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September 24, 2010

「シューマンの指」(奥泉 光)

シューマンの指●同じ生誕200周年なのにショパンがあちこちで華やかに祝ってもらえるのに対して、どうしてシューマンはこうもジミな扱いになるんでしょかねー、と思っていたのだが、この本を読んで溜飲が下がった。これぞ記念の年にふさわしい快作。「シューマンの指」(奥泉光著/講談社)。もし「音楽小説」っていう言葉があるなら、この小説こそその呼び名にふさわしい。
●十代にして将来を嘱望される才能あふれる美少年ピアニストと、彼に憧れと畏れを抱く音大受験生の主人公の関係を描く。二人の関係はシューマンへの音楽的共感で結ばれ、かつてシューマンがそうしたように「ダヴィッド同盟」を結成したり、「音楽新聞」を発行する真似事をしてみたりする。二人の若者はシューマンを弾き、シューマンについて語る。これが小説という形態でしか成立しえないような美しく見事なシューマン論になっているところが並の小説とは違う。完全に脱帽。しかもシューマンが題材とされるのに必然性がある話なんすよね。唖然。
●読むとますますシューマンが好きになる。シューマン猛烈ラブ! ていうか、シューマン知らない人が読んでも平気なのかと心配になるほどの音楽密度の高さ。たまらずに読書中に「幻想曲」とかピアノ・ソナタ第2番とか、次々にシューマンのCDを取り出してしまった。この一冊をもって、シューマン・イヤーがショパン・イヤーを凌駕したのだ。ショパン聴いてる場合じゃないぜっ!

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