●行ってきました、METライブビューイング今季最終作ロッシーニの「アルミーダ」。メットでもこれが初演という作品で(テノール6人必要ってなんだそりゃ)、ワタシはなんにも知らずに予備知識ゼロで観にいった。ルネ・フレミング(アルミーダ)、ローレンス・ブラウンリー(リナルド)、メアリー・ジマーマン演出、リッカルド・フリッツァ指揮。あれ、リナルドが出てくるの? アルミーダって魔法使いなのか。これ、魔法オペラなんすね。同じ題材で書かれたヘンデルの「リナルド」を比較的最近BCJの公演で観たばかりではないか。メアリー・ジマーマン演出の舞台はカラフルな見世物小屋マインドにあふれてて秀逸。楽しい。
●本来終幕で出てくるらしい黙役の「愛」(姿はキューピッド。少女が演じる)と「復讐」(マスクを被った死刑執行人)が最初から出てきて、説明的な演技をしてくれるのも成功してる。尻尾が矢印になってる「いかにも悪魔です」な冥界の住民たちもキッチュでクール。十字軍の勇士が義務と愛の狭間で葛藤するなんていう辛気臭い話には、こういう過剰さにあふれかえった舞台が必要なんだろう。
●とはいえ、これ、1幕は話がわかりにくいと思わないっすか。あと終幕は物語的に尻切れトンボ感全開。アルミーダ役もリナルド役も難役だろうに、おまけにロッシーニを歌えるテノールが6人必要(一人二役すれば減らせる。この日も降板があって5人に減っていた)とか、そりゃ上演されないだろうなと納得。舞台もアイディアが乏しかったら悲惨なことになりそう。
●で、ヘンデルら多くの作曲家が題材にした「リナルド」もの(「解放されたエルサレム」由来っての?)ではあるけど、ヘンデルの「リナルド」と同じ物語という気はしなかったな。なぜかっていうと、主役が魔女アルミーダだから。アルミーダが主人公というか、もっといえばルネ・フレミングが主人公で彼女のためのオペラというか。1幕の終盤で唐突に魔法を使うんだけど(あれ可笑しい)、古典的な「魔法の杖」(指揮棒?)を取り出してきて魔女っ子モードに入って、ルネ・フレミングはこれをとても楽しんでるっぽい。女子はみんな魔女っ子になりたいにちがいない。そして2幕で衣装を着替えて登場する。コスプレなのか。ステキ! ああ、オレも女子に生まれたら魔女っ子になってコスプレしたかったぜ……。はあはあ。ん?
●すばらしいと思ったのは2幕。舞台は美しい魔法の庭園(本当は冥界の魔物が作り出した幻影だ)。この幕はストーリーがほとんど動かず、歌の出番も少なく、大半がバレエで埋められる。見とれてしまうほど美しい妖精たちが踊る(ああ、高解像度画質ってすばらしい)。アルミーダが骨抜きにされるのもよくわかる。夢のような楽園だ、一生ここで過ごしたい。ダンサー、みんなきれい。そんな眼福シーンをたっぷりと見せてくれた後で、チュチュをつけた男の魔物たちが出てきていっしょに踊る。いやー、物事の本質を突くときには笑いを一緒にセットにするってのが大事だよなあ。完璧。
May 26, 2010
METライブビューイング「アルミーダ」~魔女っ子ルネさんコスプレショー
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