February 6, 2011

ドゥダメル指揮LAフィル@ウィーン、マーラー9番

ドゥダメル/LAフィルのポスター●ウィーンへ。ドゥダメル指揮LAフィル欧州ツアーはムジークフェラインでマーラーの交響曲第9番。昨晩これを聴いてきた。彼らはセンセーショナルな大成功を収めたといっていいと思う。第4楽章が静かに終わった後、長い長い沈黙があって、その後客席はほとんど総立ち。オーケストラのメンバーが退出しはじめてもなかなか拍手が止まず、最後にいわゆる「一般参賀」があってドゥダメルがふたたび登場した。
●LAフィル(ロス・フィル)は圧倒的に巧い。もう信じられないくらいの合奏能力の高さとソロの巧さ。管が凄まじく達者なのはある程度予想通りとしても、弦もこんなにふくよかでニュアンスに富んだ響きが出せるとは。どう見ても世界最強水準の一角に食い込んでいる。
●とはいえ、このオケの躍進には前任者サロネンの功績特大のはず。マーラーの9番は多くの人にとって特別で大切な一曲だが、これを若い指揮者がどう振るのか。第1楽章がはじまったとき、オーケストラの水準の高さに感動する一方、もう一つドゥダメルが音楽の大きな流れを作っているという感触を受け止められずやや戸惑いも。生硬と言ってはいいすぎかもしれないのだが……。しかし第2楽章は強烈なコントラストをつけながら、がぜん生気にあふれた音楽に。グロテスクなユーモアが冴える。第3楽章は憤怒の音楽だが、猛スピードで吹き荒れる突風もこのオケは余裕で制御可能、スリリング、でも安心安全のスプラッシュマウンテン。で、第4楽章。カラヤンであれバーンスタインであれ、スタイルは違ってもこの楽章は彼岸の音楽として描いてきたと思うが、ドゥダメルはこれを熱のこもった生と美を礼賛する肯定の音楽として聴かせてくれたのだとワタシは解した。めったに体験できないような心動かされるマーラーに。
●曲が終わった瞬間、だれかが後方で「ゴトン」と重いものを落とす音が聞こえた。その瞬間に場内に「ああぁ」と怒気を含んだ深い溜息がいくつも発せられ、それから騒音で受けたダメージを取り返すかのように長い完全な沈黙が訪れた。あれは怖い。
●今晩これからもう一公演。ジョン・アダムズ、バーンスタイン、ベートーヴェン7番。

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27.01.2011 @barbican hall mahler: symphony no. 9 gustavo dudamel / lap ... 続きを読む

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