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2010年3月アーカイブ

March 31, 2010

フェスタサマーミューザKAWASAKI 2010記者発表

フェスタサマーミューザ

●毎夏ミューザ川崎で開催されている「フェスタサマーミューザKAWASAKI 2010」の記者発表へ。壇上は阿部孝夫川崎市長(左)と大野順二東京交響楽団楽団長。
●フェスタサマーミューザKAWASAKIは首都圏9つのプロ・オーケストラが、7/25~8/15にかけて、それぞれミューザ川崎で公演を行なうフェスティバルで、今年で6回目。通常より短めな70分程度のプログラム、夜8時からの公演あるいは平日の昼間の公演など、いくつか特徴を打ち出している。チケット価格は3000円中心とかなりお得な設定。手ごろな価格、同じホールで、首都圏の気になるプロオケを聴き比べることができるのが吉。同ホールをフランチャイズとする東響の大野楽団長によれば「ヨソのオーケストラと比較されるので、東響はホスト・オーケストラとしてなにがなんでも良い演奏をしなければならないという気持ちになる」とのこと。
●ここはホールの音響が非常に良い。先日「ホール建設検討する独バイエルン州議らがミューザ川崎を視察」というニュースがあった。「ヤンソンスがミューザ川崎と同じものを作ってほしいと要請している」(阿部市長)のだとか。
●あと、これはサマーミューザとは別の話題で、MUZAランチタイムコンサート&ナイトコンサートっていう月イチ開催の気軽なコンサートがあるんだけど、4月の公演からSuicaまたはPASMOで入場できるという(笑)。これはなんだかスゴい。
●もう一つ。秋の来日オーケストラとして、小澤征爾指揮ウィーン・フィルがマーラーの交響曲第9番を演奏するということも発表されていた(11/3)。ということは、サントリーホールにも同じプロがあるのかなあ。

March 30, 2010

春に真冬到来

●昨日よりさらに強まって寒い。花冷えどころではなく真冬。恐るべし地球寒冷化。外をウロウロ歩いているだけで体力が奪われていく感じの東京。それなのに欧州は夏時間入りって、どんな夏なのだ。夏時間って米国と欧州でスタートが違うんすよね、ややこしいことに。
●TOKYO FMの夕方の番組「ワンダフルワールド」に出て、「ラ・フォル・ジュルネ」についてしゃべってきた。渋谷スペイン坂のスタジオから生放送。しゃべる仕事で難しいなと感じるのは、訂正できないこと。あ、しまったと思っても、バックスペースキーを押せない。あと「それは調べれば超簡単にわかる」ということでも、その場では調べられないから「わからない」のと同じになる。一方、「いいな!」と思うのは、必ず時間通りに終わること。30分なら30分で確実に終わる。予定がズルズル延びて半日の仕事だったはずが1日になり2日になり……と引きずることがない。成功しようが失敗しようがとにかく同じ時間で終わるわけだ。これはスゴい。ともあれ、無事に任務を遂行できたようなので安堵。
●今月号の「男の隠れ家」のエンタテインメント・トピックスのコーナーでも「ラ・フォル・ジュルネ」についての紹介記事を書いた。1ページ、一般向け。
●センバツには18世紀枠とか19世紀枠はないのか。ピリオド投法とか。

March 29, 2010

「東京・春・音楽祭」動画配信中

サクラ●ブルブル。なんですか、この寒さは。そして寒い割には桜が意外と咲き始めている。三分咲き、くらいかなあ。たまに先走って八分咲きくらいの木も。花見は容赦なくもう始まっている。
●春が来つつあるけど、まだ春じゃない、でも「東京・春・音楽祭」は始まっている。26日(金)は小菅優ピアノ・リサイタルへ。シューマンのダヴィッド同盟舞曲集、ショパンのピアノ・ソナタ第2番「葬送」他。5月の「ラ・フォル・ジュルネ」ではメンデルスゾーン中心のプログラムだが、なぜかこちらではショパンを弾いてくれたのだ。圧巻。どうしてLFJでは弾いてくれないんだろう、っていうくらい。
●で、この「東京・春・音楽祭」、いくつかの公演について演奏会の動画配信を行なっている。快挙なり。すでに先日触れた中野振一郎さんのトーク付きコンサート(すごくおもしろい)などが配信開始されている。この後、小菅優リサイタル、児玉桃のバッハなどが掲載予定。これはスゴい。どうしてこんなことが可能なんでしょう、という猛烈な気前のよさ。

「東京・春・音楽祭」動画コーナー
http://www.tokyo-harusai.com/news/movie.html

March 26, 2010

助太刀

●昨日はなんだか寒くて春が遠ざかったようであった。おのれ、地球寒冷化。
●CDジャーナルさんに「ラ・フォル・ジュルネの歩き方」~私のハシゴ計画を書いた。どなたかの参考になれば幸い。
●「高慢と偏見とゾンビ」(ジェイン・オースティン、セス・グレアム=スミス著)の担当編集者さんによるブログ「ゾン子の部屋」。おかしすぎる。
●自分メモ。一昨日の「神々の黄昏」字幕で見かけた日本語。「後生だから」「くせもの」「助太刀」「手込めにする」「妖怪」「そなた」。活字上はなんの問題もない正しい日本語。しかし字幕の文体としてどうなのか、自分の中でうまく結論が出せない。ファンタジー映画には出てこない表現だろうが、舞台芸能ではあるからなあ。

March 25, 2010

「神々の黄昏」@新国立劇場

ヤバい指環●昨日は「神々の黄昏」。休憩込みで6時間を越える長丁場。感覚としては昼頃に出かけて、夜中に帰ってくるという丸一日鑑賞。これで2年かけて「ニーベルングの指環」4部作完結。これだけの大作だと、トラブルなく最後まで見れた(ら抜き)こと自体が嬉しい。一日もチケットをムダにせずに済んだし、遅刻もしなかったし、爆睡もしなかったし(ウトウトくらいはしたけど。笑)、劇場内で鑑賞の致命的な妨げになるようなゾンビの攻撃もなかった(ゾンビそのものは見かけました)。安堵。そして深い感動。打ちのめされた気分で世界の崩壊を見て聴いた。
●キース・ウォーナーの演出はホントに楽しい。
●「ジークフリート」は明快なボーイ・ミーツ・ガールだった。しかし「神々の黄昏」はわけのわからん話である。そして長い。序幕だけで2時間超えるってどういう序幕だ(笑)。幕が上がって、ジークフリート(クリスティアン・フランツ)とブリュンヒルデ(イレーネ・テオリン)が愛を歌う。平和なのはここまで。ブリュンヒルデは胸に「S」のマークを付けたTシャツを着ている。SはスーパーマンのSで、ジークフリートのSだ。ジークフリートのTシャツにはブリュンヒルデのBが。なんというバカップルぶり。
●ジークフリートが忘却のクスリを飲まされてからの乱暴狼藉がスゴい。グートルーネに一目惚れして、軽率にもグンターと義兄弟の契りを交わす。岩山のブリュンヒルデをグンターの嫁にするために、隠れ頭巾でグンター(アレクサンダー・マルコ=ブルメスター)に化けて、ブリュンヒルデを陵辱する。本当は夫婦なのに。この時点で呪いの指環を持っているのはブリュンヒルデだ。生まれは神聖だったのに、いまや指環に執着してこの有様。元同僚の説得も効かない。ジークフリートはもっとひどい。彼のは天然だから。他人に嫁を与える方法論としてもおかしいし、ブリュンヒルデに告発されてからの態度はさらに悲惨だ。「あー、メンドくさいな女のヒステリーは。でもあんなものは放っておきゃすぐ収まるんだ、それどころか今にグンターにくれてやったことを感謝するぜ、あの女」みたいなことを歌う。
●これがジークフリートなんだろう。忘れクスリを飲んではいるが、頭がおかしくなったわけでもなんでもない。そういう本性。無双の戦士だが、彼には大人になるチャンスが与えられなかった。自分を賢いと思っているあたりは育ての親ミーメそっくり。ジークフリートとブリュンヒルデ、まさにどっちもどっちで、似合いのカップルだ。あるのは力と欲だけ。そういえば二人とも巨体である。ブリュンヒルデの愛馬グラーネは、「ワルキューレ」で最初に登場したときはブリュンヒルデが小さく見えるほど巨大だった。それが「神々の黄昏」では旅行カバンに収まるくらいコンパクトサイズになっている。ブリュンヒルデが大きくなったのだ。ジークフリートも太っている。神性を失い、力と欲だけで生きる男女が描かれている。
●ハーゲン(ダニエル・スメギ)はアルベリヒよりもミーメよりも陰険なヤツである。またストレッチャーが出てくる。「ワルキューレ」では、ワルキューレたちがストレッチャーを愛馬として駆け巡ったが、今度は本来の用途で、病人となったアルベリヒを乗せて出てくる。ハーゲンは枕で父アルベリヒの顔面を押さえて、無感情に軽く窒息死させる。アルベリヒのためのモルヒネを自分の腕に注射して、陰気に薬物に浸っている。淡々と他人の破滅だけを目指し、むしろ指環への欲望は他の登場人物より薄めなくらいだ。
●2幕の終わりじゃブリュンヒルデとハーゲンとグンターと3人で「ジークフリートを殺せ!」で意見が一致する。ええっ、正気の沙汰じゃないよ、ブリュンヒルデ……。それが3幕でジークフリートが殺されちゃうと、「どうしてこんなことになったのか、おわかりですか」とか手のひらを返したように説教くさくなる。はあ? あんただって加担してるだろが、この自己犠牲娘がっ!(意味不明)
●3人のラインの乙女たちも、いつの間にか醜くなっている。指環は乙女たちのもとに返るが、だからと言って世界はもとの秩序を取り戻すわけではないのだろう。4作のモチーフとなっていたジグソーパズルの最後の一片が収まり、映写機とその映像を見ていた非神話的な現代人の観客の姿があらわれ、幕を閉じる。
●あれ、こうして書いてみると、いったい何にワタシは感動したんだ(笑)。神の世界がグダグダに崩壊するから? ワーグナーは別格の存在で、これから一生毎日ワーグナーを聴いて過ごしたいと思うくらいの(過ごさないけど)破壊力があったのに。
●「グートルーネ」は英語なら「グッド・ルーン」なんすよね。ワーグナー業界では「ルーネ文字」だが、一般に日本のファンタジー業界では「ルーン文字」だろう。グートルーネ役はセクシーな雰囲気の歌手が似合うんじゃないかな。グートルーネは美しく、グンターも金持ちのイケメンで、でも二人とも内心では自分が見かけ倒しの人間であることを知っている。その点に関してはミーメやジークフリートよりは賢い。
●この演出、少しだけ映像を使う。CGだ。初演から何年経ったかな、そのときの映像をそのまま使っているんだろうか。演出は斬新なままだが、唯一映像だけが古びていた。新しいものは古びやすい。
●エッティンガー指揮東フィルは大健闘。たまたまワタシが行った日のめぐり合わせにもよると思うんだけど、昨年の「ラインの黄金」「ワルキューレ」は客席が大いに熱狂していた。それが先月の「ジークフリート」では少し寂しい雰囲気になってしまった。昨日の「神々の黄昏」はさすがに完結編ということもあって、お客も相応にわいていた。
●みんな、どうしてあんなに指環に執着するか、共感できますか? ワタシはよくわからない。呪われてるって知ってるのに。でもなぜわからないかと言えば、それは本物の権力を手にしたことがないからだろう。こんど、リアル権力を有した人に尋ねてみたい、指環の魔力について。

March 24, 2010

オーケストラ・アンサンブル金沢の東京定期

●ドイツグラモフォンのDG Radioが、いつの間にか「β版」から正式版になっていた。中身のCDがもっと頻繁に入れ替わってくれることを期待しているのだが、どうか。ラジオというよりは気前のいい試聴機といったところか。
●ヴォルフガング・ワーグナー死去。ちょうど新国立劇場で「神々の黄昏」を上演しているという奇遇。
●昨晩はオーケストラ・アンサンブル金沢の第26回東京定期公演へ(サントリーホール )。井上道義指揮、小曽根真(ピアノ)、ルベン・シメオ(トランペット)、ルドヴィート・カンタ(チェロ)で、ものすごいプログラム。ヘンデルの合奏協奏曲とタルティーニのトランペット協奏曲、アウエルバッハ:フラジャイル・ソリテュード(弦楽四重奏とオーケストラのための)、休憩を挟んでショスタコーヴィチ:ピアノ協奏曲第1番(トランペットが活躍するあの曲です)、そしてグルダの「チェロとブラス・オーケストラのための協奏曲」。小曽根さんのショスタコが猛烈に楽しい。特にこの曲の終楽章って、シニカルなものであるにせよ、とにかく笑いたくなる曲じゃないっすか。小曽根さんは笑ったし、オケのメンバーも笑ったし、たぶん客席も笑った。吉。
●もっともショスタコもグルダに比べたら行儀のいい音楽か。グルダの「チェロとブラス・オーケストラのための協奏曲」はパロディだらけのハチャメチャな怪作(YouTubeでもとりあえず見れてしまうかな)。金沢での定期公演で同曲が演奏された際は、石川県立音楽堂でミラーボールが回ったらしい(笑)。この曲、演奏機会は結構多いんでは。作曲者本人が死んだ後もあちこちで曲が繰り返し演奏されるっていうのは、それが「クラシック」になりつつあるってことか。いずれピアニストとしてのグルダが忘れられて、作曲家として名が残る?

March 23, 2010

「続クラシック迷宮図書館」 (片山杜秀著)

片山杜秀の本 4 続クラシック迷宮図書館●えっ、もう出たの? そう、出たんである。片山杜秀さんの「続クラシック迷宮図書館」(アルテスパブリッシング)。以前に「クラシック迷宮図書館」をご紹介したのが今年の1月。あっという間に続巻が出た。「レコード芸術」誌連載「片山杜秀のこの本を読め!」の2004~2010(最近だ)までの回を中心に収録してある。書評なんていうのはどんな雑誌にもあるが、音楽書の書評がまとめて一冊になって(いや二冊だ)、それがとことんおもしろいというのは片山さん以外ではありえないこと。帯に「面白すぎて小説が書けない! 高橋源一郎(作家)」とあるのだが、これはTwitter上で高橋源一郎氏が本当にそう呟いていたんである、たしか。
●で、片山ファンに朗報。3/25(木)、というともう明後日なのだが、19時よりジュンク堂書店新宿店にて、片山杜秀さんのトークセッション「音楽は読め!」が開かれる。「続クラシック迷宮図書館」 刊行記念。詳細は版元のアルテスパブリッシングのこちらにてご確認を。片山さんはトークも味わい深いんすよ。これ、行けばそこで本を買ってサインしてもらったりできるんすよね?

March 21, 2010

マリノスvs川崎フロンターレ@Jリーグ

マリユニ●なんということであろうか。少し苦手意識のある川崎に、稲本を補強した川崎に、ウチから大切な左サイドバック小宮山尊信を引き抜いてくれた川崎に、4-0の奇跡的完勝。だれもが予想しなかった……いやどうかな、少なくともワタシは夢にも思わなかったこの展開。生でもテレビでも観戦できなかったが、見てない時に勝つ法則発動。
●ゴールは中村俊輔、山瀬功治2、栗原勇蔵。前の試合、俊輔の加入でベンチに追いやられるも途中交代で強烈なゴールを決めた狩野は、期待通り先発に復帰してくれた。少し木村和司監督への好感度が上がった。代わりにだれがポジションを失ったかといえば長谷川アーリアジャスール。この選手もこれまで使って育てた選手だし、スケールの大きさはいずれ代表を狙えると思わせるもの。後半17分から俊輔に代わって出場した。
●こうなると昨年の新人王、渡邉千真(カズマ)のポジションも安泰ではないかも。そもそも坂田がベンチにいるわけだし、ほかに新外国人がベンチ外にいる(マリノスの外国人選手はどうしていつもピッチ上にいないのか)。この手駒の多さが「層の厚さ」になってくれればいいのだが、近年はむしろ良い選手を使い切れず放出してしまっている感もあり。このあたりの采配が監督の腕の見せどころか。
●若いキーパーの飯倉大樹。公式サイトの選手名鑑によると、将来の夢は「犬になりたい」。なれないと思う。割と犬顔とはいえ。

March 19, 2010

ジュノム、ジュノム……

●昨日は小倉貴久子さん&大井浩明さんによる「モーツァルト/クラヴィア協奏曲全21曲演奏プロジェクト」第1回へ。自由学園明日館講堂で、第5番、第6番、第8番「リュッツォウ」、第9番「ジュノム」を一晩にという盛りだくさんなプログラム。おそらく作曲当時に実際的な要請からたびたび演奏されたであろうフォルテピアノ2台による演奏という形態で、小倉さんがソロ、大井さんが第2ピアノ。躍動する精気にあふれたモーツァルトを満喫。協奏曲なんだけど、2台ピアノでもなんの不足感も感じない。とういかむしろ新鮮。自由学園明日館講堂という趣のある会場もすばらしいので、たぶん6月の第2回以降もオススメ。コンサートホールで聴くよりも贅沢なんすよ、体験として。
ビバ、モツァルト●モーツァルトの「ジュノム」って、たぶん20番より以前の協奏曲の中でいちばん演奏機会が多くて、実際突出した傑作じゃないっすか。協奏曲とソナタは若い時期の作品でも全部すばらしい曲ばかりなんだけど、「ジュノム」は単にすぐれているというだけじゃなくて、成熟している。ホントにそんな若い時期に書いたの?みたいな。これはたぶん第2楽章が短調で、その憂いの深さみたいなものに引きずられて受ける印象なんだろうけど。あと終楽章のロンド、プレストで異様な躁状態ではじめておいて、途中でメヌエットなんていうギャップの激しいものを差し挟むというアイディアもわけわからんスゴさ。よく言われる第1楽章冒頭にオーケストラにこたえてすぐにソロが一言だけこたえるという趣向も謎。ベートーヴェンの4番、5番ですぐにピアノが登場するのは、定型を破ろうっていうことでわかるんだけど、「ジュノム」はなんかもっと身近に具体的な理由があってソロがすぐに出てくるのかなあとも想像しなくもない。たとえば、協奏曲はおおむねみんなソリストを聴くために来るとして、オケの提示部は退屈だからとマジメに聴こうとしない客がいるから、彼ないし彼らを一瞬驚かしてやろう、みたいな。
●フランスのジュノム嬢というステキな女性に献呈されたということで愛称「ジュノム」。ザスロー全作品事典でも日本語版グローヴでも、なに見てもそう書いてある。でも最近は、ジュノム嬢 Jeunehomme なんて存在しなくて、モーツァルトの友人である舞踏家のジャン・ジョルジュ・ノヴェールの娘、ヴィクトワール・ジュナミー Jenamy のことだって言うんすよ(Michael Lorenz: The Jenamy Concerto。←ちゃんと読んでないけど)。「ジュナミー協奏曲」。うーん、なじめん。長年「ジュノム」で親しんでいるので、新しい名称に慣れるなら反復して口にする必要があるだろう。「ジュナミー、ジュナミー、五劫のすりきれ海砂利水魚の水行末……」。

March 18, 2010

日本の「三大……」

ベトベン●「三大B」とか、あるじゃないっすか。ベートーヴェン、バッハ、ブラームスとか。あれ?これであってるかな。ブルックナーは入らないんだっけ。あるいは20世紀版でバルトーク、ベルク、ブリテンでもなんでもいいんだけど。これってアルファベット圏だから「B」なわけで、やはりわれわれ漢字圏の人間には適用できないわけだ。やるなら、漢字だろう。
●たとえば、日本の「三大山」とか。山田耕筰、山田一雄、山本直純で「三大山」。どうか。
●どうかと言いつつ、実は他の例が出てこない。そうだなあ、日本の「三大服」なんてどうだろう。服部良一、服部克久、服部隆之。って親子三代だけど。
●「三大小」はできるかもしれない。小山清茂、小倉朗、えーと、小松耕輔? しかし「三大小」では大きいんだか小さいんだかわからない。
●もしマジメに日本の「三大B」を考えるとするなら、佐藤B作以外に誰が入るのかというのが問題。

March 17, 2010

「人生のちょっとした煩い」(グレイス・ペイリー著)

「人生のちょっとした煩い」●なぜかわからないのだが、Amazonがワタシにこの本を薦めてきた。「人生のちょっとした煩い」(グレイス・ペイリー著/村上春樹訳/文春文庫)。えっ、グレイス・ペイリー? 読んでないなあ。村上春樹にもあまり親しんでないんだけど。でもなにか気になって、あえてAmazonに言われるがままに買ってみた。すると、悔しいことに、これがおもしろかったんである。
●グレイス・ペイリーは1922年ニューヨーク生まれのロシア系ユダヤ人作家。1959年の本なので時代背景をある程度意識しておく必要があるが、それにしても古びていない。新鮮だけど普遍的。描かれるのは、おおむねタフな女性とどうしようもない男性。辛辣さと独特のユーモアが一体になっていて、特に男の描かれ方っていうのが、女性作家じゃなきゃ書かないだろうっていう身悶えしそうな真実だらけ。今がよければそれでいいみたいな単純な生き物っぷりとか。短篇集なんだけど一作ずつゆっくり付き合ったら(読み飛ばすには密度が濃くて味わい深すぎる)、読み終えるまでにずいぶん時間がかかってしまった。
●お気に入りを3篇挙げるなら、「コンテスト」「変更することのできない直径」「そこに浮かぶ真実」、それと「人生への関心」も外せない。あ、これじゃ4篇か。まあいいか。「人生への関心」は、ある年のクリスマスに夫が奥さんに箒をプレゼントするところからはじまるんすよ。素敵なちり取りとセットになってるヤツ(笑)。やれやれ、降参。

March 16, 2010

ラジコ(radiko)はじまる

ラジオ●サイマルラジオ radiko がスタートした。「パソコンで民放ラジオが聞けるようになる」とニュースで話題になっていたサービスで、NHKは対象外。東京の場合、聞ける局は、TBSラジオ、文化放送、ニッポン放送、ラジオNIKKEI、InterFM、TOKYO FM、J-WAVE。
●で、これ、ためしに少しアクセスしてみたんだけど、ワタシらがなじんでいる「ネットラジオ」とは少々意味合いが違う。なんというか、全般にとても内向きなサービス。最大の特徴は、ネット配信なのに聴取エリアが限定されていること。つまり、前述の局はIPアドレス上、東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県からアクセスしていると認められる人だけが聞ける。それ以外の地域からは聞けない。
●一方、大阪府、京都府、兵庫県、奈良県からアクセスする人は、朝日放送、毎日放送、ラジオ大阪、FM COCOLO、FM802、FM OSAKAといった関西の局を聞くことができる。これらの局は、東京からはアクセスすることはもちろん、存在してることすらわからない(サービス案内を読まない限り)。なんかそれって、ネットラジオというか、もとのラジオそのものでは?(笑)
●Twitter上からサービス開始日の反応を見てると、この地域判定がうまくいっていない例が目立った。関西なのに関東の局だけ聞けるとか、東京なのになにも聞けないとか。ああ、なんかすごくアンチ・ネット的なサービスだなあ。ネットラジオのおかげで、局の所在地が東京だろうとロンドンだろうとアメリカの片田舎だろうとみんな等距離になったと思っていたら、まさかこんな国内地域ブロックの壁が立ちはだかろうとは。あと、これってradikoのサイトに行って、そこのプレーヤーを立ち上げないと聞けないのも閉じている感じがする。
●と「大人の事情」仕様を嘆きつつも、歓迎、radiko。これは最初の一歩に過ぎないんである。こういうものはいったん動き出したら止まらなくなる。すぐにフツーのオープンなネットラジオになると期待。現状 HE-AAC 48kbps という寂しい音質もあっという間に128kbpsくらいになる(かもしれない)。NHK-FMもなんらかの形でネットラジオをはじめる(と、いいなあ)。あと、音楽を聴くためのネットラジオは世界中にもうあるんだから、「ラジオ番組」らしいラジオを聞ける局こそ欲しいっていう声もあるわけで(ていうかそっちがフツーだ)、その意味ではradiko最強。

March 15, 2010

週末フットボール・パラダイス~JFL開幕と中村俊輔復帰編

●祝、JFL開幕。日本サッカーの3部リーグ。横河武蔵野FCは昇格組のツエーゲン金沢と対戦(←金沢出身者にはわかる笑えるネーミング。ツエーゲンとは「(俺たちは)強いんだよ」みたいな意味を少しくだけた感じで微妙にヤンチャっぽく、なおかつ脱力的なニュアンスで伝える方言なのだが、該当する標準語の語彙が見当たらない)。ツエーゲン金沢は昇格組とはいえ、プロ志向でJリーグ昇格を目指し、元日本代表の久保竜彦らを擁する、傍目には予算のあるクラブ。
●一方、横河武蔵野FCは昨季JFL2位の強豪だが、選手はみんなほかに仕事を持っているアマチュア・クラブでJリーグ昇格は目指していない(だから2位でもJ2には昇格しなかった)。ワタシは過去2シーズンこのクラブを応援している。たとえ相手が金沢でも武蔵野を応援しないわけにはいかない。JFLの意地を見せねば。
●が、この対戦カード、本来ならなんとしても観戦したかったのだが、仕事の都合でどうしても試合に行けず。そしてネットで結果を知って仰天。なんと、金沢が2点をリードした後、武蔵野が3点を取っての大逆転劇。特に同点ゴールと逆転ゴールは85分と88分。いや、なんということか。守備のチームだったのに。ともあれ3-2、JFLの洗礼を浴びせることができてよかった。Jを目指す金沢には遠からず追い越されることになるにしても、この1試合だけは勝っておきたかった。
マリノス型対雨防御装置●一方でマリノスは中村俊輔が復帰第一戦。相手はこちらも昇格組の湘南。急遽NHKが録画を放映してくれたので、3-0で快勝したことを知った後でテレビ観戦。感じたことは2つ。エスパニョールでの中村俊輔が100%の力でギリギリ通用しなかったとすれば、Jリーグでの中村俊輔は70%の力で快適にプレイできる(ように見える)。改めてレベルの差を実感、わかりきったことだけど。そして少し、悔しかった。昔、ピークをすぎた外国の名選手がJリーグに移籍してきて、それでも活躍しちゃって年金リーグ扱いされる時代があったじゃないっすか。ああいうガイジンプレーヤーを俊輔の中に発見してしまうという驚愕と困惑。
●もう一つ。俊輔が入ったことで、ベンチに追い出されたヤツがいる。狩野健太だ。マリノスは狩野を使い続けることで育ててきた。そして現に育った。なのにここでベンチで腐らせてはどうしようもない。84分に中村俊輔が狩野健太と交代。すると狩野は一人でドリブルで突進し、ありえないほど豪快なミドルシュートを叩き込んだ。あれは俊輔にはできないだろう、と思わせる能力の限界を突破するようなプレイ。次の試合で、狩野が先発して、俊輔がベンチに座ることになったとしても、ワタシはまったく異論がない。

March 12, 2010

映画「ドン・ジョヴァンニ」と「シャーロック・ホームズ」

●モーツァルトとダ・ポンテを題材にした映画が4月に公開される。カルロス・サウラ監督「ドン・ジョヴァンニ 天才劇作家とモーツァルトの出会い」(音が出ます)。映画におけるモーツァルトはあまりにも「アマデウス」の印象が鮮烈すぎていまだに記憶に焼き付いているが、果たしてそれを塗り替えてくれるものかどうか。
●そういえば試写でガイ・リッチーの「シャーロック・ホームズ」 (これも音が出ます) を観たのだった。これはもう、ワタシらがNHKで見てきたジェレミー・ブレット版ホームズのイメージをとことん覆すものだった。ホームズ役はロバート・ダウニー・Jrで、筋肉ムキムキに鍛え上げられたスーパーマン。ワトソン役はなんとジュード・ロウで超イケメン、しかもホームズほどじゃないがアクションシーンもしっかりこなす。
●たしかに原作ではホームズは知性に恵まれているばかりではなく、ボクシングがプロ級ってくらいの肉体派でもあったっけ。ワトソンにもなんとなく動きの鈍いオッサンという先入観を持っていたが、これもNHKの番組のイメージか。
●予告編からもわかるように画面は相当ににぎやか。色調も演出も全般にダークなトーンなんだけど、大作らしく万人向けに作られている(つまり同じ監督の「ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ」や「スナッチ」のようには捻ってない)。
●そういえばホームズはヴァイオリンの名手のはずだったが、この映画では一度たりとも弓でヴァイオリンを弾くシーンがない。その代わり、爪弾く。ヴァイオリン自体はこれ見よがしに何度も出てくるので、これは次作以降の伏線にでもなっているのだろうか。

March 11, 2010

「東京・春・音楽祭」3/14開幕、演奏会のインターネット配信も!

東京・春・音楽祭●上野の音楽祭、「東京・春・音楽祭~東京のオペラの森」が3/14(日)に開幕する。この音楽祭、昨年から名前と中身が刷新されて、ずいぶん雰囲気が変わった。昨年は「オペラがないのにどうして『オペラの森』なんて名前が付いてるの?」なんていわれてたが、今年はワーグナー「パルジファル」(演奏会形式)がある。目玉公演は以下の二つ。東京文化会館。

ワーグナー「パルジファル」(演奏会形式) 4/2、4/4
ウルフ・シルマー指揮NHK交響楽団、ブルクハルト・フリッツ、ミヒャエラ・シュスター他

オルフ「カルミナ・ブラーナ」他 4/9、4/10
リッカルド・ムーティ指揮東京春祭特別オーケストラ、東京オペラシンガーズ、デジレ・ランカトーレ、マックス・エマヌエル・ツェンチッチ他

●実は上記二公演にも、文化会館小ホール、東京都美術館、国立科学博物館、東京国立博物館、国立西洋美術館といった上野の文化施設を用いて、たくさんの公演が予定されている。スケジュールを見てると、いくつも聴きたい公演が見つかる。
●で、その公演のいくつかが動画ストリーミングでインターネットで配信される。いやー、そう来なくちゃ、この音楽祭は。すばらしい。以下が中継予定のラインナップ。いずれも公演終了後、配信期間限定(都合により配信中止になることもあります。とリリースに書いてある、一応)。

■ 小菅 優 ピアノ・リサイタル (公演日:3/26)
■ ミュージアム・コンサート 「ボルゲーゼ美術館展」記念コンサートVol..1~3  中野振一郎 /他(公演日:3/16、17、18)
■ ミュージアム・コンサート 姜 建華(二胡)~日本の春・中国の春 (公演日:3/22)
■ ミュージアム・コンサート アミーチ・カルテット (公演日:3/27)
■ ミュージアム・コンサート 東博でバッハ Vol.4 児玉 桃 (公演日:3/28)
■ ミュージアム・コンサート The DUO(鬼怒無月+鈴木大介)~Jazz & シネマ・ナイト(公演日:3/30)
■ ミュージアム・コンサート 東博でバッハ Vol.5 & 6 佐藤俊介(ヴァイオリン)(公演日:4/1、4/6)
■ ミュージアム・コンサート ジャスパー弦楽四重奏団(公演日:4/3)/他

●すごいなー。これはなかなかできないっすよね。LFJでもできない?無理?
●あと、音楽祭のTwitterアカウントがあるので、ユーザーの方はフォローするが吉(@tokyo_harusai)。

March 10, 2010

ネットブック、便利

ASUS EeePC1005HR●少し前から、いわゆる「ネットブック」というタイプのノートPCを使っている。いやー、これは実にいいっすね。家の中で使う分にも悪くはないんだけど、いざ必要となれば外に持って出かけられるのが心強い。ネットブックというのは安価で小型軽量なWindowsマシンで、基本性能はどの機種も横並びでかなり低い(←ここ重要)。画面も狭い。メインマシンにはなりえない。
●買うときはさんざん迷ったんである。というのは最近ネットブックの人気は下火で、代わってCULVというカテゴリーに魅力的な製品が増えた。CULVはネットブックほど小さくも軽くもないが、性能は十分高く、画面解像度も高めで、ネットブックとの価格差もわずか。家の中で使うなら断然こちらがいい。もし自分がCULVを買うならASUSのUL20Aで決まりだと思ってた(ただしWindowsが64bit版に「進化」してしまってかまわなければ)。
●これに比べるとネットブックは一時代前の性能しかない。でもより小型軽量で、重さの割には長時間稼動するタイプが多い。どちらがいいのか。もうアホというほどカタログを比較したり、繰り返しお店で実物を見たり、サイズを体感するために型紙みたいなものを作って自分のカバンに入れてみたりして、結局ASUS EeePC1005HRという昨年11月末に発売された機種を選んだ(今はさらに新型がいくつか出ている)。これは電池が長持ちなので、外出するときにACアダプタを持たなくてもいい。そして本体は1.27kg。UL20Aのほうは1.56kgだから300gしか違わないんだけど、この300gの差は一日持ち歩くことを考えるとすごく大きい(と信じている)。というか1.27kgでもワタシにとってはギリギリの重さ。
●ナントで「ラ・フォル・ジュルネ」を取材している間は、会場に自分のデスクというものがないので、毎日朝から夜遅くまでこれをカバンに入れて常に携帯していたが、それでもなんとかなったのは1.27kg、ACアダプタなしだから。もう一回り大きかったら、きっと音を上げた。あと価格も重要。ノートPCはデスクトップに比べて実質的な耐用年数が短いし、持ち歩くと破損や故障などの確率も高くなる(昔、吉野家で最新ノートPCをカウンター下の荷物入れから床までガツンと落下させた経験あり。平気だったけど)。バッテリーも問答無用で劣化する。ほぼ消耗品という意識。

March 9, 2010

エレベーターボタン・キャンセル技

エレベーター行き先不明●「今頃そんなことを知ったのか?」と言われそうな気もするが、でも知らない人もいると思うし、ワタシはそれが本当かどうかいまだ訝しんでいる。エレベーターボタン・キャンセル技。ボタンまちがえて押して、キャンセルしたいときってあるじゃないですか。そういうときにメーカーごとに、階数ボタンをダブルクリックしたり、長押ししたりするとキャンセルできるっていうアレだ。
●ワタシはこの話を、何年も前に人から聞いたのだが、冗談だと思ってたのだ。ためしになんどかチャレンジしてみたが、通用しなかった。ただ、そのときはメーカーまでは意識していなかったわけで、今もう一度試してみたくてウズウズしている。エレベーター乗りたい指数が人生最大値到達中。
●フジテックの[開] + [閉] + [目的の階数]で 停止不可の階に停止するっていうのは、かなり危険な気がする。絶対ヤバいと思うんすよね、なんか扉が開いた瞬間に見ちゃいけないものを見ちゃうというか。
●フジテックは「5連打でキャンセル」というのもステキだ。一度やってみたい。もうフジテックのエレベーターを探して旅に出そうな勢い。
●「上上下下左右左右BA」はないのか。

March 7, 2010

Jリーグが開幕して、今年もさっそく負ける、負けすぎる

●祝、開幕。呪、敗北。東京 1-0 マリノス
マリユニ2010●マリノスにとって、もっとも不得手な相手のひとつとアウェイで開幕戦とは。都合により味スタに足を運ぶことはできず、テレビ観戦したのであるが、正解であった。なんという鬼門。あの終了間際の失点を生で観戦していたら、ワタシはその場で血管ブチ切れて卒倒しかねない。
●ミスターマリノスこと木村和司監督デビュー。マリノス者としてこの気分を形容するなら、マラドーナを監督に迎えたアルゼンチン国民のそれ。いろんな意味で。
●実のところ、途中まではよかった。悪くても引き分け、あわよくば勝利を、という展開。雨でお互いミスが多く凡戦模様ではあったが主導権は握っていた。新監督のスペクタクルな攻撃をしたい(希望)というのも伝わってきた。しかしあの試合終了直前の失点シーンはなに?
●あの場面、マリノスはチャンスを得たんすよ、右サイドに坂田が持ち込んで、カウンターになるかなと一瞬期待した。でもほかの選手の上がりが遅く、坂田に対するサポートもまるでなく、せっかくの好機なのに坂田は1対3でボールをキープすることを余儀なくされた。ああ、勝負どころで走れないな、と思ったら坂田はボールを奪われ(相手は3人なんだから)、そこからなぜかFC東京のカウンターになり、石川に(たぶん田中裕介が)不用意なスライディングタックルをして見事にかわされ、これまたなぜかドフリーの平山にパスを通されてしまい失点。カウンターのチャンスかと思ったら、カウンターを喰らうって、どうなってるのか。そして平山を見失うセンターバックって……。せめて競り合ってから負けてくれ。
●開幕メンバー。たぶん一ヶ月もすればガラリと変わってる気がする。GK:飯倉-DF:藤田優人(新戦力)、中澤、小椋、田中裕介-MF:兵藤、金井(→バスティアニーニ)、狩野(→坂田)、山瀬-FW:長谷川アーリアジャスール(→清水)、渡邉千真。アーリアジャスールを高めの位置で使ってる。これに中村俊輔が加わるのだが、だれを外せばいいのやら。

March 5, 2010

METライブビューイングの2010-11新シーズン

●METライブビューイング2010-11新シーズンのラインアップが発表された。詳細はリンク先に……と思ったけど、以下にざっくり貼り付けておこう。日本での上演日は現地から3週間後以降。

第1作 ワーグナー「ニーベルングの指環」序夜「ラインの黄金」(新演出)
MET上演日:2010年10月9日
指揮:ジェイムズ・レヴァイン 演出:ロベール・ルパージュ
出演:ブリン・ターフェル、ステファニー・ブライズ、リチャード・クロフト、ウェンディ・ブリン・ハーマー

第2作 ムソルグスキー 「ボリス・ゴドノフ」(新演出)
MET上演日:2010年10月23日
指揮:ワレリー・ゲルギエフ 演出:ペーター・シュタイン
出演:ルネ・パーペ、エカテリーナ・セメンチュック、アレクサンドルス・アントネンコ

第3作 ドニゼッティ 「ドン・パスクワ―レ」
MET上演日:2010年11月13日
指揮:ジェイムズ・レヴァイン 演出:オットー・シェンク
出演:アンナ・ネトレプコ、マシュー・ポレンザーニ、マリウシュ・クヴィエチェン、ジョン・デル・カルロ

第4作 ヴェルディ 「ドン・カルロ」(新演出)伊語 5幕版
MET上演日:2010年12月11日
指揮:ヤニック・ネゼ=セガン 演出:ニコラス・ハイトナー
出演:ロベルト・アラーニャ、マリーナ・ポプラフスカヤ、サイモン・キーンリーサイド、フェルッチオ・フルラネット、アンナ・スミルノヴァ

第5作 プッチーニ 「西部の娘」 
MET上演日:2011年1月8日
指揮:ニコラ・ルイゾッティ 演出:ジャンカルロ・デル・モナコ
出演:デボラ・ヴォイト、マルチェッロ・ジョルダーニ、ユーハ・ウーシタロ

第6作 グルック 「タウリスのイフィゲニア」
MET上演日:2011年2月26日
指揮:パトリック・サマーズ 演出:スティーヴン・ワズワース
出演:プラシド・ドミンゴ、スーザン・グラハム、ポール・グローヴス

第7作 ドニゼッティ 「ランメルモールのルチア」
MET上演日:2011年3月19日
指揮:パトリック・サマーズ 演出:メアリー・ジマーマン
出演:ナタリー・デセイ、ジョセフ・カレーハ、ルドヴィック・テジール

第8作 ロッシーニ 「オリー伯爵」(新演出)
MET上演日:2011年4月9日
指揮:マウリツィオ・ベニーニ 演出:バートレット・シャー
出演:ファン・ディエゴ・フローレス、ディアナ・ダムラウ、ジョイス・ディドナート、ステファン・デグー

第9作 R・シュトラウス 「カプリッチョ」
MET上演日:2011年4月23日
指揮:アンドリュー・デイヴィス 演出:ジョン・コックス
出演:ルネ・フレミング、サラ・コノリー、ジョセフ・カイザー、ラッセル・ブローン

第10作 ヴェルディ 「イル・トロヴァトーレ」
MET上演日:2011年4月30日
指揮:ジェイムズ・レヴァイン 演出:デイヴィッド・マクヴィカー
出演:マルセロ・アルヴァレス、ディミトリ・ホヴォロストフスキー、ソンドラ・ラドヴァノフスキー、ドローラ・ザジック

第11作 ワーグナー 「ニーベルングの指環」第1夜「ワルキューレ」(新演出)
MET上演日:2011年5月14日
指揮:ジェイムズ・レヴァイン 演出:ロベール・ルパージュ
出演:ヨナス・カウフマン、ブリン・ターフェル、デボラ・ヴォイト、ステファニー・ブライズ、エヴァ=マリア・ヴェストブルック

●「指環」2作の新演出がある。ロベール・ルパージュ演出、レヴァイン指揮。東京は今月の新国立劇場「神々の黄昏」で一通り再演が完結するが、今度は秋に映画館で新しい「指環」を観ることができるわけだ。ゲルギエフが「ボリス・ゴドノフ」、ルイゾッティが「西部の娘」を指揮。
●メトロポリタン・オペラそのものの来シーズンのプログラムは公式サイトのこちらに。

March 4, 2010

ニッポンvsバーレーン代表@アジア・カップ予選

ニッポン!●そろそろ熱心なサッカーファン以外は、最近の代表の試合がなんのための試合かわからなくなりつつあるのでは。これはアジア・カップの最終予選(そんなのあったんだ!)で、しかもグループリーグを互いに1位と2位で勝ち抜けを決めている両者にとって、完全な消化試合。「また、バーレーンか!もうマチャラ監督の顔を見飽きた!」と思うと不要な試合のような気もするが、一方でW杯前に海外組を召集できるラストチャンスでもあるから難しい。
●で、メンバー。GK:楢崎-DF:内田、中澤、トゥーリオ、長友-MF:遠藤、長谷部、中村俊輔(→玉田)、松井(→森本貴幸)、本田圭佑、FW:岡崎。
●最大のテーマは本田と中村俊輔の共存。これはうまくいった。本田をフォワード寄りで使った。左サイドに松井、右サイドに俊輔の形でスムーズ。4-2-3-1。後半に松井に代えて森本を入れてからはボールもうまく回らなくなったように見えた。ただ松井でいいのかどうか。プレッシャーのない試合だったので楽しいプレイがたくさんあってよかったんだが、W杯でこのメンバーというのはかなり強気の選択になると思う。
●バーレーンはメンバーもそろわず、ベストには遠かった。ていうか、バーレーンはプレイオフでニュージーランドに敗れてW杯出場権を「オーストラリアなきオセアニア」に与えてしまったわけで、今さらながらアジアの一員としては恨み言もいいたくなる。以前あんなに日本に健闘していたのに、どうしてニュージーランドに。
●得点はサイドから崩した形で、岡崎、本田の2ゴール。2-0で完勝。
●代表は代表監督も大事だけど、根本的には選手の普段の所属クラブでのプレイの質が上がらない限り、強くはならないはず。日頃Jリーグのレベルでやってるのに、代表チームだけは監督の力量で世界のベスト16になれるとか、ワタシらはそんな都合のよい幸運を期待しているわけではない(いや少しだけしてるか。笑)。今にして思うと旅人中田ヒデの「Jリーグもよろしく」には重みがあったのだなあ、そして今週末Jリーグ開幕。

March 3, 2010

METライブビューイング「シモン・ボッカネグラ」

メトMETライブビューイングでヴェルディ「シモン・ボッカネグラ」。ドミンゴがタイトルロール、バリトン役を歌った公演。朗々と歌うシモン。このオペラ、序幕で若き日のシモン・ボッカネグラが出てきて、続く第1幕で25年後にジャンプするんすよね。ドミンゴだと本当に25年老けたって感じになる。宿敵役フィエスコのジェイムズ・モリスとともに、熟してて渋い。ドミンゴはなんか幸せそうに老いててステキだなあ、METライブビューイング得意の舞台裏ショットで出てくるとそう思う。
●それにしてもヴェルディの「シモン・ボッカネグラ」って作品は! これ、スゴくない? この台本が生まれるにあたって紆余曲折はあったみたいだけど、ヴェルディはこれを台本作家から受け取ったときに頭を抱えなかったんだろうか。二人の男が宿敵で、ヒロインがいて、そのヒロインは実は片方の男の娘であり、もう片方の男の孫娘であるという基本設定もどうかと思うが、ヒロインのアメーリア(エイドリアン・ピエチョンカ)もかなり不思議ちゃんだと思う。1幕のグリマルディ伯爵邸でシモンと会って、なんか唐突に自分の身の上話をはじめて出生の秘密を明かしちゃう。パオロと結婚したくないからということなのかもしれんが、対立する側の権力者にそんなことまであっさり話すなんて。
●でももっと驚くのは1幕第2場の議会の場。アメーリアが誘拐されたぞ!大変だ、犯人は誰だ、お前だ、許さん!とやってるところに、いきなり当のアメーリア本人が現れて「みんな、止めて~」みたいなありえない展開。おいっ、あんたさっき誘拐されたんじゃなかったの! 小娘一人に逃げられるってどんな緩い誘拐犯なの……。このアメーリアが出てくる場面はなんど思い出しても笑う。
●と、ワタシにはこの台本は筋が通っているようには思えないんだけど、でもヴェルディはものすごい情熱を注ぎ込んで音楽を書いた。奇跡のような瞬間がいくつもある。特に議会の場の重厚さ、高揚感は圧巻。話の筋がどうなっていようとも、音楽と舞台がすばらしければオペラはいくらでも人を感動させることができるのか。ヴェルディって天才、というかほとんど神! メトの舞台もゴージャスで見ごたえがあった。オススメ。
●ところで、序幕でマリアが死んだのはあれは自然死でいいんすよね、病気かなんかで。シモンが死体を発見したのは偶然? 第一発見者なの? フィエスコは娘の死ついてはどうなのよ(←まだ話に納得してない)。

March 2, 2010

アイスホッケーに見るフットボール未来形

アイスホッケー●はあ……終わってしまったか、脱力とともに。冬季五輪最終日の朝、ワタシはテレビの前で呆然としていた。と、と、と、録れていない、アイスホッケーの決勝が! 地元カナダvsアメリカというこれ以上盛り上がる試合はないだろうという試合を録画失敗。楽しみにしていたのに。そして、試合経過と結果を知って衝撃。え、残り25秒での同点劇だと? 延長戦でカナダ優勝? オリンピックでいちばん盛り上がる瞬間を見逃してしまったのか。
●この失敗をしっかりと受け止めて、次につなげて行きたいと思います、4年後に向けてがんばります!
●アイスホッケーはまだまだルールとか戦略とかでわかんないところが多いんだけど、いいっすよね、スポーツとして進化してて。ゴールキーパー以外、5人がワンセットになって、4つのセットを試合中何度も入れ替えていく。動きが激しいから氷上で全力で動けるのが1分くらいということで、どんどん選手が交代する。ってことは、スター選手でも試合中の大半はベンチに待機してなきゃいけないわけだ。なんだか未来。
●これに比べるとサッカーはクラシック。古典的だからいいとも言えるが、でもアイスホッケーのいくつかの仕組みはサッカーにも遠からず取り入れられるかもしれない。
●たとえば選手交代の自由。昔、サッカーは交代が不可だった。それが3人までになった。だったら制限をなくせばいいんじゃないか。かつてサッカーは週に一試合のリーグ戦で成り立っていたが、いろいろなビジネス上の要請から(チャンピオンズリーグとか各種カップ戦)週中にも試合が行われるようになった。同じ選手で週2試合を戦うと、選手が疲弊して質が落ちる。だからビッグクラブは過剰に人員を抱え、ベンチに豪華スターをずらりと並べながら選手をやりくりするようになった。もし交代自由ならベンチのスターも試合に出せるし、週に2試合も問題なくこなせる。あるいは攻撃的セットと守備的セットを作って、試合中に入れ替えるとか?
さ~、今日もじゃんじゃん出しますよー●あとイエローカードをもらった選手は、10分間とか一時的に退場させるってのはどうか。悪質なタックルや相手のチャンスを故意につぶすようなプレイがあったとき、現在のイエローカードは処分が軽すぎてファウルする側が得をすることが多い。しかし、だからといって軽々しくレッドカードを出してしまうと、試合が壊れてしまう。レッドはたったひとつの判定で試合が左右されすぎてしまうんすよね。そこでイエローで時限退場(キーパーを除く)。これだとイエローの処分が少し厳しくなるし、その一方でレッドカードは全体として減少する。なぜなら1枚イエローをもらった選手がピッチ上に立つ時間が短くなるので、その分、統計的に「2枚目のイエロー」が出る確率が減るから(さらにいえば乱暴な傾向のある選手がピッチ上に立つ時間も短くなり、エレガントな選手のほうがプレイ時間が相対的に長くなる)。悪くないんじゃない?

March 1, 2010

東京バレエ団「シルヴィア」

踊りながらどこまでも飛んでいける●東京バレエ団の「シルヴィア」へ。26日(金)東京文化会館。バレエはまるっきりの門外漢なのだが、後学のためにと思って足を運んでみた。すると、これが期待以上におもしろいんだな、見方がわかってないなりに。フレデリック・アシュトン振付、ドリーブ作曲、ベンジャミン・ポープ指揮東京ニューシティ管弦楽団。
●舞台があってピットがあってオケが入っていて物語があって、形態的にはオペラに近いんだけど、中身はぜんぜんちがう(そりゃそうだ)。幕が上がってパッと序曲みたいなのが始まるんすよ、で、こう音楽が「さあどうぞ」と来たときに、舞台の人は歌わないんすよ! 歌うんじゃなくて、その代わりに踊る!! いかにも歌ってくださいのところで踊る、この衝撃。そして登場人物もストーリーもあるけど、舞踊で進行していくからセリフがない、字幕もいらないという言語障壁レスな舞台。感動。えっ、そんなの当たり前すぎる? いや、これは正確じゃないな、踊るからすばらしいんじゃない。ずばり、美しいからすばらしい、人間が。人間離れして美しい人工的な人間以上のなにか。
●シルヴィア(ポリーナ・セミオノワ)とアミンタ(マルセロ・ゴメス)が美しいだけじゃなくて、舞台上に存在する人間ぜんぶが美しい。ワタシの知っている舞台というものとかなり違う(笑)。オペラ歌手にも見目麗しい人はいなくはないだろうけど、なんか比較の対象になりようがないというか、歌手をたとえに出すのはなんだから、このワタシだな、仮にワタシがバレエダンサーと同時に舞台に立ったとしよう。そのときの光景をたまたま通りかかった地球外生命体が観察したとしたら、おそらくワタシとダンサーたちは同種族の生命体とは認識されないはずだ。「あ、なんか一匹ブタみたいな生物が混じってるぜ」くらいに思われても文句は言えない。それほど違う。
●人類ってこんなに優美な動きができる種族だったのですね……と感動しつつ、ワタシはこう思わずにはいられなかった。彼ら彼女らは歌をうたえないのか! あのシルヴィアにイゾルデを歌わせ、アミンタにトリスタンを歌わせるというのは人類の見果てぬ夢なのかっ! ああ、もう遺伝子工学でも何でも使って視覚と聴覚を同時に美であふれさせる新型人類を誕生させてくれ。
●が、ムチャである、それは。のび太が泣いてドラえもんに懇願しても不可能なレベル。オペラが観たいし、すばらしい音楽を聴きたい、しかしバレエの美しさを目の当たりにすると、オペラの舞台が色褪せる。せめてオペラにバレエを入れよう。19世紀のオペラ座の聴衆がグランド・オペラに対してバレエ・シーンの挿入を求めたのは、こんな気分になったからなんだろうか。

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