●正月に「年はじめにまず読む本は古典的価値を持つ絶対的な傑作にすべし!」と思い立ち、未読だったバルガス=リョサ代表作「緑の家」(岩波文庫)を手にした、もちろん猛烈におもしろいに決まっている、小説を読む醍醐味を存分に味わえる物語性の豊かさ、それでいてラテンアメリカ的な眩暈感をもたらしてくれる非時系列で進行するユニークな語り口。ペルー沿岸部の町と原始生活が残るアマゾン奥地を舞台にした都合40年にわたる人々の物語が描かれる。4つか5つくらいの話がバラバラに進行しているので、読みはじめは少し慎重に登場人物を追う必要があるが、話そのものは読みやすい。そしてすべてリアリズムの枠内で書かれている(というのが意外だった)。インディオから修道女となった女、町外れに「緑の家」なる売春宿を建てた放浪の歌手、密輸や盗賊を行う日系人、ゴム採取でインディオを搾取する地元のボス……。そんな人々の年代記。
●だが、ワタシがいちばんおもしろいと思ったのは、何族だったか忘れたが地面にペッペッペッペッと唾を吐きながら話すインディオが出てくるところで、なぜそんなに一生懸命唾を吐くのかといえば、彼らの身体言語において唾を吐くことが「ウソをついていない」ことを示すからだ。いいぞ、これは。人は本当のことをいうときは唾を吐きたくなるものなのかもしれない。さっそく使ってみるが吉。
●使用例:編「今日締め切りのはずなんですが、原稿はまだですか?」。筆「いや、そのつもりで準備してたんですが(ペッ!)、家族が熱を出してしまいまして(ペッ!ペッ!)、でももう今晩には必ず仕上がりますから(ペッ!ペッ!ペッ!)」
February 11, 2011
「緑の家」(バルガス=リョサ著)
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