ドミノ・ピザ
September 14, 2009

ヘンデル「アリオダンテ」@芸大奏楽堂

ヘンデル、ヘンデル、ヘーンデル!●芸大奏楽堂でヘンデル「アリオダンテ」。鈴木雅明指揮古楽オーケストラ+若松夏美、鈴木秀美他、若者歌手たちによるコンサート・オペラ。大変おもしろかった。ヘンデル、傑作。興味深い。で、この作品なんだが。
●「アリオダンテ」の物語は「悪は滅び、善は栄える」「悪徳はダメ、美徳こそ吉なり!」ということを言っている。スコットランドのジネヴラ姫は騎士アリオダンテと相思相愛。王様もアリオダンテを婿にして、王位を継がせると言っている。そこにポリネッソという邪悪な公爵が横恋慕する。姦計を企てて、アリオダンテにジネヴラ姫の不貞を疑わせる。アリオダンテは絶望し、ジネヴラ姫は父たる王から死刑宣告を受けるんだけど、間一髪のところで悪事はバレて、めでたしめでたし結婚おめでとう王様万歳……。
●これにあえて「ネタにマジレス」モードで感じた疑問を。まず、第2幕でアリオダンテが死んだという誤報が届くわけなんだけど、あれは特に説明がないとすると本当に偶発的な誤報なのかなあ? つまりポリネッソ公爵の企みとかじゃなくて。それって物語の作法としてどうなのかという小さな不思議を感じたのがまず小さなポイント。そして、よくわかんなかったのがポリネッソのプランだ。
●ポリネッソって、不貞を疑わせるワナを仕組んで「ビバ悪徳!」みたいなアリアを歌ったりして、なんだか「オテロ」のヤーゴみたいなヤツっすよね。だけど、彼の当初のプランがよくわからない。アリオダンテが嫉妬に狂うところまではいいとして、そこでアリオダンテが一人悲しみのために放浪の旅に出るとか勝手に死ぬとかいうシナリオはありうるにしても、ジネヴラ姫の不貞が明るみに出る可能性は十分高い。そこでじゃあジネヴラ姫は有罪なのかどうかという裁きを受けることになるわけだ。この世界のルールでは、ジネヴラ姫は死刑になる。ただし、だれか守護騎士が名乗り出て、彼女のかわりに決闘に勝てば、神様の思し召しで死刑は取り消し、姫は無実という制度がある。
●ここでポリネッソ視点で物事を見てみよう。彼は横恋慕してるのだ。アリオダンテはどうだっていいが、ジネヴラ姫を死なせたくはない。自分のものにしたい。となれば、最初からポリネッソは姫の守護騎士になるつもり大アリだったはずだ(事実、そうなる)。ところが、もしそうだとしたらポリネッソはめっぽう剣の腕の立つヤツじゃなきゃおかしい。この国のだれが相手になろうと自分にとってはボンクラ。それくらいの自信があるからこんな策を弄する。なにしろ弱かったら死んじゃうんだから。
●ところが、このオペラでは姫の守護騎士となったポリネッソはあっさりとルルカーニオの決闘に負けて死ぬんである。「おいおい! そこで簡単に負けるんだったら、あんたの姦計はなんだったのさっ!」と全力で舞台にツッコミたい。
●これはどういうことなのか。
●……と引っかかっていたのだが、帰宅してから思いついた。アリオダンテの訃報が流れたのは偶発的な誤りだったので、これがポリネッソにとっては誤算だったのだ。つまり、彼のプランでは守護騎士となって戦う相手はルルカーニオではなく、アリオダンテだったんじゃないか。アリオダンテは嫉妬と不名誉で狂っているはず。寝取られ男の不名誉を晴らすべく、決闘に臨む。しかし決闘に勝てばジネヴラ姫は死ぬというのがアリオダンテの立場だ。そう考えると、剣先は鈍り、混乱と絶望のあまり「もう死んじゃっていいや、こんな世の中」みたいな感じで、自滅する。ポリネッソにとっては邪魔者は消え、姫の命は助かる。
●というのが悪者の計略だったんだろうと解釈して、納得することにした。なんだかミステリー小説みたいですね~(←どんなオペラの見方だよ)。

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