January 29, 2011

新日本フィル記者発表会、ブリュッヘンとの「ベートーヴェン・プロジェクト」および11/12シーズン・プログラム

クリスティアン・アルミンクとフランス・ブリュッヘン
●1月28日(金)、すみだトリフォニーホール大ホールにて新日本フィルの記者発表会が行なわれた。フランス・ブリュッヘンの指揮による「ベートーヴェン・プロジェクト」と2011/12シーズン・プログラムについて。記者発表の前にブリュッヘン指揮によるベートーヴェン「第九」&第8のリハーサルが公開され、またジャーナリストのほかに一般応募の参加者も多数招かれていた。前年も同様に一般参加があったが今回はぐっと人数も増え、しかもリハーサルも見学できたこともあり、楽団のオープンな姿勢が伝わってくる。
●まずブリュッヘンの「ベートーヴェン・プロジェクト」。こちらはすみだトリフォニーホールと新日本フィルの共同企画で、2月8日から19日にかけてベートーヴェンの交響曲全曲演奏会が開かれる。2年前、「ハイドン・プロジェクト」のために指揮台に立ったブリュッヘンが「次はベートーヴェンをやろう」とオーケストラに提案したことに端を発し、その後、すみだトリフォニーホールらの協力もあり実現にこぎつけたという大型企画。すでにこの日の時点でブリュッヘンが来日して、このホールでリハーサルが始まっているわけだから、ずいぶん大きなリソースが注ぎ込まれている。本番は交響曲第1番から第9番へと番号順に4回に分けて演奏されるが、リハーサルは「我々の行く先に何が待っているかを前もって知ることができる」ということで、まず第9番からスタートして第1番へと遡る。2年前の「ハイドン・プロジェクト」の財産はそのままオーケストラに蓄積されているようで、リハーサル二日目にしてすでに相当いい音が鳴り響いていて、「第九」終楽章冒頭などは軽く鳥肌モノ。76歳のブリュッヘンは実年齢以上に老いて見えてすっかり老師然としているのだが、オーケストラ側に求められるものを全力で表現しようという意欲がみなぎっており、本番への期待がぐっと高まってくる。
●壇上のブリュッヘンはゆっくりとだけどよくしゃべる。記者発表というよりは、大先生がベートーヴェンについてレクチャーしてくれるみたいな雰囲気に。しかもときどき脇道にそれる(笑)。講義の内容は主にハイドンとベートーヴェンの関係性や、ベートーヴェンの9つの交響曲それぞれが持つテーマなどについて。「ベートーヴェンの交響曲には興味深いパターンがあります。第1番でハイドンの交響曲から大きく飛躍した。第2番は少しだけ後戻りしました。第3番でまた大きく飛躍し、第4番で少し後戻りして、第5番でまた飛躍し、第6番で後戻り、第7番で飛躍し、第8番で後戻り、そして第9番で大きく飛躍した……」。いや、これ昔からいうベートーヴェンの奇数番号と偶数番号の対照を別の表現で言っただけなんすけど(笑)、ブリュッヘン先生がいうと「おおーー!」とか思ったりする。アルミンクが生徒役になってブリュッヘンに「質問していいですか」と手を挙げたりする和やかな一幕も。
●ブリュッヘン先生が披露してくれた話を。「チェリストのスティーヴン・イッサーリスが彼の父親から聞いた話なんだ。お父さんはロンドンに住んでいて、89歳で今も健在なのだが、昔、イッサーリスがまだ5歳だった頃に、オーストリアの田舎からウィーンに出てきて家探しをしていたそうだ。そこである家の大家を訪ねると、その大家は『私はもうあまりにも年老いているので、もうこの家は貸していない』といった。それでもと頼むと『わかった、じゃあ貸そう、ただし条件がある』とその大家はいう。『常に部屋をきれいにしていてほしい、部屋の隅で小便をしたり、床に唾を吐いたりしてはいけません、以前ベートーヴェンがしていたように』といったのです。私は逆算してみました。ベートーヴェンが下宿していた時期を考えると、その大家は当時103歳か104歳だったと思われます。彼は直接ベートーヴェンを知る最後のひとりだったかもしれません」。え、それホントかね。
●続いて2011/12シーズン・プログラムについて(リンク先はPDF)。今回も指揮者陣がすばらしく充実していて、音楽監督アルミンク以外にはダニエル・ハーディング、昨年圧倒的なハルトマン&チャイコフスキーを聴かせてくれたインゴ・メッツマッハー、待望の再登場となるジャン=クリストフ・スピノジ、そして初めて呼ばれるトーマス・ダウスゴー。ダウスゴーはアルミンクにとって、ぜひ呼びたい指揮者リストの筆頭にあった存在なんだとか。ダウスゴーはニールセン「不滅」他。アルミンク自身の指揮ではマーラーの初期大作「嘆きの歌」初稿版が目を引く。ほかにもフランツ・シュミットの交響曲第2番とか、エスケシュのヴァイオリン協奏曲日本初演とか。強烈。

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