの演奏を聴いているとむしろ「過剰」を感じかねない。なんて立派で巨大な音楽なんだろう。
●マウリツィオ・バリーニ(Maurizio Baglini)って日本語で書くとポリーニと一字違いになっちゃうんすよね……。amazonで検索すると「みつかりません。もしかしてポリーニ?」みたいに言われちゃうのが惜しい。来日もしてるのに。ところで「ん、DECCAからバリーニのCD? そんなものお店で見かけんぞ」と疑問に思われる方も多いだろうから、少し説明。これはイタリアDECCAのリリースなんすよ。だから日本はもちろん英仏独のamazonでも商品を扱っていない(イタリアにamazonはない)。で、イタリアのユニバーサルのサイトを見ると、いろんな見たことのないディスクが出ている。あっ、カシオーリってイタリアじゃDECCAからCD出してるんだ、とか。
●このCD、アーティストのエージェント氏から売り込まれて取り上げているのだが(一面識もない、でも割とよくあるパターン。みんなどうやってこの日本語サイトを見つけるの?)、どうも日本からの適当な入手先が見つけられない……スマソ。iTunesでも取り扱っていない。こういうローカル・リリースのものこそデジタルで配信してくれたらいいと思うんだが。
オンデマンドでロスフィル
●今週の親切な方から教えてもらいました情報。KUSCのロサンジェルス・フィル・ライヴは、放送後約1週間ほどはオンデマンドで聴けるのだ(知らなかった……)。現在あがっているのはサロネン指揮のベートーヴェンの交響曲第5番、自作のヴァイオリン協奏曲、リゲティの12人の女声と管弦楽のための「時計と雲」というプログラム。聴くしか。
http://www.kusc.org/classical/ListenNow/ArchivePodcasts/LAPhilStream.php
●自分のかかわった企画なので告知しとこう。「ドライブ・クラシック BEST!」。快適なドライブにぴったり、ステキな名曲を収録したお手軽な一枚。なぜこの選曲がドライブなのかは謎すぎる謎でありもっともな謎。さっそくこのCDをかけながらドライブへ、ハンドル握って海へ山へ仕事へ自分探しの旅へとGO! いや、クルマ運転しないけど。あ、まだ免許の有効期限って切れてないんだっけ!?
週末フットボールパラダイス~ユース選手権出場記念勝利編
●都議選終了。出口調査を受けた。あなたの支持するクラブはどこですか? 1.東京 2.ヴェルディ 3. 横河武蔵野 4. ゼルビア町田
●勢いよく3と答えた(ウソ)。ビバ東京第三勢力。東京第三勢力ってなんだか第三新東京市っぽい。で、週末は武蔵野陸上競技場でJFLの横河武蔵野FCvsTDK SC。観客906名となかなか盛況。TDKは秋田のチーム。相手が秋田だろうが鳥取だろうが琉球だろうが、必ずアウェイ側応援席にはけっこうな数のお客さんが入っているのが謎。
●ハーフタイムに発表があったのだが、横河武蔵野FCユースが浦和レッズユースを破り、関東第9代表として日本クラブユース選手権(U-18)大会への出場が決まった。浦和レッズユースの前にはJEF市原千葉ユースに勝利してここまで勝ち上がっている。これってスゴくないですか。3部リーグであるJFLにもJ1のユースと対等以上に戦えるユースチームが誕生しているわけで、この裾野の広がり方、恐るべし。
●で、試合のほうは1-0で勝ったが、内容的にはもうひとつ。試合開始直後からポゼッションでもチャンスの数でも武蔵野がTDKを圧倒し、簡単に勝てる試合のような印象を受けたが、なかなか点が入らない。後半序盤にキーパーチャージかどうか微妙なプレイで主審が笛を吹かず、武蔵野の関野が無人のゴールに蹴り込んで、意外な形で先制。すると妙な安心感が選手に広がってしまったのか、「受けて立つ」ようになり、時間とともにどんどんパフォーマンスが落ちてしまった。選手の交代も効かず。運動量で劣勢に立たされ、「これは同点、さらに逆転されるのは時間の問題かな」と覚悟していたのだが、そのまま守りきって勝った。
●こういう勝ちもあるんだなー。内容が良くて負けることもあるからトータルでは五分五分なのか。結果だけ見るといつもの堅守の「1-0」に見えるが、中身はぜんぜん違ってたという試合。
●これで2連勝して復調、現在SAGAWA SHIGA FCに続いてJFL単独2位。非J準加盟チームが上位に並んでいる。
映画「クララ・シューマン 愛の協奏曲」他
●音楽系映画ネタをいくつか。
●まずは「クララ・シューマン 愛の協奏曲」から。試写を見た。音楽史的にも有名なシューマンとクララ、そしてブラームス3人の関係を描いたものなのだが、なんといっても目をひくのは監督の名前だ。ヘルマ・サンダース=ブラームス監督。そう、監督がブラームスさんなんである。しかも本当に作曲家ブラームスと遠縁で、ヨハネスの叔父の子孫なんだそうである(ヨハネスには子供がいないので直系の子孫は存在しない)。
●見どころはいくつもある。まずブラームス像が新鮮。どういうキャラかというと「エキセントリックな若者」。微妙にハジけてます。シューマン夫妻のキッズたちからすっかり兄ちゃん扱いされるステキなヤツ。
●クララ・シューマンはロベルトを助けながらも、子育てもするし、ブラームスにも惹かれるし、しかも音楽的才能に恵まれているけど女性であるがゆえに家庭に入らざるを得ないという立場(天才ピアニストとしてヨーロッパを駆け巡っていた後の時代の設定だ)。じゃあロベルトはなにをしているかといえば、デュッセルドルフの音楽監督に招かれて「ライン」交響曲を作曲しているんだけど、頭の中が錯乱してきて、アル中でヤク中のヤバいことになっている。史実通り、ライン川に飛び込んで一命を取り留めた後、病院で怖すぎる治療を受けていた。パスカル・グレゴリーが好演。
●「敬愛なるベートーヴェン」とそっくりなシーンが出てきて仰天。そういえばあれも女性監督だったか。これは知っててなのか、たまたまなのか。ヒント:二人羽織指揮。
●映画なのでもちろん史実とは異なるところもあるわけだが、個人的にはもっと大胆なアイディアに基づいてフィクションを盛り込んでほしかった気もする。クララとブラームスの描き方もやや物足りないが、ロベルトの狂気は見ごたえあり。7月25日よりBunkamuraル・シネマ他で公開。ロベルトの音楽はもちろん、クララの音楽も登場する。
●続いて公開情報。フレデリック・ワイズマン監督のドキュメンタリー「パリ・オペラ座のすべて」の公開が決定。今秋、Bunkamuraル・シネマほか全国順次ロードショー。プレス向けの写真を見ていると、どうもオペラよりもバレエのほうに焦点があたっているようにも見えるが。フレデリック・ワイズマン監督という点でも一部の注目を集めるのでは。
●もう一作。第62回カンヌ国際映画祭クロージング作品の「シャネル&ストラヴィンスキー」が2010年正月に公開。ヤン・クーネン監督。「ココ・シャネルの秘められた愛の物語とストラヴィンスキーの『春の祭典』再演秘話を名曲にのせて美しく描く」という。ストラヴィンスキー役は「007/カジノ・ロワイヤル」(新しいほう)で悪役を演じたマッツ・ミケルセン。期待大。
1Q84
●遅まきながら「1Q84」(村上春樹著/新潮社)ほぼ読了。なにしろ1ページ目からヤナーチェクの「シンフォニエッタ」が鳴り出す。この物語、自分の話なんじゃないかと思いながら読んでしまった。ここ何年か、ワタシのケータイのメール着信音はヤナーチェクの「シンフォニエッタ」なんすよ。タクシーに乗ってこの曲をカーステレオで聴いたとこから世界がそれまでと少しだけ(いや大きくか)変化している。ワタシもメールを受信するたびにどんどん違った世界に飛び立っているんだろか。で、男性主人公のほうがもともと数学得意だったのに今は作家志望っていうのも、ワタシから見てなんか微妙に真横にズレた平行線を走ってる感じがするし、ヤナーチェク以外に出てくる曲もバッハとかヴィヴァルディとかハイドンとかダウランドとか妙に親近感がある。さらにあのカルト教団やらあの編集者とか。「1Q84」の延長上にある「200Q」とか「20O9」とか「2O09」とか「Z0O9」とかにワタシはいるのかもしれん……。
●ぜんぜん関係ないけど。「オバケの9太郎」。プププ(←ちっとも可笑しくありません)。
●ネットラジオ一口メモ。シカゴのFM局WFMTがしばらく前から高音質のACCで配信してくれるようになった(mp3やwmaでの配信は相変わらず低ビットレートのまま)。129~165Kpbsくらいの高ビットレートAACへの直リンはこちら。クリックしても再生されない方は、.plsファイルをRealPlayerかiTunesで開くように設定すれば吉かと。
クラシックのネットラジオと音楽配信リンクのページではすでに対応済み。
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追記:
親切な方から教えていただきました。7月25日までシカゴ交響楽団のサイトで、小澤征爾指揮によるヤナーチェク「シンフォニエッタ」のライヴ音源を無料で聴くことができます(これは「1Q84」下巻に登場するレコードと同じ指揮者とオーケストラではないか)。なんてタイムリーなんだろう、シカゴ交響楽団。「シンフォニエッタ」は番組の最後の30分くらいに登場。
「のだめカンタービレ 最終楽章」
●上野樹里と玉木宏の映画版「のだめカンタービレ」は、2部作になっているようで、前編が12月19日公開、後編が来年春予定。タイトルは「のだめカンタービレ 最終楽章」。なんとウィーンのムジークフェライン大ホールで玉木演じる千秋真一が「ベト7」を振ったとか(→映画版『のだめカンタービレ』撮影現場からレポート!)。これは楽しみっすねー。
●で、「正装したヨーロッパの人々」を客席に入れ、その中央で花束を抱えて見守る「のだめ」という演出が入るっぽいんだが、このシーンには注目したい。以前のテレビドラマ版では、演奏中に客席のエキストラたちが(音楽に合わせて?)首を左右にゆっくり振りながら聴き入るという、なんだかスゴい謎演出があった。多くのクラヲタたちはあれを見てこう思ったはず。「ぷぷ、なにそれ、曲に合わせて首を左右に振るヤツなんていないって!」。
●だが、恐るべしテレビ。先日、あるオーケストラの定期演奏会で本当にワタシの近くにいらっしゃったんである、まさにあの演出のように首を左右にゆっくり振りながら聴くおばさまが! 果たしてエキストラの「正装したヨーロッパの人々」も、首を振りながら「ベト7」を聴くのだろうか……。
カメラータ・トウキョウの音源をKRIPTON HQM STOREが超高音質で配信
●音楽配信系の話題は海外でのニュースが多くなりがちなんだけど、久々に国内から意欲的な企画が登場。6月29日より、カメラータ・トウキョウの音源がKRIPTON HQM STOREで24bit/96kHzの高音質で配信されている。これはCDを超える情報量だ。しかもDRMフリーのFLAC (Free Losless Audio Codec) フォーマットで配信されている!
●PC経由の音楽配信の世界では、256kbpsのmp3みたいな圧縮音源で「十分高音質」とされてきた(ワタシもそう思ってる)。でもよく考えてみれば、PCで音源を配信するということはCD規格よりももっと高音質のものだって流通させられるってことだ。クリプトン社のリリースによれば、HQM STOREで配信されるデータは「CDと比較して約500倍の情報量を有する」という。これはCDの16bit/44.1kHzに対して、24bit/96kHzは、(2^24*96)/(2^16*44.1)= 557 っていうことで約500倍?
●で、これを可逆圧縮のフォーマットであるFLACで配信している。可逆圧縮だからmp3のような情報の省略はなく、再生時に100%で復元する(ワタシの大ざっぱな理解ではzipやlhaと同じような圧縮。だから圧縮率もその程度なのでファイルサイズは大きくなる)。そして、ワタシはここが一番すばらしいと思うのだが、これほど高音質なデータであるにもかかわらず、DRM(著作権管理技術)フリー、つまりいくらでも自由にコピーができるファイル形式になっている。これは圧倒的に正しい。
●何度も繰り返して書いていることだが、音楽ファンにとってDRMの付いたファイルというのは「いつなんどき聴けなくなってしまうかもしれない」憂鬱なファイルだ。仕様や制限もファイルごとにバラバラで困ったもの。なので、最近はamazon.comだろうがiTunesだろうがインターナショナルにはDRMフリーの音源を販売しており、この問題は決着が付いているはずなのだが、国内市場に関してはなぜかまだそこまでは至っていない。でもここでカメラータ・トウキョウは「DRMフリー、しかもCDより高音質」という英断を下してくれた。快挙。
●と、激しく拍手をしておいた上で、いくつか留意すべき点を。KRIPTON HQM STORE はまだ誕生したばかりのサイトなので、現在カタログに載っている音源はアルバム3点分のみ。これに関しては今後次々拡充されていくようで、年内は毎月おおむね3点程度のペースで増えていくとのこと。クォリティを反映して、価格はやや強気の設定。
●また、個別アルバムのページに Play と書かれた試聴ボタンが付いているが、この試聴で聴ける音源はmp3であって、24bit/96kHz FLACの超高音質ファイルではない。「じゃあ買わないと24bit/96kHzは試聴できないのか」というとそんなことはなく、環境テスト用も兼ねてのサンプル・ファイルがサポート・ページの最下部からダウンロードできるようになっている。
●関心のある方は、まずこのサンプルを一度再生してみるのが吉。特にハイエンド志向の方にオススメ。「FLACなんて知らない」という方は、まずこれを再生できる環境を整える必要がある。いくつか方法はあるが、ワタシはなるべく何でもWindows Media Playerで再生したい派なので、CoreFLAC Decoderをインストールした。簡単にインストールできる。
>> KRIPTON HQM STORE
http://www.hqm-store.com/
誰なのキミは?
●低山散歩でもしたいな~と思いつつもあれこれ慌しく足が遠のいて初夏、やむを得ず近所の公園散歩作戦に切り替える。里山と公園の違いっていうのは、来るべき審判の日に街がゾンビで埋め尽くされることになった場合、前者は場合によっては避難所になり得るかもしれないのに対して、後者に逃げた場合は絶望的に助からないっていう点だが、まあそれはよしとして、ふと気がつくと池の中に見慣れない生命体が。
●あー、そこの鳥類、なんだか幼鳥っぽいんすけどキミは誰なの?と尋ねても答えが返ってこないが、本格的カメラを持参して撮影していた方が教えてくれた、ゴイサギの幼鳥だと。おおー、初めて見た。そういえばさっき成鳥のほうが獲物をゴックンと食するシーンを見たところだが、そいつの子どもなのか。テキトーなカメラなので拡大してみてもこんな感じ。
●さらに蓮の葉の上をチョコチョコと歩く別の幼鳥を発見。
●これもなんだかわからないので尋ねてみたら、バンの幼鳥であると。バンは少し前にヒナたちが親鳥のお尻を追いかけて泳いでいるのを見かけたが、それがもうこんなになったのか……というかヒナのときは親ソックリで真っ黒だったのに、なんか別人というか別鳥。これ黒くなるの?
●カルガモ・ファミリーもキッズが育ってほぼ独り立ちしていた。ほかに渡り遅れて一羽だけ残されたオナガカモ、カイツブリ、性格の凶悪そうなアヒル、ガチョウ、バリケン、ノラ猫などいつものメンバーを見かける。あと、人類も。オジサン、オバサン、若者、コドモ、老人、詩人、絵描きなど。幸いゾンビは見かけなかった。
「ありがと~う!」
●あるピアニストのリサイタルで、アンコールが終わった後に客席から飛び出したかけ声がこれ。「ありがと~う!」。これは正しい、圧倒的に。「ブラボー」でも「ブラ~ボ」でもなく「ありがとう」。女性だった。ステキな音楽を聴かせてくれてありがとう、楽しい時を過ごさせてくれてありがとう。
●「ブラボー」は完璧完全100%十分にすでに客席に定着してるけど、なんかフツーの日本人としては照れくさい感が大アリなわけで、感極まったからツルッと出るかと言えば出ない。そこで「ありがと~う!」。これならツルツルッと出る。感謝の気持ち、すばらしいですね。
●じゃあ「ブー!」はどうなんだっていうと、これは前にも書いたけど、日本人の多くはうまくできないので、代わりに「エーッ!?」がオススメ。ブーイングならぬ、エーイング。
●これから東京のコンサートホールには「ありがと~う!」が流行する予感。さあ、アーティストへの感謝の気持ちを込めて、恥ずかしがらずに大きな声で言いましょう。「ごちそうさま~!」、あっ、ちがった!
Ctrl とCapsLock
●すっごく古典的な話なんだけど、今のPC用のキーボードって a の左隣にCapsLockキーがあって、一番左下と一番右下にCtrlキーがあるじゃないっすか。CapsLockなんて年に一回使うかどうかも怪しいくらいなのにスゴく押しやすい位置にあって、一方でCtrlキーはたぶんどのキーよりも一番押すのに、ありえないほど押しにくい場所にある。だから、多くの人がするように CapsLock と 左Ctrlをソフトウェア的に入れ替えている。使ってるソフトはAltIME。
●でもこんなことしなくても、最初から物理的にCapsLockとCtrlが逆に配置されているPC用キーボードがあればいいわけだ。そう思ってヨドバシカメラとかウロウロしてもそんなキーボードは見つからない。ネットで探すとあることはあるけど、高価すぎる。どうしてこんなことになったんすかね。昔からこの配置だったっけ? 逆の時代もなかったかなあ。
●で、ふと思ったんだけど、ひょっとして今のキーボードの規格を決めた人は、ラフマニノフとかリスト並みにデカい手をしていたんじゃないだろか。ワタシは文章入力中はEnterを入力する場面では常にCtrl+Mを代わりに入力するんだけど、デカい手なら軽々と左小指でCtrlを押しながら右人差し指でMを押せるんじゃないか。ていうかそれくらいデカけりゃ右人差し指をホームポジションの J に置いたままでも楽に小指でEnterを押せるから、Ctrl+Mを使う必要すらないのか。
●あと、右Ctrlキーってどんなときに押すんだろう。これは左利きの人がマウスを使いながら、右手でCtrlを押すためにあるのかなと一瞬思ったけど、でも左利きの人がマウスを左側に置くのかどうかもイマイチよくわからない。右利きでもケータイでメールを打つ操作は左手でやるからなあ。いずれにせよ、ウチのPCの右Ctrlキーはこれまでに一度も押下されたことがない気がする。
●唐突に激しく連打して、君の存在意義を認めてあげたくなった、右Ctrlキー。(←詩人の気分で)
ラフマニノフの「鐘」
●フィギュアスケートの浅田真央が、今季のフリーの演技にラフマニノフの「鐘」を使用。と、ニュースで聞いて「えっ、それってどの曲だっけ?」と戸惑ったのはワタシだけじゃないと思う。
●この「鐘」っていうのは、有名な前奏曲嬰ハ短調Op.3-2のことなんだそうだ。この曲、ワタシはそう認識してなかったんだけど、最近は「鐘」っていう愛称が付くことが多いっぽい。初期の作品ながら作曲者本人がリサイタルで好んで弾いた(弾かされた)人気曲で、曲名でピンと来なくても聴けば「ああ、あれか」とわかるタイプの曲。古い録音だが、ラフマニノフ本人の演奏も残っている(このCDの16トラック目。amazonで試聴しようとすると「バッハ=ラフマニノフ編」と本来次のトラックに付くべき文言が誤ってくっついていて紛らわしい)。このディスクでも「鐘」なんてタイトルは付いていないんだが、「前奏曲嬰ハ短調」じゃフツーの人はなかなか興味を持ってくれないので、この手の愛称は歓迎する派。音楽の内容にも即してるし、これからはワタシも「鐘」って呼ぼう……いやどうかな。
●ラフマニノフは「鐘」がやたら出てくる。そもそも「鐘」っていう作品が別にある。管弦楽、合唱、独唱のための「鐘」作品35。フィギュアスケートのファンがまちがってこっちのほうを買ったりしないか心配だ。ていうかまちがってもそれはそれで悪くないか。ピアノ協奏曲第2番の冒頭も「鐘」の音だ。ロシア正教の「鐘」なんか聞いたことがなくても、「鐘」って伝わる。無伴奏の合唱曲「晩祷」からもところどころ鐘のような響きが聞こえてくる。鐘の音を慕うのは、少年時代への郷愁からか、あるいはロシア人としてのアイデンティティの表明なのか。