●ワタシはまったくトスカニーニ体験がなくて、モノラル録音しか残ってない人はしんどいから原則聴かない派という困った者なんである。でももうトスカニーニくらいになると録音の聴く聴かないを別として歴史的人物っすよね、だってオーケストラ・プレーヤーとしてヴェルディに指揮された経験があって、なおかつ指揮者としてヴェルディに演奏を聴いてもらったことがあるなんて、もう本当に歴史。指揮者一人の存在を超えて時代を知るという意味でも(特にトスカニーニは長命だったから)、その生涯について知っておいたほうがいいだろう、で、山田治生さんからご献本いただいた新刊「トスカニーニ~大指揮者の生涯とその時代」(アルファベータ刊)を今読みはじめたところなのだ。訳書ではなく山田さんの著書。大指揮者トスカニーニの評伝である。
●すごいっすよね、トスカニーニのデビューは。えっ、そんなの知ってる? いやいや、そういうものでもないでしょう。18歳で歌劇場オーケストラのチェロ奏者をしていたわけだ。作曲家を目指してて、ピアノも超絶バリバリ弾けて、でもチェロが本職。で、ブラジル公演の際に無能な指揮者のおかげで騒動が起き、指揮者がいなくなる。今晩の「アイーダ」、どうしよか。そこで、「あのチェロの若者なら『アイーダ』を完全に暗譜しているから指揮をさせよう」という話になるところがありえない展開。オペラのスコアをまるごと暗譜してるチェロ奏者という存在も、その若者に運命をゆだねようというみんなも、現代からすると現実離れしている。
●しかもそこでセンセーショナルな成功を収めたにもかかわらず、トスカニーニはイタリアに帰るとまたピットのなかのチェロ奏者をやってる。もちろん才能は隠しようがなく、ふたたび指揮台に上ることになるわけだけど、それが19、20歳の青年なんだから「のだめカンタービレ」の千秋真一以上に荒唐無稽な話かもしれない。スカラ座音楽監督就任が31歳だもんなあ。そういう意味では28歳でLAフィル音楽監督になったドゥダメルには伝説的存在になる可能性がある、のか?
December 4, 2009
「トスカニーニ~大指揮者の生涯とその時代」(山田治生著)
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