●レナード・バーンスタイン没後20周年企画第1弾としてリリースされたDVD「レナード・バーンスタイン/与えるよろこび」(ドリームライフ)を見た。1990年、札幌のPMF(パシフィック・ミュージック・フェスティバル)で、バーンスタインがシューマンの交響曲第2番を振ったときのリハーサル映像。バーンスタインはこの3ヵ月後、72歳で世を去った。
●この映像はかなり昔に見たような記憶がうっすらあるのだが(編集は違うかもしれない)、久しぶりに見てバーンスタインの容貌が衰えているのに驚いた。そうか、そういえば最晩年のバーンスタインはこんなだったのか……。記憶に残るバーンスタインがあまりにも輝かしい存在だったので、彼にこんな時期があったことをすっかり忘れていた。
●映像は主にリハーサル時の映像から構成され、それにバーンスタインのインタビュー等がさしはさまれている。本番の演奏場面は収録されていないのでご注意を。凝った演出などはなく、バーンスタインに焦点を当てたリハーサル映像の素材そのものを見るDVD。冒頭のセレモニーでバーンスタインがこんなことをしゃべっていた。「この年齢になると神が自分に与えた残された時間をどう過ごせばよいか、決断が必要になります。ベートーヴェンのピアノ・ソナタをまた全曲演奏するのか。ブラームスの交響曲全曲をまた指揮するか。作曲活動に専念するか。私はそう長い時間悩まずに決心しました。残された時間と精神力を教育に捧げよう、と」。
●その「残された時間」が非常に短いことをワタシたちは知ってこの映像を見るので、続くリハーサルはまさに命がけの場面に見える。若者たちを根気強く指導するのだが、ときどき咳き込んだり、表情にも疲労ぶりがうかがえたりで体調はよくない。しかしとても情熱的で、うまくいくとニコリと嬉しそうな顔を見せてくれる。すると、見てるこっちもなんだか嬉しくなる。
●インタビュー中に有名なセリフが出てくる。「自分は音楽家になるべきでしょうか、と訊ねられたら私はノーと答える。なぜなら、そう質問したからだ。質問する限り、答えはノー。禅の哲学みたいだね。音楽家になりたいなら音楽家になる」
●このDVDの後もバーンスタインの映像が続々リリースされるようで、今月下旬には「バーンスタイン+手塚治虫/ 雨のコンダクター~ハイドン:戦時のミサ」というタイトルが予定されている。バイエルン放送交響楽団を指揮した「戦時のミサ」ライヴ映像に、かつてFMレコパルに掲載された手塚治虫の短編「雨のコンダクター」が封入される。この作品にはバーンスタインが登場し、ハイドンのミサ曲「戦時のミサ」を振る場面が登場するということのようだ。
September 13, 2010
バーンスタインのDVD「与えるよろこび The Last Date in Sapporo 1990」
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