●ワールドカップの合間に「ワールドカップは誰のものか―FIFAの戦略と政略」 (後藤健生著/文春新書)。これはまさに今読んでおくべき良書。ワールドカップがなぜ南アフリカで開かれることになったのか、またこれまでの大会開催を巡るFIFAの権力闘争や政治権力の介入について、すっきりと見通しよく解説してくれる。特に南アフリカのスポーツ史、黒人サッカー史の部分はまるで知らないことばかりで、今大会を見る目が変わる。知ってたこと、曖昧にしか知らなかったこと、ぜんぜん知らなかったこと、どれを読んでもおもしろい、後藤健生氏の書くものはみんなそうなんだけど。読みやすい文章も吉。一息で読める。
●かつて南アのサッカー界では白人の観客のための白人選手によるリーグと、アフリカ人のリーグが別々に運営されてたんだけど、そこにビジネスの論理が入ってきて、大企業はより投資効果の見込めるアフリカ人のリーグに投資するようになったとか、80年代にはアフリカ人が白人のクラブを買収したなんていうんだから、アパルトヘイトなんていうのは興行的にもうまくいきようがなかったというのがよくわかる。
●あと、ワタシはよくわかってなかったんだけど、「アフリカーンス語」はアフリカにやってきたオランダ人たちの言語がアフリカ化したものということだったんすね。南アにおけるオランダ系とイギリス系の違いであるとか、そこからどうフットボールが発展してきたのかなど、非常に興味深い。そしてそんな歴史を経て、今そこでワールドカップが開かれているという現実。南ア代表にも(少しだけ)共感度が増す。もう史上初の開催国グループリーグ敗退が濃厚になってしまってはいるが。
June 18, 2010
「ワールドカップは誰のものか―FIFAの戦略と政略」 (後藤健生著)
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