●夏休みの読書感想文宿題対応モードな書店の平台。猛暑はカレーと名作だな、ってことで「ティファニーで朝食を」に続いて手に取ったカポーティ「夜の樹」(川本三郎訳/新潮文庫)。短編集ですぐに読めるだろうと思ったら、これがなかなか進まない、途中で他の本に浮気しちゃうし。なぜかといえば、一見明るいようでも本当は暗いという話が続くから。これは「ティファニーで朝食を」のホリーとも共通するんだけど、崖っぷちに自ら好んで立ってしまうような、孤独で鬱屈した魂の持ち主が次々登場する。
●それにしても出世作となった「ミリアム」なんて恐ろしく切れ味が鋭い。都市に生活する老いた女性の孤独を、19歳の作家がこんなふうに書けるとは。歯軋りしたくなるほどの鮮やかさ。
●フランソワ・オゾン監督の映画「スイミング・プール」って、少なからずこの「ミリアム」に触発されてるんじゃないかなあ。
●「誕生日の子供たち」も背筋がぞっとするような傑作。最初と最後の一文で簡潔に主人公の少女がバスに轢き殺されたことを述べ、その間にノスタルジックなアメリカの田舎町の情景が生き生きと描写される。最初から少女は死ぬんだとわかっていて読みはじめたはずなのに、この子が死ぬとはどうしても思えなくなってくる。
●続いて「冷血」を読むつもりだが、ますます暗くなってしまいそうなので、間になにか挟まなければ。「もやしもん」とか?
August 18, 2009
「夜の樹」(トルーマン・カポーティ)
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