●前に少しご紹介した映画「シャネル&ストラヴィンスキー」の試写を拝見。これは良いね。シャネルとストラヴィンスキーの二人の関係を描いた映画なんだけど、ストラヴィンスキーのかの有名な「春の祭典」初演シーンから始まるんすよ。20世紀の音楽史でもっともスキャンダラスなあの場面、1913年のパリ・シャンゼリゼ劇場でのロシア・バレエ団(バレエ・リュス)公演だ。タイムマシンがあったら、あの日に飛んで現場を見たいシーン、ナンバーワン。ストラヴィンスキー、ディアギレフ、ニジンスキー、ピットのオケを振るのはピエール・モントゥーだ(ちゃんとモントゥーっぽい髭の役者さんがすんごく苦心しながら棒を振ってます!)。「春の祭典」好きな人はこの冒頭シーンだけで感動するんでは。ワタシは鳥肌立った。たぶん、客席の騒動を過剰に演出していないところが成功してる。
●物語的にはココ・シャネルとストラヴィンスキーの恋が軸になっている。事前に一抹の不安を抱えていたんだけど、いやいや大丈夫。美しいものだけではなく、ちゃんと醜いものは醜く、憂鬱なものは憂鬱に描いてある。ストラヴィンスキーは当時もう結婚していたんである。幼なじみの従妹と結婚して、子供もいて、でも奥さんは病弱。奥さんは楽譜の校正もしてくれるし、誰よりもストラヴィンスキーの作品に的確な批評をしてくれる。でも夫は有名人になって、シャネルみたいなセレブのターゲットになっちゃう。よくある話だ。この奥さんがいいんだ(と奥さんに共感しながら見る)。ストラヴィンスキー(マッツ・ミケルセン)の人物像も味わい深い。音楽家としては天才なんだけど男としては凡庸っていう描き方だと解した。
●選曲も吉。「春の祭典」以外に、5本の指で、5つのやさしい小品、ソナタなど。
●最後の場面は多少わかりにくいかも。でもオススメ。冒頭がクライマックスなつもりでどぞ。2010年1月 シネスイッチ銀座、Bunkamura ル・シネマ他にてロードショー。
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