●シーズン最終戦となった横河武蔵野FCvsアルテ高崎を観戦。それにしても今季は本当にスタジアムに行く回数が減ってしまった。週末にコンサートやら仕事やらいろいろな予定が入って、武蔵野に足を運ぶ回数が激減。せっかく後援会に入っていたのに、これではなあ。しかも、なぜかワタシが行くと勝てないんすよ。驚くほど勝てない。なのに、終わってみたらJFL準優勝なんだから、いったいどうなっているのか。
●ちなみにこの日も1-1のドロー。内容的には一方的に押していたのにカウンターから失点、かろうじて追いついたという展開。
●横河武蔵野はもともと組織的な守備による失点の少なさが持ち味だったんと思うんだけど、今季はかなり自分たちで中盤を作る攻撃的なサッカーもできていたと思う。中盤の要、太田康介に加えて、新加入の遠藤真仁、左サイドの斎藤広野の貢献が大きかった。ゴールゲッター関野達也も見事な活躍。あとはフォワードの冨岡大吾が潜在能力を爆発させてくれれば。
●で、今季のJFLはどうなったか。優勝はSAGAWA SHIGA FC、2位が横河武蔵野、3位がソニー仙台FC。以上いずれもJリーグ準加盟クラブではないので、4位のニューウェーブ北九州がJ2に昇格する見込みとなった。いやー、4位で昇格ってどうなのと思わなくもないが、ともあれ北九州のみなさま、おめでとうございます。
●実はJリーグを目指していないアマチュアのクラブが強いんすよ、JFLは。これはいくつか要因があると思うんだけど、最大の理由はJを目指していた強いクラブがみんなもうJ2に昇格したから。FC岐阜、カターレ富山、ロアッソ熊本、愛媛FC、栃木SC、ファジアーノ岡山、この前まで同じJFLだったクラブがもうみんなJ2。そしてこれはJ2だけの特殊事情なんだけど、彼らには「降格」がない(JFLにはある)。下から上への一方通行。一方でJFL以下に取り残されているJを目指すクラブは、なかなか大変かもしれない。
●横河武蔵野にJリーグを目指して欲しいかというとこれはかなり微妙。
●あと東京第四勢力として今季JFLに昇格した町田ゼルビアが堂々6位でフィニッシュ(全18チーム)。これは立派。武蔵野との多摩ダービーが実現した。
●元ニッポン代表監督トルシエ総監督のFC琉球は、16位に低迷。去年もそれくらいじゃなかったっけ? もし北九州が昇格しなかったら地域リーグとの入れ替え戦に回るところだった。
2009年11月アーカイブ
横河武蔵野FC、今季をJFL2位で終える
「のだめカンタービレ」第23巻
●いよいよ最終話。「のだめカンタービレ」第23巻ゲット。中身は雑誌連載時にすでに読んでいるのだが、やはり改めて読んでおきたい。楽しい編集後記的なものも付いていることだし。
●まだ出たばかりだからネタバレは控えるけど、最後の最後は意外としんみり落ち着いたもので、味わい深かった。この二人はいろいろな面でスタートラインに立つというところで最終話を迎えたんだな、と。
●で、この第23巻でのだめと千秋の物語は終わるとしても、二人以外の登場人物たちの影が薄くなっててどうなったのかなーと思っていたら、12月10日発売の「Kiss」24号から番外編「アンコール オペラ編」が始まるそうなんである。この「オペラ編」っていうのがスゴく気になる。そういえば本編にはオペラ成分が薄かったもんなー。楽しみ。
ベルク「ヴォツェック」@新国立劇場
●新国立劇場でベルク作曲「ヴォツェック」を観た。バイエルン国立歌劇場との共同制作による新演出。アンドレアス・クリーゲンブルク演出、ハルトムート・ヘンヒェン指揮。
●平日昼間公演だったので、日の高いうちから狂人だらけのオペラを観てしまった。「ヴォツェック」がどんな物語かってのを一言で説明すると、頭のおかしい貧乏下級兵士が、金欲しさに怪しい医者の人体実験台になったり、内縁の妻を刺し殺したりして、最後は自ら土左衛門になる絶望底辺オペラ。いやー、もう暗い。絶望的に暗い。
●演出的な見どころはたくさんあった。まず、舞台上に水を張ってある。みんな足元をビチャビチャ言わせながら歩くことになる。ヴォツェック家から一歩外に出ると、水たまり。これは第1幕の頭からあって、そのまま第3幕のヴォツェック土左衛門シーンでは沼になるわけだ。マリーを殺したナイフを投げ入れ、血を洗い流し、沼に溺れていく。つまり、これは「沼ガール」ならぬ「沼オヤジ」の話なんである。ヴォツェックが沼に溺れるのと同様、どの登場人物も最初から沼に足を入れているようなもので、いずれだれもが沼に絡み取られていくという絶望を示唆している。
●子役の演技がスゴい。天才かも。この演出では子どもがほとんど舞台上に出ずっぱりになっていて、ヴォツェックがいるそばの壁に「お父さん」とペンキで書いたり、マリーのところに「売女」と書いたりする。最後に「ホップホップ」って言う場面以外は歌もセリフもないんだけど、かなりの達者な演技が必要で、カーテンコールではブラボーが出たほど。ある意味、この子が主人公であり、この子の視点から見た世界を描いているともいえる(演出家はヴォツェック視点で描いたと言っているが、そんなことは気にしない)。
●物語の悪夢的な世界観はかなり強調されており、ヴォツェック一家以外の人間はみな醜い怪物的な姿をしている。仕事を求める失業者たちがいる。黒子たちがみなナイフを持ち、次から次へとヴォツェックに手渡していく。もうどうしたってヴォツェックはマリーを刺さないわけにはいかない。で、最凶に後味の悪いのは、このナイフが、最後に父も母も失った子どもの手に渡されていくところ。子どもは将来のヴォツェックであり、狂気も貧困も暴力もそのまま彼に受け継がれていくであろうという出口なしの絶望。
●このテーマは二通りの受け取り方があると思う。ひとつには、「ヴォツェック」の世界を、そのまま現代のわれわれの社会が抱える問題として受け止めるという方法。仕事がない人間が下級兵士になったり人体実験台になったりするというのは、命とカネを交換するということであり、ある部分では現実そのものだ。フツーの暮らしをする人も、何かの拍子であっさり仕事を失うかもしれない。戦争が始まるかもしれない。ヴォツェックでありマリーであるかもしれない私たち、という見方。
●もうひとつは、これこそがファンタジーという受け止め方だ。オペラはずっと前からいろんなファンタジーを描いてきた。古代エジプトの英雄とか中国の王女様とか神々の没落とか。でもそんな空想にはもう飽きたとする。じゃあとことん豊かで平和でオペラを贅沢に楽しみ尽くす人々にとって、なにが物珍しい絵空事かといえば、貧困とか狂気とか絶望だろう。この両者のタイプのお客さんが共存しているのが現代の劇場。
●音楽的には第3幕がすばらしいっすね。これは本当に感動する。陰惨すぎるけど。
ゾンビと私 その13 ゾンビ・アウトブレーク・シミュレーター
●昔の人はいいました。「備えあれば憂いなし」。ゾンビの脅威だって同じである。そこで朗報。「ゾンビ・アウトブレーク・シミュレーター」の登場である。Googleマップを利用したWeb2.0なサービスが、ワタシたちの未来を予測してくれるのだ。舞台はワシントンDC。ここにゾンビがやってきた場合、住民たちはどれだけ持ちこたえられるのか、どのように感染が進むのかを、シミュレートしてくれる。
●設定項目をチェックして、スタートした後は、BGMと効果音が醸し出す終末感を存分に味わいながら、ただ見ていればOK。昔からPCを使った「ライフゲーム」というのがあるが、これは「逆ライフゲーム」というか「デスゲーム」。設定項目はInfection Settings のところにある。ここで初期状態における市民の数、ゾンビの数、ゾンビがやってくる方角、ゾンビのスピード、感染に要する時間などが設定可能だ。
●特に注目すべきはArmed Civilians(武装市民)の率とNumber of Policeである。市民の多くは逃げるだけだが、なかには武装してゾンビと戦う者もおり、その割合の初期設定は10%である(ゾンビの襲来が予見できていないことを考えれば妥当なところだろう)。またPoliceはそれなりに頼もしい存在である。Civilian Accuracy、すなわち市民の攻撃の正確性がデフォルトで10%しかないのに対し、Police Accuracyは60%である。これまた妥当なところではないか。しょせん素人は武器を持ってもゾンビの頭部を撃ち抜けるのは10発に1発、しかし警官は訓練を受けている上に所持している武器の精度も違うので10発に6発が命中するというわけだ。
●実際にシミュレーターを標準設定で動かしてみると、思ったよりも偶然(特に初期状態の警官の配置)に左右されることがわかる。あっという間に全滅するパターンもある一方、警官が一人だけ生き残り延々と何時間もかけて2000体以上ものゾンビを倒したケースもあった(だがそれでも最後は敗れてしまったのだが……)。
●なかなか示唆的なシミュレーターである。ワタシたちが生き抜くためには、警官の数を増やせばいいのか、あるいは市民の命中率を高めることを考えたほうがいいのか。机上の空論となることのない、実効性のある研究成果を期待したい。
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不定期連載「ゾンビと私」
四重奏+四重奏
●ジュリアード弦楽四重奏団+上海クァルテット@紀尾井ホール。師弟カルテットの共演ということで4+4=8なんである、すなわちメンデルスゾーンの八重奏曲が聴ける。ジュリアードがバルトークの2番やって、上海がベートーヴェンのラズモフスキー第3番、それから休憩後に合体ロボのように強まってメンデルスゾーンの八重奏曲。鏡像のように左にジュリアード組、右に上海組が並ぶ様は壮観。なんでこんなに人たくさんいるの?的な賑やかなお祭り感あり。
●しかしスゴくないですか、メンデルスゾーン。あの八重奏曲みたいな奇跡の名曲を16歳で書くって早熟にもほどがある。16歳っすよ。16って自分なにしてたかなー。早弁とか? 筆箱隠したり隠されたりとか? 同じ人類とはいいがたい、もはや。
●CD聴いてるとそうでもないんだけど、実際に目にすると8人中4人もヴァイオリニストがいるんすよね。うわ、多いな、このまま増えるとオケになりそうとか一瞬思うんだけど、でもヴァイオリンのおいしいメロディはだいたい第1ヴァイオリンが一人で弾いて1+3みたいになって、一人で3人あるいは7人を向こうにまわしてバリバリゲシゲシ弾いてますみたいな戦闘力の高さを発揮するところが見どころ聴きどころ味どころ。一人すなわちジュリアードのニック・エーネット。メトロポリタン・オペラのコンサートマスターからジュリアードの第1ヴァイオリンへと華麗なのか地味なのかよくわからない鮮やかな転身。
●ジュリアード弦楽四重奏団って63年間のあいだに12人もメンバーが代わってるんだそうです。ただ、代わるときは一度に一人ずつ。63年続いてるものは100年続く。100年続くものは200年、300年、いや1000年続くかもしれん。千年カルテット。そこまで未来になると、さすがに中身はずいぶん変わっててもおかしくない、いつの間にか四重唱団になってるとか、人類以外がメンバーに参加しているとか、そんな軌道レスな未来を軽く透視。
●上海クァルテットは雄弁で派手であった。彼らも83年結成だから四半世紀は経ってるわけだ。
●「クァルテット」よりも「カルテット」にしたいな、ウチ表記は。場所によっては徹底的に「クヮルテット」なところもあると思うが。ほかに「ヮ」ってなんに使ったっけ? 「ヮ」使ったのは「ぁぃιぁぅョゥヵィ」のときが最後かも。
Kindleの実物に触った
●「百聞は一見にしかず」ってホント真実だよなー、と改めて思ってしまった、amazonのKindleの実物を手にして。いや、なにこんなに画面がきれいで読みやすいのか、こんなに薄いのか、こんなに安く本が買えるのか、そしてこんなにも物欲を刺激するものなのかと感動。一刻も早く来てくれ、電子書籍端末時代。最近なに見ても物欲なんてまったくといっていいほど感じなかったんだけど(欲しいのはモノじゃない、体験だ)、だがだがしかし、Kindleは一瞬にして火をつけてくれた。
●装幀、書体、デザインといった部分も含めた本の楽しみというのは単行本としてあっていいけど、でもまあ文庫本で買えるならそれでいいかってのも現在だって大いにあるわけで、27ドルの紙の本をKindleで9.99ドルで売ってたらそれ買っちゃう。本棚の心配も要らないのも吉。あと、「この本、カバンに入れると重いから、持ち歩けないんだよなー」的な悩みもなくなる。
●いまのところKindleが日本からも買えるようになったとは言っても、日本語の表示ができず日本語の本が存在しない以上、ワタシにできるのは日本語書籍環境が整うのを待つことだけ。もし近い将来、米国と同じように、携帯電話会社との契約が不要で、通信料もかからなくて、本が安価にダウンロードできるようになったら、日本人の読書量はぐっと増えるんじゃないだろか。ただし、単行本はみんな一冊980円みたいな価格インパクトがないと見向きもされないとは思うけど。
非・神の手
●ワールドカップ予選プレイオフのフランス対アイルランドのゴールをめぐってゴタゴタが続いている。問題の決勝ゴールはアンリのハンドから生まれた。アンリがボールを手に当てて止めて、クロスボールを入れ、ギャラスがゴールを決めた。主審がアンリのハンドを見逃したため、アイルランドはワールドカップに出場できなくなった。フランスはラッキーだった。
●で、怒りの収まらないアイルランドは再試合を要求し、FIFAはこれを却下。アンリは自身の偶発的なハンドを認め、一番フェアな解決方法は再試合だと言っている。
●まず気の毒なのは主審。これで主審失格だというなら人類は主審なしでサッカーをやるしかなくなる。あの程度のハンドの見逃しは毎週のようにどこかで起きてるだろうし、大事な場面で誤審が起きることも含めてサッカー。アンリも批判の矢面に立たされているようだが、故意のハンドには見えないし、笛が吹かれるまで選手がプレイを続けるのは当然のこと。
●じゃ、再試合すればいいかというと、ワタシは反対だな。「ハンドがあったから再試合」という前例ができたらどうなるか。ビデオを確認した結果、「決勝点は明らかなオフサイドだったのだから再試合」という例も出てくる。であれば「オフサイドと判定されたが本当はオフサイドではなかったら再試合」という主張もありだろう。「ペナルティエリア内で明白なファウルがあったにの主審はPKを取らなかったので再試合」もありだとすれば、欧州主要リーグは毎週何試合もの再試合要求を受け入れることになる。
●でもそんなことは現実にはムリだから、誤審に応じて再試合をするかどうかは、個別試合ごとに舞台裏の政治的な駆け引きで決まることになるだろう。そうなったら、もうそれはサッカーじゃない。見えないところでどんな力学が働き、誰のどんな権力が行使されるのか、されないのか。それはこの社会そのもの、現実以外のなにものでもない。その現実から遠く旅立つためにワタシたちはスタジアムに通っている。自分たちでわざわざ構築したファンタジーを単なる現実に貶めてどうする。
●ロビー・キーンは「フランスのW杯出場でプラティニもブラッターも大満足だろう」って皮肉ってるが、待てよといいたい。たとえばもし誤審のおかげでアイルランドが出場権を獲得した場合、プラティニやブラッターの力で再試合が開かれたとしたら(そしてその逆の場合はなにも起きないとしたら)これは最悪のスポーツになる。そんな権力の暴走を防ぐには、ハンドだろうがオフサイドだろうが、試合結果は覆らないというルールを守るしかない。
「カルロス・クライバー ある天才指揮者の伝記」(上)
●うっ。イェフィム・ブロンフマン、新型インフルエンザのため来日中止。本日トッパンホールに行く予定だったのだが残念。
●「カルロス・クライバー ある天才指揮者の伝記」(アレクサンダー・ヴェルナー著/音楽之友社)。下巻が出るのはまだ先ということらしいので、待たずに上巻を読んだ。「ついにクライバーの伝記が!」というワクワク感半分、「えーと、誰がクライバーの伝記を書けるんでしょか……」的な不安半分と。で、どうだったかといえば、これは非常におもしろい。特に後半から勢いよく読めて、止まらなくなった。
●書いてる人はクライバーの身近にいた人ではない、たぶん。ジャーナリストなんである。だから、クライバーをよく知る人々、彼の人生にかかわってきた人々に徹底的に取材をするという手法で伝記を書いている。その取材量は膨大で、特に電話インタビューが中心なんだけど、記述について事細かに巻末の注釈でその典拠となる取材ソースを明示する。したがって、物語性豊かな書き方ではない。でも淡々と事実を重ねるだけでも、クライバーの人生は驚きの連続だから、十分読み物になる。
●おもしろいエピソードは無数にある。これは「上巻」だから、あまりにも偉大だった父エーリッヒとの複雑な関係というのももちろん大きいし、「ステージママ」的な母親との関係の微妙さとか、若い頃のクライバーが文学を志して小説を書いていたこととか、意外と駆け出しの頃は周囲にクライバーの才能を認める人が少なかったこととか(彼に才能がないと断言する人が何人もいた。テノールのルドルフ・クリストから「君は引っ込み思案でいる限り、頭角を現すことはできないよ」と忠告された話も印象的だ)。ミュンヘンに来る前、シュトゥットガルト時代の記述も、ブレイク前夜の天才の話として非常に興味深かった。あとは彼が自筆譜と印刷譜を比較してスコアを徹底して研究していたこととか。そういう彼の方法論と、実際に出てくる正統性を超越した音楽とはかけ離れているように聞こえるんだけど、ホントはどこかでつながっているんだろうか……。
香港vsニッポン代表@アジア・カップ予選
●アジア・カップを予選から戦わなければいけないとは……と今さら嘆いてもしょうがない、香港vsニッポン代表。前回ホームで戦った時点で香港が技術的精度を欠いていることはわかっているんだけど、それでも一筋縄ではいかないのがアウェイゲーム。ニッポンのコンディションがよくないこともあって、序盤は香港に押されてしまった。
●でも開始早々の相手の勢いが収まってからは、ニッポンがゲームを支配。32分に長谷部誠の代表初ゴール(意外!)となるミドルが決まるまではヤキモキしたが、終わってみれば4-0で完勝。佐藤寿人のヘッド、俊輔のFK、岡崎の自ら獲得したPK。メンバーはこう。GK:川島-DF:内田、中澤、トゥーリオ、駒野(→徳永)-MF:長谷部、遠藤(→阿部)、中村俊輔、松井-FW:大久保(→佐藤)、岡崎。
●少し相手とレベル差があったので、W杯に向けてチームを作ったというよりは、アジア・カップの出場権を得るための試合と割り切るしか。松井はルマン時代の松井からは遠い。松井ではなく本田圭佑を使って中村俊輔との共存を試す手もあったと思うんだが……。
●これは親善試合じゃないから3人しか交代枠はない。本田や稲本は南アフリカから香港まで飛んできて、試合に出ずにそのまま欧州までもどるわけだ。肉体はもちろん精神もタフじゃなきゃやってられないな、と。
沼ガール
●いやー、もう東京の人間はいま森ガールの話しかしてないっすから。
●と思っていたら、「沼ガール」っていうのがあるんすね。山ガールとか畑ガールはありかなと思ってら、沼ガール。mixiのコミュニティによるとこんな感じ。
♪ゆるい感じのワンピースが好き。だけど「妊婦?」と聞かれてしまう。
♪レギンスが好き。だが、「寒いからなあ」と股引扱いしている。
♪北欧に行きたくもあるがつい東南アジアでビール!が頭をよぎる。
♪カフェでまったりしたいが、ついラーメン屋に入ってしまう。
♪よく「沼にいそうだね」「井戸からでてきそう」と言われる。
森ガールになりたくてもなりきれない! あたしたちは沼ガール!
ほら、頭の上にお皿がのってるわ。草食系女子じゃないよ、尻こだま食系女子だ!
(出典:Φ沼ガールΦコミュニティ )
●なんかかわいいっすよね、沼ガール……とか油断してると尻子玉抜かれるんでしょか。
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●おなじみOTTAVAさんの番組でオバマ大統領がサントリーホール演説とクラシック音楽をMIXするというスペシャルコンテンツを配信中。放送後はポッドキャスト配信もあり。詳細はこちらで(別窓推奨)。
さらば、歌劇
●月刊「歌劇」(阪急コミュニケーションズ)。といってもオペラ専門誌ではなくて別の歌劇のことだった……。
●もうずいぶん前から、オペラの意味で「歌劇」という言葉を会話のなかで耳にすることはなくなっている。でも書き言葉では健在で、CDのタイトルとか演奏会のプログラムには、歌劇「フィデリオ」みたいに使われる。まあ、それで困ることはなにもないんだけど、気が付いたら死語を使ってたみたいになるのもヤなので、こっそり書き言葉でも可能な限り歌劇の代わりにオペラを使うようにしている。オペラ「フィガロの結婚」、みたいに。宝塚オペラ。あ、これは違った。
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●お知らせ。演奏会情報などの告知に使っていただいていた当サイトの「みんなの告知板」ですが、執拗なスパム攻撃に辟易し、閉じることにしました。時代遅れの脆弱な設計だったのでやむを得ず。長年のご利用にお礼申し上げます。
週末フットボールパラダイス~試合盛りだくさん編
●ワールドカップ本大会の予行演習的な現地での南アフリカvsニッポン代表戦、なにが残念かと言えば森本を呼べなかったこと。しかも俊輔は合流が遅れてしまったためベンチ(ウィークデイの国内カップ戦に出場したから。出場できたのはよかった)。おかげで変則的な布陣になってしまった。稲本のワンボランチ、中盤には遠藤と長谷部がいて、本田圭佑、大久保、岡崎の3トップみたいな感じ。本番ではまずないと思うが。
●しかし南アには相当攻め込まれるだろうと覚悟していたら、拍子抜けするほど淡白な攻撃で、ずっとニッポンのほうが支配率で上回っていた。とはいえこちらも相手陣内深くに攻め入る回数は少なく、決定力もとことん欠いてお互い様の0-0。南アのほうは開催国だから予選のヒリヒリするような真剣勝負を経験してないわけで、「こんなんで大丈夫なの?」と心配になるほど。
●本田は悪くない。個人で突破できる。ただ後半で交代して俊輔が入ると、よりボール回しがスムーズになる。みんな俊輔がいると俊輔を見るから(エスパニョールとは大違い)。岡田監督は二人を併用するつもりはあまりないっぽい。前線では岡崎が比較的よかったが、全般にペナルティエリア付近での迫力が驚くほどない。中盤では勝っていたし、プレスもよく効いていたので、後は前線だなと。
●天皇杯は湘南、山形とJリーグ勢を倒してきた明治大学が新潟と対戦。さすがに力の差を見せ付けられて1-3で敗退。この試合が山形で開催されてしまうという天皇杯の仕組はどうにかならないのか。わがマリノスは川崎に屈して今季にわずかに残されたタイトルの可能性がゼロに。J2勢で岐阜と仙台が勝って準々決勝に進出したのが立派。
●ワールドカップ予選もあった。注目の(えっ、注目してない?)ニュージーランド対バーレーンの大陸間プレイオフ第2戦、1-0でニュージーランドが勝って本大会出場決定(オマイガッ!)。なんてことを。バーレーンはあれだけなんどもなんどもニッポン相手に善戦しておきながら(イヤというほど試合した印象あり)、ニュージーランド相手に勝てないとは。結局オーストラリアがいなくなったにもかかわらずオセアニア大陸からワールドカップ出場国が出てしまったではないかー。ったく、バーレーン代表というヤツは。
ヤンソンス指揮バイエルン放送交響楽団@ミューザ川崎
●ホール内でバイエルン放送の取材スタッフらしき方々を見かけたので、きっとブログがあるだろうなと思ったらやっぱりありました>Symphonieorchester on Tour。ドイツ語だけど。
●で、ヤンソンスが「日本で一番好きなホール」と言ってるミューザ川崎での公演。これはスゴかったなあ。ドヴォルザークのチェロ協奏曲(ヨーヨー・マ独奏)、ブラームスの交響曲第2番というプログラム。最高のクォリティを持ったオーケストラでこれだけの名曲プロを聴けばもちろん感動が訪れるわけなんだけれど、それに加えてお客さんを喜ばせようというサービス精神の旺盛さ。ヨーヨー・マがチェロ協奏曲で渾身の熱演を聴かせた後、オケに絡みまくった。まずはアンコールでバリエールの2台チェロのためのソナタ第3楽章、3台のチェロとオーボエでモリコーネの「ミッション」、バッハの無伴奏チェロ組曲第1番からプレリュード。バッハ以外はオケのメンバーとの共演なんである。
●で、後半に入るとヨーヨー・マはフツーにオケのなかに入って出てきて、なにげにチェロの最後尾のプルトに入ってそのままブラームスの2番を弾いてるんである。ヨーヨー・マはときどきこれやるみたいなんだけど、もう楽しくてしょうがないという雰囲気で、両隣としきりにアイコンタクトをとりながらニコニコして弾く(ブラームスのここのところ、すばらしいよね、ね、みたいな)。全身からハッピー・オーラが発散されまくっていた。
●ブラームスの後、さらにアンコールがあって、グリーグの「ソルヴェイグの歌」、おしまいにもう一度ヨーヨー・マをソリストの場所に座らせてブラームスのハンガリー舞曲。楽団員が全員退いても拍手が鳴り止まず、最後はヤンソンスが一人で出てきてスタンディング・オーベイションの「一般参賀」。帰り道のお客さんたちが、みんなとてもいい表情をしていた。
ジャイ子としてのトスカ ~ 「トスカ」@METライブビューイング
●ウェブサイトも刷新されてMETライブビューイング新シーズン開幕。まずは「トスカ」。カリタ・マッティラ(トスカ)、マルセロ・アルバレス(カヴァラドッシ)、ジョージ・ギャグニッザ(スカルピア)他。指揮はレヴァインが体調不良で降板してジョセフ・コラネリ。リュック・ボンディ新演出。
●「トスカ」ってオペラそのもの、ギミックに頼らないオペラ的なものだけでできてるオペラで、登場人物も少ないし物語の筋も一直線で、オペラ100%のオペラだと思うんすよ。だから好きだっていう人と、だから苦手だって人がいる、たぶん。で、じゃあこれがオペラ代表選手だとして、知人に見せたらこう言われたとする。「えー、なにこれ、体格のいい中年男女が取っ組み合いしててなんか不潔っぽい」。ここでワタシはどうにかして弁明しなきゃいけないわけである。「いやいや、違うんすよ。あのカリタ・マッティラっていう人は美しい歌姫の役なんですよ」。知人は反論する。「あれはジャイ子だよ、しずかちゃんキャラには見えないよ」
●でもそんなこと言われたらオペラは成り立たない。だからなんとかして、「ジャイ子ではなくてしずかちゃん」だと納得してもらって、なんの弱点もない完全無欠の音楽を楽しんでもらおうと今までは考えていた。でもこのリュック・ボンディの新演出を見て、考えが変わった。
●このトスカって、どうしようもない女なんすよ。かわいげのある嫉妬深さじゃなくて、少しヤヴァい感じで嫉妬深い。1幕の教会(質素だ)にカヴァラドッシの描いた絵が飾ってあるじゃないですか。あの絵に描かれた女に嫉妬して、女の青い目を自分の色である黒に塗りつぶせとカヴァラドッシに要求する。ホントに筆を持って描きかえようとするんだから、男の仕事に「口を出す」どころか「手を出す」わけだ。これだけでもどうかと思うのに、スカルピアに嫉妬心を煽られたら怒り狂ってこの絵をバリバリと破いちゃうんすよ。歌姫なのに他人の芸術には一切の敬意を持たない。ヤな女でしょ。
●で、ハタと気づいた、これ、トスカがしずかちゃんだと思い込もうとしてたんだけど、違うんだ、このトスカはジャイ子なんすよ。ジャイ子を無理矢理しずかちゃんにしようとするから齟齬が生じるんであって、ジャイ子としてのトスカ像を作り上げればいい。これは客席にも伝わっていて、カリタ・マッティラの振る舞いに対して「クスクス」笑い声が起きる場面がいくつもある。だってコミカルだから。
●そう思うといろんなことに納得がいく。スカルピアが3人もの妖艶な娼婦を侍らせているにもかかわらずトスカを欲するのは、しずかちゃんたちに倦んだ末のジャイ子への洗練された欲望なのだと理解できる。しずかちゃんの悲劇が前世紀的で刺激に欠けるものになりつつあっても、ジャイ子の悲劇であれば21世紀的な私たちの実像を半歩先から照らし出すことができる。
●第3幕、処刑場にあらわれるトスカって、本来の人物像としては少女であるがゆえに、無邪気にカヴァラドッシのニセの処刑を信じて「銃が鳴ったら、上手に倒れる演技をしてね、劇場のトスカみたいにね」とかわいらしく語るんだと思うけど、カリタ・マッティラは一味違う。「あんた、銃で撃たれたらさっさと倒れなさいよ、あたしみたいに演技してよ、アッハッハッハッ」と少し厚かましいオバさんみたいな雰囲気をよく出している。だからここでも客席から笑いが漏れる。なるほど。しずかちゃんじゃなくてジャイ子だから。美しい音楽に、美しいだけの人物はもうそぐわない。そうリュック・ボンディは言っている(言ってないけど)。
森ガール循環論
俊輔ウォッチ@スポルティング・ヒホンvsエスパニョール
●今週の俊輔。スポルティング・ヒホン 1-0 エスパニョール。アウェイでの敗戦となったわけであるが、この試合の持つ意味は大きい。
●先発メンバーに中村俊輔の名は見当たらず。はっきり言ってここまで一試合も活躍していないのだから、しょうがない。天候は大荒れ。開始早々にエスパニョールはコーナーキックから失点。前半途中でエスパニョールに負傷者が出て、デ・ラ・ペーニャが交代出場。デ・ラ・ペーニャがいるとき、エスパニョールはみんな彼を探しながらプレイする。
●で、56分にベルドゥに代えて中村俊輔登場。この試合は今までとぜんぜん違っていた。右サイドでボールを受けると、とにかくタテへと勝負した。そう得意でもないかもしれないが、相手ディフェンダーをドリブルで突破しようとする。あるいは厳しいところにスルーパスに出す。難度の高いプレイを選択したのでミスも多かったが、これまでのような「ボールを2タッチ、3タッチしたあげくにバックパスする」という場面がなかったのがいい。このチームではデ・ラ・ペーニャでさえよくボールを失うが、前へ前へとチャレンジしている分にはOKなんだろう、おそらく。最終的になにもできずに0-1で敗れたといえばそれまでなんだが、しかし俊輔はこれまででいちばんファイトしていた。
●欲をいえば一度だけ蹴らせてもらえたフリーキックで得点できていればなー。次のホームでのヘタフェ戦は先発できるかもしれない。祈る、ゴール。もうどんな形でもいいからゴール、わかりやすく。
ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン2010は「ショパンの宇宙」
●ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン2010、テーマは「ショパンの宇宙」と決定。開催期間は4月28日(水)~5月4日(火)、そのうちコア期間は5月2日~4日の3日間となる、と。こちらの公式リリース(PDF)にあるように、ショパンの全作品が網羅されるんである。全作品というのは、全ピアノ曲はもちろんのこと、全歌曲でもあり全室内楽作品でもあるわけだ。作品数は多くはないが、日頃なかなか耳にする機会の少ない曲も聴けるはず。
●あと上のリリースにあるイメージビジュアルのショパンが、キモカッコいい。これまでもバッハとかシューベルトとかモーツァルトとか、鮮やかでステキなイラストがポスターを飾ってくれたけど、ワタシには今回のショパンが最高傑作。だって、少しキモいんすよ、このショパン。キモい、でもカッコいい。この「キモカッコいい」っていうのが今っぽい、とても。
●コア期間は今年と同じく3日間ということで。
●それから、本日adidasよりニッポン代表の新ユニ発表。うーん、このデザイン、ワタシにはよくわからん(笑)。フツータイプとピッチリタイプの2種類あるのはいいとして、この胸というか首の下の赤い目立つ四角形はなに? カッコ悪いところがカッコいいのか? 「レッドカード標準装備」なんていう人までいて、不吉でもある。「博士、この赤い矩形には主審のレッドカードを誘発する効果があることがわかりました!」
●ただ現行バージョンの首周りが黄色いのもとってもヤだった。赤も黄色もなしにして、ブルーと白だけでいいじゃないかと思うんだがなー。
木村監督から木村監督へ
●わがマリノスであるが、シーズンがまだ残っているというのに監督交代が発表されてしまった。成績不振により契約期間を残して木村浩吉監督を解任、来季は木村和司新監督が就任する。木村監督から木村監督へ。浩吉から和司へ。マリノスOBからマリノスOBへ。監督未経験者から監督未経験者へ。そして伝説へ……。
●はっ。いかんいかん、思わず鬱々としてしまった。いや、木村和司さんはミスター・マリノスというかミスター日産であり、日本リーグの日本人プロ選手第一号。これだけのヒーローにいままで監督経験がなかったのも意外(S級ライセンスは持ってたらしい)。しかしマリノスは監督経験のないOBが好きだなあ。下部リーグで実績を残した監督を引っ張ってきて日本のアリゴ・サッキを発掘してほしいんだが……。今のマリノスには若くて有望な選手は何人もいるが、超人的な個人能力を持っているのは中澤だけ。これでJ1を戦い抜くには、戦術面でヨソ以上に鍛え上げるしかない。新監督はきっと鍛えてくれるはず。ああ、なのになにをワタシはそんなに怖れているのであろうか。
●JEF千葉がクラブ史上初の2部降格。日本リーグでの古河電工時代以来44年で初めてというから歴史を感じる(日本リーグ時代は日産や読売が新興勢力だった)。
●一方J2は仙台とセレッソ大阪が久しぶりにJ1昇格。おめでとうございます>両サポの方。J2の3位争いが熾烈。湘南と甲府が同勝点で並んでいる。しかも11月21日に小瀬スポーツ公園陸上競技場で両者の直接対決があるではないか。これは熱い。
ネトラジ&ウェブキャスト短信
●クラシック専門ネットラジオOTTAVA、本日11月7日(土)のOTTAVA amoroso for weekend (10:00~14:00)にNAXOS創設者クラウス・ハイマン氏が登場する。プレゼンターは林田直樹さん。ナクソスの開拓精神や今注目している作曲家や作品について語ってくれるということなので、ご関心のある方はぜひ。午前11時頃から出演予定で、放送後1週間はオンデマンドでも聴けます。
●ベルリン・フィルのTwitterから。Get your free ticket for @BerlinPhil's webcast on 9 Nov: Simon Rattle conducts Brahms's Symphonies 3 & 4 http://www.db.com/index_e.htm ということで、スポンサーであるドイチェ・バンクのサイトでウェブキャストのフリー・チケットを配布中。米国ツアーのプロモーションとして、アーカイブからラトルのブラームスを見せてくれる、と。11月9日8pm EST(米国東部標準時)から。ん、でも時差あるからこっちは平日の午前中か。やはり米国在住者向けではあるな。
ミンコフスキ祭り開催中
●いやー、スゴかった。圧巻。ミンコフスキ指揮ルーヴル宮音楽隊@東京オペラシティ。期待はしてたけど、まさかここまですばらしいとは。なんという躍動感、情熱、ファンタジー、サービス精神。そしてラモーとモーツァルトであれだけ客席がわくとは(残念なことに、空いていたけど)。
●予定と曲順を入れ替えてまずはラモーを先に演奏。ラモーって、管弦楽が好きな人と歌が好きな人がいると思うんすよ、たぶん。ワタシは管弦楽派だから組曲だけで充足できちゃうんだけど、だったらオケの曲だけ集めてセットにしてみたら、ということで「空想のシンフォニー~もう一つのサンフォニー・イマジネール」。CDでも同趣向のが出てるけど選曲は違ってるみたい。「カストールとポリュクス」「遍歴騎士」「アカントとセフィーズ」「優雅なインドの国々」等々からおいしいナンバーを集めて一曲分(CDでは前にルセが序曲を集めて一アルバムにしてたのと似た発想)。これで楽しくならないわけがない。ブリュッヘンとかヘレヴェヘとかで刷り込まれた頭には、速いテンポの曲はより速く颯爽と、といったように感じられて、突風みたいに強烈なラモー。聴いていて思わず笑ってしまう。
●モーツァルトは「ポストホルン」セレナード。そう、ポストホルンが登場する。でもポストホルンだけじゃない。郵便局の自転車に乗って舞台にあらわれるという演出(笑)。しかもこの自転車、「日本郵便金沢支店提供」とのこと。どうやら金沢公演に使った本物の郵便局の自転車をそのまま東京まで持ってきたようだ。さすが、オリジナル主義。と思ったがオリジナルは郵便馬車か。でもまあ「郵便」なのはホントだ。前にブリュッヘン指揮新日フィルの「軍隊」でも舞台パフォーマンスが演出としてあったけど、こういうのはいいっすよね、深刻な曲じゃないんだから。音楽のほうも実に精彩に富んだモーツァルトで、今まさにそこから音楽が生まれてきてるんだ感、全開。
●ミンコフスキがルーヴル宮音楽隊を結成したのって20歳の時だって言うんすよ。1982年。昔、ERATOからCDが出てた頃は、まだアーノンクールとかブリュッヘンとかガーディナーの世代がバリバリ新譜を出してた時代で(いや今でも出てるか)、「え~、ミンコフスキ?」みたいな反応する人もいたけど、それからどんどん活躍の場を広げて、27年経った今も同じオーケストラが最強に強まりながら続いているんだから、これも大変なことっすよね。
●アンコールにラモー「優雅なインドの国々」より「トルコの踊り」、モーツァルト「ハフナー・セレナード」のロンド、グルックのバレエ音楽「ドン・ジュアン」より「怒りの舞」。頼んでないのにご飯大盛りにしてくれる、みたいな。会場に熱狂が渦巻いて、とてもいい雰囲気が生まれていた。「一般参賀」的な拍手と喝采。タイムマシンに乗ってもう一度あたまから体験しなおしたい。いつまでも聴いていたい。そんな演奏会だった。ワタシは行けないんだけど、本日もう一公演、オール・ハイドン・プロあり。
ゾンビと私 その12 ゾンビの基本~復習と予習
●「あの……、iioさん、どうして今ゾンビなんですか」と先日尋ねられ、あれこれと説明をするうちにワタシはハタと気づいた。ワタシはこんなにもゾンビの話を続けているにもかかわらず、「そもそもゾンビとはなにか」(略して「ゾンビそもそも論」)という基本事項についてなにも説明していなかった。「えっ、今さらそんなの知ってるよ」といわれるかもしれないが、一応、復習も兼ねて記しておこう。
●もともとゾンビとは資本主義が生んだ大量消費社会への批判精神から生まれたものだ。ジョージ・A・ロメロ監督の元祖「ゾンビ」では、ゾンビたちが巨大ショッピングモールに集まってくる。彼らは人間だった頃の記憶に基づいてモールに吸い寄せられるんである。肉体は朽ちているのに、欲望は生きている。「欲しい、もっとくれ、欲しい、死んでも欲しい、死んだけど欲しがります」。それが元来のゾンビ像だった。だから、よく「生きてるんだか死んでるんだかわからない生気を欠いたオジさん」を指して「あの人、ゾンビみたい」というが、それは適切ではない。むしろそういう人はゾンビから遠い。「先週新製品を買ったのに、今週もっと機能がパワーアップした新機種が出た。これも欲しい、買いたい」。そういうのがゾンビだった。もともとは。
●ちなみにゾンビの起源は吸血鬼にある(とワタシは解している)。ゾンビ映画はリチャード・マシスンの小説「地球最後の男」(現在は映画化にともない「アイ・アム・レジェンド」と改題されている)にインスパイアされており、そこに登場する怪物は吸血鬼化した人類だった(だから映画「アイ・アム・レジェンド」で怪物がゾンビとして脚色されているのはそれなりに筋が通っている)。
●で、ここまでが「ゾンビそもそも論」だ。ところが近年になって様子が変わった。「28週後……」で、人類がゾンビ化する原因となったのは「レイジ(憤怒)ウィルス」だった。レイジ・ウィルスの感染者はあっという間に凶暴化して、人間を襲ったり食ったりする。この現代型ゾンビは過去のゾンビと違い全力疾走するのも特徴だ。また、「バイオハザード」で猛威を振るったのは「T-ウイルス」だった。Tはtyrant(暴君)のTだ。つまり、かつての初期型ゾンビでは、資本主義大量消費社会を生み出した私たちの欲望が世界を滅ぼしていたのに対し、近年のゾンビ映画では憤怒、不寛容、怨嗟といった人間の負の感情が世界を破滅へと導くように変化してきたわけだ。これほど納得のゆく話はない。われわれは他者との共生能力を失いつつある。多くのクラシック音楽ファンが目にしているように、コンサートホールで、オペラ劇場で、人々は感情を暴発させている。美しい音楽を聴きに来たはずなのに、なぜ老人の取っ組み合いが起きるのか。なぜ些細なマナー違反を見つけて若者を恫喝するオジさんがいるのか。ゾンビの兆候はいたるところに見て取れる。
●ゾンビは怖い。でも「ヤツらが怖い」というのは問題の半分でしかない。残りの半分は自分がゾンビになるかもしれないという恐怖だ。ヤツらも怖いが自分も怖い。怪物を追うものは自らも怪物となる。「うぉ!ゾンビ、許せん、キモい、死ね死ね死ね!」と怒りに任せてチェーンソーを振り回してしまうようでは、「ゾンビ取りがゾンビになる」あるいは「ゾンビに油揚げ」である。
●ちなみに先日ソニー・ピクチャーズさんからいただいたメールによると、来年「ようこそゾンビランドへ」(仮) (ZOMBIELAND)なる映画が公開されるそうである。めでたく北米初登場1位を獲得したということであり、オリジナルの予告編を見たところコメディのようであるので怖い映画が苦手なワタシにも安心して鑑賞できる点がありがたい。必見であろう、生き残るために、生きるために、生き延びるために。
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不定期連載「ゾンビと私」
文化の日の文化活動
●FC東京サポのみなさま、おめでとうございます。ナビスコカップ決勝は、東京 2-0 川崎。東京は初タイトルなのかなあと思ったら、5年前にもナビスコで優勝していた。むしろ川崎フロンターレにこれまでにタイトルがないということが驚き。強いのに。
●昨夜はカザルスホールへ。クローズドな演奏会なのだが、ギュンター・ザイフェルト他のウィーン・フィル団員によるウィーン・ザイフェルト弦楽四重奏団。ショスタコ8番他を堪能。このホールに足を運ぶのもこれが最後かもしれない。公式サイトのアナウンスによれば「本学は、このたび懸案事項でありましたお茶の水キャンパス再開発計画の策定に着手するに当たり、同キャンパスに所在する日本大学カザルスホールの貸し出しを含む使用を、平成22年3月31日をもちまして停止することといたしました」。残念なことである。
●今週の俊輔情報。エスパニョールvsバジャドリード。これまで伝えてきたように、中村俊輔はまったくチームで機能していないし、能力の高さも見せていない。こんな状況で監督が俊輔を使ってくれるのが不思議なほどである……と思っていたら、ついに先発から落ちてしまった。まー、これはしょうがないよなー。「俊輔いなければエスパニョールはがんばる」の法則がまたも発動し(なんでだよっ!)、エスパニョールは「いいサッカー」を展開していたっぽい。ルイス・ガルシアの今季初ゴールで1-0で完勝する、と思われたロスタイム3分。失点してしまったんすよー。エスパニョールイレブンも監督も顔面蒼白。はーはっはっはっ、「俊輔いなければエスパニョールはがんばる」の法則破れたり!
●この失点はひどい。1-1で引き分けだが気分は完敗。サポ納得行かず。問題である。そして俊輔はずっとベンチに座っていた。さあ、次週はどうするのか、ポチェッティーノ監督。
マリノスvs福島ユナイテッドFC@天皇杯3回戦
●あ、その前に短信。新国立劇場速報 10/11シーズンオペラ2演目先行発表。シュトラウスの「アラベラ」(指揮:ウルフ・シルマー 演出:フィリップ・アルロー)、ワーグナー「トリスタンとイゾルデ」(指揮:大野和士、演出:デイヴィッド・マクヴィカー)。年末年始に「トリイゾ」。いいかも。
●で、天皇杯3回戦。日産スタジアム行きたいなあと思いつつも中継あったのでテレビ観戦。相手は福島ユナイテッドFC。福島は全員アマチュア選手で、NHKの中継では選手がアップになるたびに「スーパー勤務」とか「パチンコ店勤務」とかテロップが出ていた。東北社会人サッカーリーグ1部で戦うチームであるので、JFLよりも下、4部リーグ相当の相手ということになるんだが、なにしろセレッソ大阪を破ってここまで来ているので侮れない。マリノスはベストメンバー、完全にリーグ戦と同じモードで迎え撃った。
●開始早々猛然と飛ばしてきた福島ユナイテッドに押されて「なるほど、これはセレッソを倒しただけのことはあるな」と戦慄。ある意味で早々に「目が覚めた」のが幸いしてか、マリノスはタッチ数が少なく展開のスピーディなサッカーを心がけ、徐々に相手を圧倒した。前半に渡邉千真、坂田、田中裕介がゴール、後半に時崎悠に決められてしまったが、狩野が4点目を奪って4-1。福島はキーパーの内藤友康の好セーブが目立った。たまたま楽な展開になってウチが大勝したが、点差ほど楽な試合ではなかった。今日の試合を見た限りでは、福島はJFLに上がってもそのまま上位で戦えるんじゃないか。
●今週末話題になってたのは、モンテディオ山形 0-3 明治大学。大学勢がJ1に勝ってしまった。最近、一頃に比べると大学勢が強い。サッカーのカップ戦ではプロがアマチュアに負けるなんて日常茶飯事で、欧州のサッカー大国に比べるとむしろ日本は番狂わせが少ないという印象あり。以前ドイツカップで決勝まで進んだアマチュアチームがあって(ヘルタ・ベルリン・アマチュアだ、たしか)、彼らは18歳とか19歳でフツーに仕事を持ってる選手たちだった。レアルマドリッドやバルセロナなんて、ひんぱんにカップ戦で3部リーグ以下を相手に負けてる気がする(スケジュールが厳しいので中途半端に勝っても困るという面もあると思う)。一発勝負のカップ戦ならなんだって起き得る。明治大学が元旦のピッチに立っていたとしてもワタシは驚かない。