●6月4日(金)はサントリーホールでジャン=クリストフ・スピノジ指揮新日本フィルへ。スピノジ圧巻。ハイドン、ロッシーニ、モーツァルト。
●このフランスの指揮者&ヴァイオリニストの名前を最初に知ったのは、NaïveのVivaldi EditionのCDで。ヴィヴァルディのオペラ「グリセルダ」や「オルランド・フリオーソ」でアンサンブル・マテウスとの鮮烈な演奏を耳にしたのがきっかけ。古楽界にまた新たなタレントが出てきたなと思ったら、どんどん活躍の場を広げ、もうスカラ座デビューも決まっているんだとか(あと今年のBBC Promsにも出ます)。去年新日フィルの新シーズン・プログラムが発表されたときに一公演だけスピノジの名前が載っているのを見て「うおっ」とのけぞった。
●で、プログラムは自分のやりたいものをやりました感、全開。ハイドンの交響曲「めんどり」とか「熊」がメインなんすよ。スピノジは超アグレッシヴで感情表現は猛烈に豊か、こんなに演劇的で描写的な指揮をする人は初めて見たというくらい。「めんどり」の第1楽章ってまさに描写的なめんどりの音楽なんだけど、指揮者までクビを前後にコキコキ動かせてめんどり化してるんだから(笑)。でもそういった過剰なくらいの表情付けがちゃんとオーケストラに伝わっていて、音楽に躍動感があふれていた。悪戯小僧がそのまま大人になったようなキャラで、仕掛け満載。「めんどり」第2楽章でアクシデントがあってスピノジの顔からどっと汗が吹き出る場面があったんだけど、そこで思いっきり動揺しつつも、だんだんと持ち直して、しまいには汗かきをネタにしてしまうのも立派。
●「熊」の終楽章で客に終わったと思わせて実は終わってませんでした的なワナが仕掛けてあった。きょうびの聴衆は簡単にワナには引っかかってくれない(情報の伝達速度は速く、ネタはかなりのお客にバレている)。そこでスピノジは二重、三重、四重くらいにワナを仕掛けた。それ、ドリフだよ! サービス満点。たぶん、こういうのは嫌いな人はとことん嫌い。でもこの日のお客さんはみんな喜んでいたのでは。ワタシも心底楽しんだ。
●いち早くスピノジを招いた新日フィルはスゴい。ただ、お客さんは入ってなかったんすよ、惜しいことに(業界関係者は大勢いた)。そしてせっかくの初来日に公演はこの一晩のみ。うーむ。次の機会はあるんだろうか、生スピノジ。映像で見るとこんな感じ。ビーバー「バッタリア」、ヴィヴァルディ「グリセルダ」シンフォニア。
June 8, 2010
スピノジ祭り
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