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October 26, 2010

ニコラウス・アーノンクール記者会見

アーノンクール
●ホテルオークラでニコラウス・アーノンクール&ウィーン・コンツェントゥス・ムジクスの記者会見。今回が最後の来日公演であり、最後の海外ツアーと明言するアーノンクール。単独取材には応じていないということもあってか、記者会見には大勢が来場。写真左よりアーノンクール、通訳の井上さん、エルヴィン・オルトナー(アーノルト・シェーンベルク合唱団芸術監督)。写真には写ってないけど、ほかにアリス・アーノンクール、ミラン・トゥルコヴィッチが同席。
●今回の来日プログラムはバッハのミサ曲ロ短調、ハイドンの「天地創造」、モーツァルトの「ハフナー」交響曲+「ポストホルン・セレナード」。前二者は器楽と合唱のために書かれた西洋音楽におけるもっとも偉大な作品を演奏したいということで選択。ロ短調ミサのような作品は、アーノンクールとウィーン・コンツェントゥス・ムジクスにとってもめったに演奏する作品ではなく、新鮮な気持ちで臨みたい、と。「ポストホルン・セレナード」については、モーツァルトが友人との別れに際して書いた曲なので、日本へさよならを告げるための曲として選んだという。
●アーノンクールは終始穏やかな様子で、時折表情豊かに大きな身振りで話す。古楽について。「50年前は自分たちのようなアンサンブルは存在せず、これはわれわれが始めたムーヴメントである。当時は古い音楽はつまらなく演奏されていた。しかしミケランジェロやベルニーニとともに演奏されていた音楽がどうしてつまらないのでしょう。ベルニーニの彫刻のもとでコレッリの音楽がつまらなく演奏されていたはずがない。私たちは古楽を正しく演奏しようという探究心から出発したのではありません。古楽への情熱、その豊かなテンペラメントを表現したいという思いから生まれたのです」
●「スペシャリズムというのは危険です。私たちは古楽を演奏するときはスペシャリストかもしれませんが、ブラームスを演奏するときはそうではない。ある特定の時代だけに焦点を当てることは音楽全体に対する客観性を欠くことになります。古楽器の演奏家とモダン楽器の演奏家の接点も増えてきた。あと一世代が経てば、同じオーケストラが古楽器も演奏したり、あるいは現代音楽を演奏したりというように、形が変わってゆくでしょう」(以上大意)
●配布された公演プログラムに載っているインタビュー記事もおもしろい。音楽家個人としての充実振りがうかがえると同時に、世界に対する悲観主義的な見方が色濃く出ている。「今日のわれわれに音楽はなにを与えてくれるか?」という問いに、「個人に対しては人を成長させる力を持つが、人類全体に対しては無力だろう」といったように。

アーノンクール指揮ウィーン・コンツェントゥス・ムジクス公演icon(チケットぴあ)

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