●風呂マンガである。第1巻では「いくらなんでもそんなマンガは続かんだろ」と思ったのだが、第3巻も猛烈に楽しんでしまった「テルマエ・ロマエ」(ヤマザキマリ著/ビームコミックス)。
●主人公である古代ローマのお風呂設計技師が、もののはずみで現代日本にタイムスリップして、お風呂大好きなニッポン文化からなんらかのヒントを得る。で、古代ローマに帰って、そのアイディアを応用して大人気公衆浴場を作って名声を得る。そんなムリヤリ感満載のパターンを忠実に繰り返しながら、3巻まで来てさらに強まっているってどういうことすか。うっかりすると繰り返して読んでしまうほどのおもしろさ。
●題名の「テルマエ・ロマエ」は「ローマの浴場」の意味なんだとか。ここで知る古代ローマ文化が興味深いっていう以上に、主人公が日本にタイムスリップして体験する銭湯とか温泉街とかみたいな昭和っぽいお風呂文化が懐かしいっていうのが魅力かも。読者は古代ローマ人に共感しながら日本のお風呂を再発見するという、アクロバティックな楽しみ方をしていると思う。
●これを原作に実写映画を作るっていうんだが、主人公の古代ローマ人役が阿部寛って(笑)。日本語をしゃべるんだろか。上戸彩演じるヒロイン役とかいうのは原作にはない、たぶん。
2011年4月アーカイブ
「テルマエ・ロマエ」III(ヤマザキマリ著)
LFJ開幕、「フランス的クラシック生活」
●あれこれあったが、東京のラ・フォル・ジュルネはオープニングセレモニーにたどり着いた。LFJ公式ブログにあるように、ルネ・マルタンも無事来日。東京国際フォーラムでの本公演より一足先に、丸の内・周辺エリアでは本日から無料公演がたくさん開かれる。いつもは音楽祭の規模があまりに大きいので、なかなか東京国際フォーラムの外に意識が向かないんだけど、今年は一度くらいは周辺エリア企画に足を運んでみてもいいかもしれない。
●音楽祭に合わせて「フランス的クラシック生活」(ルネ・マルタン著、高野麻衣解説/PHP新書)が刊行された。これはルネ・マルタンによるクラシック・ガイド本ということで、シチュエーション別にオススメの名曲を教えてくれる構成になっている。たとえば「昼休み、カフェで試験勉強」だったらベートーヴェンの交響曲第7番の第2楽章、「バーゲンセール」に臨むんだったらハチャトゥリアンの「剣の舞」とか。
●これは相当な離れ業でできた本なんすよね。というのも、ルネ・マルタンの著書となってるけど、実質的なテイストでいえば高野麻衣さんの本だから。日頃彼女の掲げる「乙女」であること、ガーリーなセンスで貫かれているから、こういう構成になる。そして、高野さんが書いているコラムがこの本では一番の読み物なんじゃないかな。この本の乙女な世界はオッサン臭さの対極にあるんすよ。オッサンというと悲しいから、男子っていうけど(笑)、「フランス的」とか「カフェ」とか「教会」とか「恋」といったキーワードは、男子からは出てこない。
●男子は、たとえば仮にワタシがルネ・マルタンとクラシックガイドを作ることになったら、まずどういう発想をするかというと、音楽史を切り口にしようと考えるだろう。だって、これまでのLFJのテーマは西洋音楽史を順番にブロックごとに埋めていくように設定されてるから。モーツァルトがあってベートーヴェンがあって、それからシューベルト、さらにショパンに名を借りたロマン主義(去年)、そしてリストの長い生涯を境目として続くポスト・ロマン主義(今年)、古典派の前はバッハのテーマでバロックを軽く一望しているし、国民楽派(民族主義)もやっている、だから今後彼はフランス近代やロシア音楽といったテーマをきっとやるだろうし、もし予算的集客的制約がなかったら、LFJ「戦後の音楽」とか「ルネッサンス期の音楽」とか「アメリカ音楽」をやりたいに決まっている。だからルネ・マルタン本は音楽史で大項目を立てておいて、小項目では彼のこれまでのアーティストとの出会いなんかを反映させるように考えよう、それからリヒテルとの貴重な思い出話がたくさんあるはずだからそれは別項目で押さえよう……等々、そんなふうに考えて、肉でもなければ魚でもないもの(©オシム)を作ろうとして失敗する。
●「フランス的クラシック生活」ではサティの「グノシエンヌ第1番」を紹介するために、大項目に「恋、そして人生」を掲げ、小項目に「つまらないデート、つまらないケンカ」を置く。つまりルネ・マルタンにデートのワンシーンみたいなものをしゃべらせているんすよ!すごく攻めてる。一見軽やかな本だけど、これは労作。肉あるいは魚になっている。
二期会「フィガロの結婚」ゲネプロ
●昨日は二期会の「フィガロの結婚」ゲネプロへ。宮本亜門演出、デニス・ラッセル・デイヴィス指揮東京フィルによる二期会創立60周年記念公演。本番は4/28,29,30,5/1(東京文化会館)。2002年の創立50周年記念公演で初演された宮本亜門演出が帰ってくる。関係ないのでたまたまだろうけど、音楽祭「ラ・フォル・ジュルネ」が開幕する頃に、その名の由来となった「ラ・フォル・ジュルネ(狂った一日)またはフィガロの結婚」が上演されるわけだ。
●稽古を見たにすぎないので、これが本番になってどんな風に生命力を吹き込まれるかは想像するしかないのだが、奇を衒うところのないオーソドックスな「フィガロの結婚」になるはず。今回の公演はチケット価格が通常公演に比べてかなり安価に設定されているので、オペラになじみの薄い人が初めて実演に接するのにも適している。なにしろモーツァルトの「フィガロの結婚」は超ウルトラ名作だから。オペラを聴かない人でも、モーツァルトが好きなら絶対に一度は観ておくべき。オペラの楽しさと困難さを両方味わえると思う。
●と言いつつ、久々に通して「フィガロ」を見て改めて思ったんだけど、この作品って音楽的には最強に強まって対聴衆的にフレンドリーな一方で、話の筋ってすごくわかりにくいっすよね。いろんな解説に「一日に起きる出来事」って書いてあるけど、ワタシはこれが一日の出来事とはぜんぜん思えないもの。時間軸が行方不明になってるみたいな感じがして。スタートは朝なの? あの二人は朝早くからベッドのサイズを部屋で確認してるわけ? こんなに一日に人の出入りがあって(結婚式まである)、みんなどんだけアクティブな人種なのよ。
●たぶん本来的にこの物語の「目玉」となるおもしろさは「人の入れ替わり」のはずじゃないですか。男が(ホントは女だけど)女の格好をする。奥様だと思ったら女中だった。女中だと思ったら奥様だった。クスクス……。でもこれが現代的視点だとおもしろくもなんともない。客席は「はぁ?声でわかるだろ」的な容赦ないリアリズムを捨てきれないので。そして本質的テーマである階級の対立も、今の時代なんらかの工夫なしではコンテクストが失われて伝わりにくい。ということで、エロス的側面を過剰に強調するという方法論が有効な選択肢として生き残るとは思うんだが(←宮本亜門演出はそうじゃないっすよ)、なんだかな、それもどこか気鬱な感じがしてしょうがない。じゃ、なんならいいのか。そう考えると「フィガロ」は最難関オペラのひとつって気がする。
カンブルラン指揮読響でヤナーチェク
●ふたたびカンブルラン指揮読売日響へ(25日サントリーホール名曲シリーズ)。今日はチェコ由来の演目ということで、またしても特盛り感マックスのプログラム。モーツァルトの交響曲第38番「プラハ」、ヤナーチェクの狂詩曲「タラス・ブーリバ」、後半にスメタナの交響詩「モルダウ」、ヤナーチェクの「シンフォニエッタ」。オケは大変だと思うが、聴くほうにとってはサービス満点(さらに今回も震災の犠牲者に捧げるとしてメシアンの「忘れられた捧げもの」から「聖体」が演奏された。被災者招待があった)。
●スメタナの「モルダウ」が聴いたことのないような快速テンポで演奏されてびっくり。悠然と流れる大河じゃなくて、怒涛の急流だ。源流からこんな勢いよく水が流れ出てたのかっ!的な愉悦。まさか「モルダウ」でこんなに楽しませてくれるなんて。キビキビ演奏されて辛気臭さゼロの「モルダウ」。
●でも圧倒的に楽しいのはヤナーチェクの2曲。大編成の管弦楽が生み出す眩暈、色彩的で輝かしくて、異国的で謎めいていて、いつ聴いても失われることのない新鮮さ。もう今にも怪獣出てきそうな音楽。ていうか曲名からして怪獣っぽくないすか、ヤナーチェク。不思議怪獣タラス・ブーリバ! みたいな。魔獣グラゴルとか妖獣イェヌーファとかいて、大ボスが交響聖獣シンフォニエッタとか、そういう体系。好演に軽く鳥肌が立つ。
●シンフォニエッタが終わって客席から盛んにブラボーの声。客席からカンブルランへの拍手が暖かい。
山田和樹指揮日フィル第629回定期演奏会
●22日(金)、サントリーホールで新ヤマカズこと山田和樹指揮日フィル。もともとインキネンが来日するはずだったのがキャンセルとなってしまい(ああ……)、代役でなんと山田和樹。曲目も変更。
●マーラー「花の章」、モーツァルトのクラリネット協奏曲(伊藤寛隆独奏)、マーラー交響曲第4番。最初の「花の章」から「えっ!?」という驚きがあったんだけど、特にマーラーの4番は出色の出来。こんなに整理整頓された洗練された響きがこのオーケストラから聞こえてくるなんて。というのも、前にインキネンで同じくマーラーの「巨人」を聴いたときは、大音量の力演で客席もわいていたんだけど、制御外の荒々しさにマーラーのおもしろさをうまく見つけられず困惑していたのが、代役で指揮者が変わったことで(まだ関係も浅いはずなのに)こんなに響きが違ってくるとは。細部まで彫琢されてて、これこそ今のマーラー。断然楽しい。たとえるなら一週間ぶりにシャンプーしてすっきりした爽快さ(←なにそれ)。美しくなきゃマーラーじゃない。この人が指揮台に立ったらどんどんオケがよくなるんじゃないか、もっと振ってほしい、とみんなが思った結果が欧州と日本で「行列ができる指揮者」状態。疑いようのない才能っていいなあ。
-------
●「東京・春・音楽祭」から演奏会の動画が公開中。ズービン・メータ指揮NHK交響楽団のベートーヴェン「第九」、尾高忠明指揮読売日響のマーラー交響曲第5番他。
LFJの新しい公演プログラムが発表!
●昨日、仕切り直しとなったLFJの新しい公演プログラムがついに発表! 今のところPDFが乗っているので、以下にリンクを。ホールC、D7、G402、G409、よみうりホールと有料公演の会場は5ヶ所のみだが、どうだろう、思ったよりもたくさんの公演が開催されるのでは? 「タイタンたち」というテーマも保存されていて、しっかり「ラ・フォル・ジュルネ」になっているではないか。ルネ・マルタンは「タイタン復活!」の一文をKAJIMOTOのサイトに寄せている。「有料公演だけでも全90公演、ヨーロッパからのアーティストも100人以上来日してくれることになりました。ラ・フォル・ジュルネのエスプリは揺らぎません」と力強く復活宣言してくれている。
●さて、内容を吟味しなければ。ホールCは約1500席、で、今年から新たに加わることになったよみうりホールが1100席。あとの3つはかなり小さな会場で、もともとのプログラムが生き残ってすでにチケット販売が終了している公演もある。こうなるとよみうりホールの重要性がにわかに高まってきた。
●予定になかったフランク・ブラレイの名前が見えるというサプライズあり(!)。ルイス・フェルナンド・ペレス、ヴォーチェス8が残ってくれたのは朗報。金沢、新潟、びわ湖、鳥栖のほかのLFJの変更情報と見比べてみると、「日本には来てくれるんだけど、東京には出演しない」というアーティストもいるので、東京にいないからといって来日をキャンセルしたとは限らない、念のため。
●チケットのフレンズ先行販売は今日からもう始まってて、4月24日(日)23:59まで受け付けて抽選販売(一般販売は4月27日)。5000人のホールAがないので総座席数は大幅に減った一方で、チケットは超短期の販売、情報を周知するための時間も足りない。なので混むのか空くのかぜんぜん予想がつかない。ただ、ホールAがないんだから、どう転んでも開催当日の会場にいる人数は減るはず。少しゆったりした雰囲気になるのかなあ?
録画予約済
●今日って「ラ・フォル・ジュルネ」の新プログラム発表が予定されてる日っすよね。ドキドキ。
●本日の深夜24時20分からの「タモリ倶楽部」(テレ朝)はなんと「フルトヴェングラー生誕125年記念クラシック名盤『(秘)音』鑑賞会」がテーマ。ゲストに「レコ芸」等でおなじみ、音楽評論の満津岡信育さんが出演される。これは必見。録画予約をセットしておかなきゃ。
●LFJ鳥栖の本公演は5月6日と7日。で、8日はサガン鳥栖のホームゲームがあるんすね、ベストアメニティスタジアム(鳥栖スタジアム)で鳥栖vs大分戦。ふーむ、なかなか強力な3日間だ。
●大分サポは早めに遠征してベートーヴェン聴くのも吉。
マイ超能力
●宅配ボックスってあるじゃないすか。ワタシは大変重宝しているのだが、不在時にも宅急便など受け取れる便利なロッカー。ウチにあるのはシンプルな仕組みのヤツだ。配達員さんが荷物をボックスに入れる。4桁の暗証番号を登録する。暗証番号を不在票に書き込んでポストに入れる。これでOK。ワタシはその暗証番号を打ち込んでボックスを開けるんである。
●先日、いつものように宅配ボックスを開けようと不在票に書かれた番号を打ち込んだ。えーと、8357……と。ピーッ! あれ、開かない。入力まちがえたかな、8357……ピーッ! うわ、やっぱり開かない。うーん、どうしよう、なんで開かないんだ。もう一回ゆっくりと、8357……ピピーッ! くっ、エラーになってしまった! これは3回続けてまちがえるとしばらく入力を受け付けないタイプなのか。さて困ったぞ。
●配達員さんは宅配ボックスを使用するときに、毎回「今日の暗証番号は何にしようかな~♪ まずはラッキー7の7で始めて、次は好きなブルックナーの交響曲の番号ということで5、それから次は……」とイチイチ好みの暗証番号を考えるわけではない。配達員さんにもよるが、荷物の伝票番号の一部から4桁を引っ張ってきて暗証番号に設定している人が多い。で、伝票番号を確認してみると、やはり8357となっている。だが、8357では開かなかったのだ。運送会社に電話で問い合わせたところで意味はない。彼らは8357のつもりでセットしたんだから「伝票番号の数字を打ち込んでくれ」というだろう。どうしようかな、これ、仕事で使う資料だからすぐ必要なんだけど、うーん、うーん、うーん。
●しばらくするとエラーによるロックが解除され、宅配ボックスは再度番号の入力が可能な状態になっていた。これ以上8357を繰り返し入力しても開くことはない。ならば。気持ちを落ち着かせて、精神を集中した。ワタシはゆっくりと別の数列を打ち込んだ。8537。
●ピポッ! 開いたよ、宅配ボックス。おのれは鬼神か。
ラ・フォル・ジュルネ開催に寄せるルネ・マルタンのメッセージ、各地のLFJ
●昨日、ラ・フォル・ジュルネ開催に寄せるルネ・マルタンのメッセージが公開された。これは一読の価値あり。以下引用。「皆さまご存知のとおり福島原発の事象評価尺度が、チェルノブイリに並ぶレベル7に引き上げられました。このニュースは即座にヨーロッパ中を駆け巡り、ヨーロッパはパニックに陥りました。ラ・フォル・ジュルネに出演を予定していたアーティストたちも例外ではありません。私の許に次々と不安を訴え、日本への渡航をキャンセルしたいという連絡が届きました」「私はすぐさま東京の梶本社長やKAJIMOTOのスタッフと何度も何度も連絡を取り合い、日本の状況が決して絶望的ではないということを知り、祈るような気持ちで日本の実情をすべてのアーティストに伝えました」「しかし、事態はまた大きく変化しました。一旦は渡航を断念したアーティストたちから、再び日本に行くことを決意したメールが次々に届いたのです。アーティストたちは帰ってきてくれたのです」。
●東京国際フォーラムによれば、4月22日(金)をめどに新公演プログラムが発表される。使用会場は東京国際フォーラムのホールC、ホールD7、展示ホール、地上広場他、よみうりホール、東京ビルTOKIAガレリア。つまり5000人のホールAとホールB5、B7が使えないようだ。しかし今年から新たに使用されることになっているよみうりホールも含まれていて、当初覚悟していたよりは会場数が多い。詳細は22日を待ちたい。
●それから東京以外のラ・フォル・ジュルネももちろん開催される。金沢、新潟、びわ湖、鳥栖、それぞれ来日不可となったアーティストの分の公演についてのみ、いったんチケット販売休止として新しい出演者・演目を調整中の模様。これを見た限りではヴュルテンベルク管弦楽団は来ないけど、シンフォニア・ヴァルソヴィアは来日してくれるみたいっすね。
●LFJ鳥栖は北九州新幹線開業で九州初のLFJとして今年から開催されることになったわけど、いきなりこんなタフな展開を迎えようとは。しかし「会場に九州グルメロードが出現!」とか、B級グルメ方面に全力でローカル色を発揮してくれているのが頼もしい。てか、福岡の「飯塚伝説ホルモン」って何なの(笑)。個人的には福岡・焼きカレーに東京のLFJ屋台村進出を果たしてほしい。
カンブルラン指揮読響第503回定期演奏会
●「今、この日本にいることを嬉しく思う」といって来日してくれた読響常任指揮者カンブルラン。基本、この人はカッコいいっすよね。そして前にも思ったけど、今回もサービス満点のプログラム(サントリーホール)。プロコフィエフ「ロミオとジュリエット」抜粋、ラヴェルのピアノ協奏曲、休憩を挟んで同じくラヴェルの左手のためのピアノ協奏曲とボレロ。ラヴェルを両方弾いてくれたのはロジェ・ムラロ。で、冒頭にまず震災の犠牲者を悼んでと演奏してくれたのがメシアンの「忘れられた捧げもの」から「聖体」。本領発揮。ムラロもアンコールとしてメシアンのプレリュードから一曲弾いてくれたので、ただでさえ盛りだくさんのプログラムがさらに強まる特盛マウンテン状態。頼んでもいないのにライスをてんこ盛りにしてくれる食堂のおばちゃんみたいなお得感。
●後半のプログラムが楽しかった。ムラロは長身痩躯剃髪、下肢が長くて風貌は怪人系。鬼気迫る「左手」は圧巻。この曲をほぼメイン・プログラムのようにして聴くチャンスはあまりないのでは。オケもよかった。この曲はワタシにとってはラヴェルの中では例外的に苦手な曲で、非常にシリアスで強迫的なんだけど、どこかからは歪んだ笑いもあるはずでその境界が判然としないというか、特にあの唐突なフィナーレはどう受け取ったらいいのか困惑するばかりなんだが……ダサカッコいい、のかな。
●最後は爽快にボレロ。いつも聴く前まではどちらかというと憂鬱な曲なんだけど(耳にする機会は多いし、あれこれ心配だし)、聴くと猛烈に気分が高揚する、ウヒョー、ボレロ最強ーって叫びたくなるくらいには。
ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン2011、プログラムを白紙にして内容を全面変更へ
●15日(金)に発表されたように、今年のLFJ東京はいったんプログラムを白紙にすることになった(→全有料公演チケットの払い戻しについて)。予定していたアーティストの来日キャンセルが相次いだこと(福島第1原発事故の国際原子力事故評価尺度がレベル7に引き上げられた12日以降、キャンセルが急増したと報道されている)、いくつかのホールに電気系統の不具合が見つかったことが原因だという。そして、企画をすべて練りなおして、今週には新しい内容が発表されるようだ。
●大型連休の音楽祭の内容が、4月の半ばにもなってひっくり返ったのだから、これはもう大変なことだ。大地震の後、「ラ・フォル・ジュルネは無事開催されるのか」と多くの人が(もちろんワタシも)気をもんでいたと思う。開催に向けてすべての準備が進んでいたし、チケットが一般発売され、公式ガイドブックの編集も終わり、これは大丈夫だろうと確信していたところで、レベル7。最初にプログラムが白紙になると知ったときは愕然とした。震災が音楽界に与える影響の深刻さみたいな大きな観点から衝撃を受けたというよりは、個人的な喪失感が半端じゃなかった。この数ヶ月、ずっと「タイタンたち」と向き合ってきたのに……。
●しかし、音楽祭は中止になるわけではないんである。普通、このタイミングでアーティストの大量キャンセルが出たら中止にするしかなさそうなもの。それを、とにかく新しい企画をできる範囲で組み上げてすぐに(時間がないから「すぐに」しかないわけだが)発表するというんだから並大抵のことじゃないだろう。もちろん新しいプログラムの規模や内容がどれほどのものになるのかはわからないのだが、それでも「何もやらない」のと「やれることをやる」では天と地ほど違う。この音楽祭に限らず次々とアーティストの来日中止が続き、「いま自分たちは深刻な災害下の国に住んでいる」と再認識しないわけにはいかないが(東京の放射線量の測定値はナントより低いくらいなんだが、そういう問題ではない)、LFJは大打撃を被りながらも、とにかくやるんだという構えを見せてくれている。きっと新しいプログラムについても、なにかすぐれたアイディアを披露してくれるんじゃないかと期待している。
METライブビューイング「ランメルモールのルチア」
●METライブビューイングでドニゼッティの「ランメルモールのルチア」。メアリー・ジマーマン演出。これは前にネトレプコ主演で上映されてたみたいなんだけど、そちらは見逃したので今回がはじめて。ナタリー・デセイのルチア、ジョセフ・カレーヤ(カレヤ)のエドガルド。カレーヤは前に新国立劇場の「愛の妙薬」でネモリーノを歌ってるのを聴いている。甘めの美声で本当に耳に心地よい。この日もデセイのルチアを食いかねないほどで、大喝采を浴びていた。まだ若いと思うけど、大スターになるのかも。できることなら、あと少し痩せてくれれば最高。
●デセイの「狂乱の場」はもちろん圧巻。ドニゼッティの悲劇のはずなのに悲劇性の希薄な(と感じるんだけど)音楽がずっと続いた後に、3幕でこんな異様な場面があらわれて、突如劇場の空気がガラリと変わる。こういうのって舞台ならではのおもしろさだよなあ。
●ルードヴィック・デジエのエンリーコも実に悪役らしくてすばらしい。これって幕間のインタビューでもデジエが示唆してたように、似たもの兄妹の話なんすよね。二人とも狂ってるんすよ。ただ一方は男に生まれ、もう一方はこの社会背景における「財産」として扱われる女性として生まれてしまったというだけで。
●でもそのジェンダーの部分に演出が焦点を当てすぎると、この物語の幻想性がスポイルされてしまう気もする。だって幽霊話だし。メアリー・ジマーマンの演出をどうたとえるべきか、なんかうまい一言があると思うんだが見つからない。3幕で、幽霊になったルチアを登場させるんすよね、ネトレプコのときもそうだったんだろうけど。幽霊ルチアがエドガルドにぴたりと添って、切腹を手伝ってくれちゃう。このジマーマンのセンスをどう感じるかってところで好みが分かれそう。それをやるんだったら、もっとやってもいいんじゃないか、とか。
●「ルチア」はオペラ的なお約束に立脚したオペラなので、リアリズム観点だと3幕でルチアが死ぬことについての説明がほしくなる。ルチアが発狂したのはわかったけどさ、どうして発狂すると翌日に死ぬことになるわけ? 死因はなんですか、ドクター、みたいなオペラ的謎の死。そしてエドガルドは切腹したのに、その後も朗々と歌い続ける。どこで呼吸してるのー!とか。しかしジマーマンがルチアの幽霊を登場させたところでワタシは気づいたんだけど、これは実は3幕に入った時点でエドガルドはすでに死んでいたと考えればいいんじゃないか。現実世界ではエドガルドはエンリーコと決闘をして死んでいる。そしてエドガルドは幽霊になって、ルチアの死を知る。ルチアの霊が見えるのはすでにエドガルドも幽霊だから。もう死んじゃってるので、腹を切っても平気で歌っていられるのにも説明が付く。そういうオチ。
●っていうか、それじゃジマーマンじゃなくてナイト・シャマランだろ!
プラシド・ドミンゴ・コンサート・イン・ジャパン2011
●大地震から一ヶ月以上経った今も次々と海外のアーティストの来日中止が伝えられるが、ドミンゴは「日本の人々の深い悲しみに寄り添うために」と予定通り来てくれた。来日したとたんに、余震が活発になってしまってなんだか申しわけない気分にもなるが、大スターが今こうして日本で歌ってくれることのありがたさを昨晩ほど痛感したことはない。共演のソプラノはアナ・マリア・アルティネスがヴァージニア・トーラに変更(容姿端麗でチャーミング)。豪華プログラムに一枚彼女のプロフィールページが挟まれていた。伴奏はユージン・コーン指揮日本フィル。
●前半はヴェルディ作品。MET等で話題になった「シモン・ボッカネグラ」からシモンとアメリアの二重唱、「トロヴァトーレ」からルーナ伯爵のアリア「君の微笑みは」といったバリトンのレパートリーと、「オテロ」の「オテロの死」など本来のテノールのレパートリーを織り交ぜて。後半はオペレッタが中心。ドミンゴは到底70歳とは思えない朗々たる歌唱、そしてカッコよさ。アンコールに入ってマスカーニ「友人フリッツ」から「さくらん坊」の二重唱、「ベサメ・ムーチョ」らが歌われると客席は大いに沸き、さらに岡野貞一「ふるさと」が客席といっしょに歌われると場内総立ちに。最後はララの「グラナダ」でシメ。ドミンゴからは大スターのオーラに加えて、人柄のよさ、親愛の情みたいなものがにじみ出ていて、存在そのものがお客さんの心を動かしていた。ホールを出て時計を見たらもう10時で驚く。3時間があっという間に感じられた。ドミンゴの貫禄、美しい花で彩られたホール、あでやかな着物美人による花束贈呈……。たまたまそういう日だったのか、「繁栄へのノスタルジー」みたいなものを仮想的に(きっと過剰に)予感してしまった。
昨日の余震68回
●昨日の朝も地震があった。いったんは余震もほとんどなくなったかと思っていたら、ここのところまたかなり大きな余震が続いている。311の前だったら十分大きな地震と感じられたものが今や余震と呼ばれているんだから……。地震情報を見ればわかるように、一日中大小の地震が続いている(←これ尋常じゃない頻度っすよね)。昨日は大きいのが3回あったということか。
●午後はスタジオに入ってFM PORTの番組収録をしていた。ブースの中に一人入ってヘッドフォンをしてしゃべっている時にグラグラ。ここの扉、防音仕様で二重になっているんすよ。こういうときはサクッと扉を開けるべきか。東京では震度3と揺れは大したことはなかったのだが、長く続いたのが不気味だった。福島は震度6弱。もう言葉もない。
●去年、ミューザ川崎のネルソンス指揮ウィーン・フィルで公演中に地震があったんすよね、モーツァルトの交響曲第33番の第2楽章で。あのとき、ネルソンスとウィーン・フィルは平然として演奏を続けてくれた。客席も動じなかった。今同じことが起きても同じようにできるだろうか。
ネットで聴くLAフィル
●前にhttp://www.facebook.com/iiozineのほうでもご紹介したが、今年もLAフィル(ロス・フィル)のライヴをFM局KUSCが毎週オンデマンド公開中。各一週間の期間限定。第一週はドゥダメルによるメシアン「トゥーランガリラ交響曲」(公開終了)、今週はパブロ・ヘラス=カサド指揮&ピーター・ゼルキンのピアノでストラヴィンスキー、武満他。一週間限定というのがやや短いけど、大変強力なラインナップでかなり楽しい。
●メータ/N響の「第九」は所用あって、公演にも行けず、ネット中継も見られず。残念。ネット中継のほうは9.90ドルという設定で(全額被災地支援に寄付)、決済にはPayPalが使われていた模様。PayPalはワタシもベルリン・フィルのDCHの支払いなどで利用している。日本人向けサービスで「PayPalでドル建て決済」がすんなり受け入れられているところが感慨深い。
●昨日、また地震。東京は震度4。比較的長く揺れた。いったいこれがいつまで続くのか……。いったん余震は収まったように感じた時期もあったが、311から約一ヶ月、また活発になってきている。そういえば昨日は早朝の揺れで目が覚めたのだった。これより酷い目覚ましを思いつかない。
内側をお掃除
●大地震から一ヶ月が経ったというのに、あの日バラバラと本棚から落ちたあれやこれやをいまだに片付けていない。CD棚はぜんぜん平気だったんすよ、なぜか。でも本棚は棚板の奥と手前に二重に本を置いて、手前のヤツが棚からはみ出ていたりとか、空いたとこにボサッと積んだりとかしてたので、もともと落ちて当然の状態だったんすよね。大した量じゃないので、やればすぐ片付くはず。でもその気力がわかない。
●その代わり、急にパソコンの掃除をしたくなった。ソフトウェア的な掃除ではなく、物理的な掃除。今のデスクトップPCは購入以来一度も中を開けていない。中はホコリだらけに違いない。本体カバーを開いてみたら、やっぱりホコリがわんさか。「ほーら、奥さん、お宅のPC、外はピカピカでも筐体のなかはこんなにホコリだらけ!」(←小林製薬風の仮想的CMが脳内再生される)。一生懸命きれいにした。冷却用のファンが酷い。綿棒まで使ってしっかりきれいに。カバーをもとにもどして、Windowsを立ち上げたらフツーに起動した。特に高速になったわけでもないが(なったらいいのに)、ファンの音が静かになった気がする。気がするだけかもしれない。でも少しだけ気分がよくなった。せっかくカバー開けたんだし、なにか増設してみても良かったかな、と思わんでもない、ってあたりが一ヵ月後の春。
28日後……
●昨夜遅く、久しぶりに大きな余震があった。最初は小刻みな揺れだったが、なかなか収まらず、そこからグラグラと本格的に揺れだした。揺れている時間が長く、非常に不気味に感じた。これは明らかに大きな地震だろうと思いテレビをつけると、仙台などで震度6強。東北地方の多くが停電に。大きな津波はなかったようだが、恐怖だったに違いない。東京は震度3だったというが、揺れ方のイヤな感じが311を連想させた。やはり揺れている時間が長いと「もっと強い揺れが来るのではないか」と身構えてしまう。早くも忘れかけていた311直後の気分が戻ってくる。
●あ、今日で「28日後……」なのか。改めてゾンビ映画がいかに予言的であったかを思い知る。ゾンビになると他人も襲ってゾンビにしてしまうという怪物再生産な設定が。怪物と戦う者は自ら怪物とならないよう気をつけなければならない。てか、怪物となんか戦いたくない。いやもうオレも怪物なのかも。
●日本サッカー協会は南米選手権への参加を再検討中だとか。まだどちらともいえない。一方でスペイン代表の代替出場も打診されていて、これにはスペイン側が慎重な姿勢を見せている。コスタリカが出るという話も。
ロイヤル・オペラの「カルメン3D」
●以前少しご紹介したロイヤル・オペラの3D収録版「カルメン」が、日本でも今週末より映画「カルメン3Dオペラ」として全国で順次公開される(4/9~ ユナイテッド・シネマ他)。
●そう、3D映像なんである。3D映像で見るド迫力のオペラ。「アバター」「アリス・イン・ワンダーランド」を担当したrealDの技術提供によって、オペラ歌手がぼーんと立体的に見えるのだ! 「えっ、それ誰が喜ぶの?」という声も聞こえてきそうだが、百聞は一見にしかず、昨日プレス試写を拝見した。
●まず、入り口で「メガネ」を渡される。Real3Dの専用3Dメガネで、これをかけないと鑑賞不可。カメラはまず楽屋にいる歌手の映像を映し、続いて指揮者がピットに入って前奏曲が始まる。つまり、通常の舞台での公演を収録している(METライブビューイングなどと同様。ただし舞台裏の「オマケ」はない)。で、映像はもうたしかにスゴイい立体感。とにかく飛び出る(笑)。飛び出すカルメン、飛び出すドン・ホセ、飛び出すミカエラ、飛び出す字幕。3D映像だと現実以上に奥行き感が出るので、歌手が普通に演技しても十分に飛び出るんである(別に3D向けの演技をしているわけではない)。
●中身のほうだが、これ、誰が演奏してるのか気にする人いるんですか的な雰囲気もなくはないんだが、クリスティン・ライス(カルメン)、ブライアン・ヒメル(ドン・ホセ)、コンスタンティノス・カリディス指揮、フランチェスカ・ザンベッロ演出。METみたいにスター歌手をそろえて収録したわけではなく、かといってビジュアルで選んだというわけでもない。これ、同じ演出を以前に見たのを思い出した。ソニーのLivespireで公開された「カルメン」がこの演出で、そのときはヨーナス・カウフマンがドン・ホセだったんすよね。前奏曲の後半ですでに手枷をはめられたドン・ホセが姿を見せて、隣に覆面をした死刑執行人が立って「これから始まる物語は彼の最期の思い出なんですよ」と示唆する演出。2幕と3幕の間に一回だけ休憩が入った。
●視覚的なインパクトが圧倒的に強いので、普通にオペラを観るという行為とは別種のおもしろさあり。舞台の手前に歌手が立つとまるで目の前にいるみたいに浮き出て見える。飛び出すオペラ好きは必見。もうこの3D映像を見たら、本物のオペラが2Dにしか見えなくなる(笑)。全世界の飛び出すオペラ好きにとって、ロイヤル・オペラは伝説の劇場となった。
ニッポン代表、非公式サッカー世界王者タイトルを当面保持か
●ニッポン代表、7月に招かれていた南米選手権を辞退。残念である。が、これはしょうがない。震災でJリーグの開幕が遅れてしまったので、国内リーグの日程を優先するしかない。
●で、これでサッカー世界王者のタイトルは当分、ニッポン代表が保持することになった。えっ、なんだそりゃって? あるんすよ、「非公式サッカー世界王者」Unofficial Football World Championships ってのが。つまり、ボクシングと同じ考え方をするんだけど、世界王者と戦ってもし勝ったらそのチームが新たな世界王者なんじゃないかと思うじゃないすか、ファンのバカ話のレベルで。で、仮想的にチャンピオンベルトみたいなのがサッカー界で次々移動しているとすると、どこが王者かっていうのを延々と歴史をさかのぼって調べた人がいて、ちゃんと UFWC っていう公式サイトも立ち上がっている。公式サイトっていうのは、この「非公式タイトルの公式サイト」って意味だが。
●これ、スコットランドのファンがふざけて考え出したっていうんだけど、好きだなあ、このノリ。1872年にイングランドとスコットランドと対戦したのが史上最初の国際試合ということで、初代チャンピオンであるイングランドから100年以上この非公式タイトルは続いている(仮想的に)。2010年のワールドカップ前にはこのタイトルはオランダが持っていた。が、決勝でスペインがオランダに勝利して、ワールドカップ・チャンピオンになるとともに「非公式サッカー世界王者」にもなった。その後、2010年9月の親善試合でアルゼンチンがスペインに勝って世界王者になった。で、その一ヵ月後、なんとなんと、埼玉でニッポンがアルゼンチンと親善試合をして1-0で勝ったわけだ。ニッポン、ついに世界王者へ(笑)。ニッポンはそれまで過去5回「非公式サッカー世界王者」に挑んで、そのすべてに勝つことができなかったそうだが、そんなの誰も知らないって。
●で、ニッポンは韓国との親善試合を経て、1月のアジア・カップに挑み、無敗のまま優勝した。つまり依然このタイトルを防衛し続けているわけだ(引き分けはタイトル防衛となる)。これで南米選手権に臨めば、ニッポンが無敗で終わらない限りタイトルは南米勢に移ってしまうところだったが……。
●ところで、先日、ニッポン代表はJリーグ選抜Team As Oneと試合をしたではないか。もしあれで代表が負けていたら、このタイトルは半永久的にJリーグ選抜Team As Oneが保持することになったのではないかと心配する方もいらっしゃるかもしれない。が、UFWCのサイトによればあの試合はタイトルマッチとはみなされていないんである。ただし、試合のレポートはちゃんとサイトに掲載されている。Japan 2-1 J-League Team As One ということで、得点者の欄には Miura (J-League)と書かれている。非公式タイトルの非公式試合の記録だけど、世界に向けて(?)三浦カズの名が刻まれているということになんだか感激する。
来日組
●読売日響常任指揮者シルヴァン・カンブルランが来日。「この震災による被害に、世界中の人が心を痛めています。そのような状況で、私は今、この日本にいることを嬉しく思っています。こんな状況だからこそ、芸術は必要とされるはずです。何か、私に助けになることができればと思います」。なんと力強い。4月18日(月)サントリーホール定期他。
●プラシド・ドミンゴも「予定通り来日」と発表。「音楽を通じて人々の気持ちは寄り添い、音楽は人々の心をひとつにします。音楽を届けることで少しでも力になることができればと日本に参ることにいたしました」。4/10の公演の最後に「日本への祈りを込めた一曲」が演奏され、その模様はUSTREAMでライブ配信される予定。17:30頃~。
●ズービン・メータは4月10日に「東京・春・音楽祭」でN響と「第九」。「今月のフィレンツェ歌劇場日本公演を無念にも途中で切り上げなければならなくなって以来、この偉大な国、日本を襲った未曾有の悲劇の後に、何かこの国の素晴らしい人々を助けられることがないかと考えておりました」。
●しかしなー。来日アーティストが「来日する」ことが話題になる日が来ようとは。未来というのは本当に予測の付かないことばかり。あれもこれも想定外。ていうか、もともと「想定内の事態」なんて存在しないのかも。
交響曲第244番は日本のために
●宇宙一交響曲をたくさん書いた(書いている)作曲家、レイフ・セーゲルスタムの新作は、交響曲第244番 Musical Northlightbeams sending comforting vibrations to the screaming Japanese souls caught in their nightmare... (これなんて訳せばいいんでしょ)。しかし次々と新作が作られる一方で、第235番以降いまだ一曲も演奏されていないとは。ビバ生産。
●今月ヘルシンキで開かれる日本のためのコンサートでも武満徹の「弦楽のためのレクイエム」が演奏されるのか……。ニューヨーク・フィルやウィーンでのチャリティ・コンサートでもこの曲が演奏されたし、パリで開かれるUNESCOチャリティー・コンサートでもやはりこの曲が演目に入っている。作曲から半世紀を経て、こんな形で集中的に演奏されることになろうとは。
●そろそろジョン・アダムズあたりがオペラ「フクシマ ダイイチ」を書きそうな予感。
●気をもんでいた人も多かった「ラ・フォル・ジュルネ」であるが、「当初予定しておりました日程(4月28日~5月5日)での開催を決定させていただきましたことをご報告いたします」というメッセージを発表してくれた。よかった。今欲しいのは明るい話題。そして来日してくれるアーティスト。
夏の東亰23区では輪番発電を実施
●計画停電を4月1日も実施しないことを決めた東亰雷カだが、この夏の電力不足は避けられそうにない。現在の東亰雷カの電力供給力は約3800万キロワット。しかし7~9月は約6000万キロワットが必要となると予測される。夏はさらに規模を拡大して輪番停電が実施される見込みだが、これまでのところ東亰23区では荒川区と足立区を除いて停電対象外となっており、「なぜ東亰23区ばかりが優遇されるのか」といった不公平感が高まっている。しかし東亰雷カでは「首都機能維持のためには23区の多くを対象外とせざるをえない」とし、不公平感の解消のため「荒川区と足立区を除く区部では輪番停電に代わって、輪番発電を区民の皆さんにお願いしたい」と発表している。輪番発電は各家庭および事業所にパーソナル発電機(写真)を導入し、あらかじめ定められたグループごとに各回3時間以内程度の発電を利用者に義務付けるもの。「再生可能な自然エネルギーによる発電であるため、区民のみなさまにもご理解をいただけるものと思う」(同社広報部)と発表されているが、どこまで区民の協力が得られるかは未知数だ。
●なお、輪番発電の実施の発表にともない、区部の組み分け抽選会も同時に開催され、その模様は全23区に衛星生中継された。グループ分けは以下の通り。もっとも気温の高い時間帯に発電することになったグループBが「死のグループ」とみなされている。「夏を迎える前にしっかりと暑さ対策のトレーニングを積んで発電に臨みたい」(中野区民)といった声も。また、千代田区が今回も対象外となったことは議論を呼びそうだ。
GroupA( 9:00~12:00) 中央区、港区、文京区、世田谷区、品川区 |
GroupB(12:00~15:00) 新宿区、中野区、杉並区、練馬区、大田区 |
GroupC(15:00~18:00) 墨田区、江東区、北区、板橋区、江戸川区 |
GroupD(18:00~21:00) 渋谷区、目黒区、台東区、豊島区、葛飾区 |