●一ヶ月にわたったワールドカップを締めくくる決勝戦はオランダvsスペイン。2年前のEUROに続いて、今回も最後までスペイン国歌を聞くことになった。超FAQだが、スペイン国歌には歌詞がない。だから選手はだれも歌っていない(歌えない)。
●ヨハン・クライフは喜んでいるだろうか。スペイン代表はバルセロナの選手だらけでバルセロナのサッカーをしている一方、オランダ側にまでバルセロナ色が感じられる(キャプテンはバルセロナで長く活躍したファン・ブロンクホルスト、ファン・ボメルも元バルサ、ベンチにいるのはフランク・デ・ブール?)。
●で、派手な試合を期待していたら、蓋を開けてみればやっぱり「決勝らしい試合」、つまり息の詰まるようなロースコアの試合になってしまった。お互い勝てばW杯初優勝。どうしても勝ちたいという気持ちがぶつかり合うとこうなるのか。それにしてもオランダの守備の激しさはどうなんすかね。ラフプレイを連発。イングランドのハワード・ウェブ主審がこれに応えて気前よくカードを出す。延長まで行ったとはいえ、オランダに9枚、フェアプレイ優等生のスペインに5枚。延長後半のハイティンハまで退場者が出なかったのが不思議なくらいだ。というか、本来ならとっくに出ているはずだったのを、主審が「コントロールした」ともいえる。
●相手がオランダだろうと圧倒的にボールを保持できるスペインの技術は本当にスゴい。フットボール史上最高の巧さかも。前半はほとんどスペインがゲームを支配。ただし決定機は少なかった。
●後半はよりチャンスが増えた。ロッベンはいったい何度高速ドリブルを披露してくれただろう。一度、スナイデルだったかのスルーパスに抜け出て、完全にフリーになってシュートを打ったが、カシージャスが逆を取られながらも残っていた足で弾き出すというスーパーセーブを見せてくれた。オランダのステケレンブルフにも好セーブがあって、試合が締まっていた。
●スペインはペドロに代えて、ヘスス・ナバスを投入。これは効いていた。オランダもカイトをエリアに代え同様にサイドを攻めようとするが、こちらはもう一つ。延長に入ってからはPK戦の予感が高まっていたが、延長後半11分にようやくゴールが生まれた。相手ディフェンスがクロスを跳ね返したボールをセスク・ファブレガスが拾って、右に開いていたフリーのイニエスタにパス、これをワントラップして右足で力強くゴールマウスに蹴りこんだ。
●オランダの選手がここで主審に詰め寄っていたのはなぜなんだろう。オフサイドでもなんでもない。あるいは、このプレイに至る前の、本来コーナーキックになるボールをゴールキックと判定されたことを執拗に抗議していたのだろうか。試合後のオランダ選手のコメントに「主審がスペイン寄りだった」というものがいくつかあったが、到底そうは思えない。主審はたしかにいくつもミスを犯したかもしれないが、正しく笛を吹いていれば前半早々からオランダに退場者が出て、最後は8人くらいでプレイしたのでは? 一発レッド相当がイエローで済んだ場面もあった。オランダは「勝ちたい」という意欲が空回りして制御不能になっていたように見えた。
●スペインは初優勝。欧州勢が欧州大陸以外の大会で優勝したのも初めて。アフリカはサッカー的には欧州であると考えれば、自然なところに落ち着いたともいえる(同様に東アジアと北米は南米に属している、94年と02年の大会から察するに)。EURO2008に続いて優勝したんだから、今はスペイン(あるいはバルセロナ)の美しいパスサッカーの全盛期だ。世の中みんな「ハードワーク」とか「ショートカウンター」とか念仏のように唱えている時代に、ポゼッション重視のこんなチームが勝ち切るなんて。スペインは決勝トーナメント以降すべての試合を1-0で勝ったわけで、スコアを見ればやや華やかさに欠けた戦いぶりではあったけど、中身を見れば彼らだけがまるで別のスポーツをやっているかのような印象もあった。
●これでスペインは一区切り付くんじゃないかな。
●もう大会が終わったかと思うと寂しい。スペイン人とオランダ人以外はみんな決勝が始まる前から寂しくなっていたにちがいなく、全世界的にファンが寂しさを共有するのがワールドカップ。
July 12, 2010
ワールドカップ2010南アフリカ大会決勝:オランダvsスペイン
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