June 27, 2011

ベルリン・フィル八重奏団&仲道郁代

●渋谷区のさくらホール(文化総合センター大和田)でベルリン・フィル八重奏団&仲道郁代。今回ベルリン・フィル八重奏団は3名が来日をキャンセルし、メンバーが変更されている。ラデク・バボラークが来なかったのは残念だが、代わりにベルリン・フィルのシュテファン・イェジェルスキが来てくれた。ファゴットはベンツェ・ボガーニからヤッコ・ルオーマに。第1ヴァイオリンがローレンツ・ナストゥリカ=ヘルショコヴィチからラティツァ・ホンダ=ローゼンベルクに。柱となるクラリネットのヴェンツェル・フックスは無事来日。彼が来なかったらさすがに困ったことになったと思うが、結果的には非常にハイクォリティのアンサンブルを聴くことができた。さくらホールの演目だと、仲道郁代とのシューベルト「鱒」も聴けるプチ音楽祭みたいな贅沢仕様。
●メインはこの団体の結成由来(1928年だって)ともなったシューベルトの八重奏曲。約一時間、全6楽章からなる長大な曲だ。シューベルトならではの「天国的な長さ」が、本当に天国のように至福に感じられるのは、演奏のすばらしさあってこそ。さくらホール(約700席)はこのアンサンブルに適したサイズで、空間に充満する自然な響きと、目の前でヴェンツェル・フックスが吹いているという臨場感を味わえる。全席完売の盛況。
●シューベルトの八重奏曲って、あと一歩で交響曲なのに感、大。もともと「ベートーヴェンの七重奏曲みたいな曲」という注文があって、クラリネット、ファゴット、ホルン、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバスという七重奏編成にさらにヴァイオリン1を足しての八重奏曲。これなら弦楽五部がそろうわけだ。フルートとオーボエがいないが、その分、第一ヴァイオリンとクラリネットにがんばってもらえばOK。第一楽章冒頭から立派な序奏が付いていて、今にも交響曲になろうとしているかのよう。ホルンの役割もオケっぽいし。
●ただ、楽章が6つもあって、交響曲にするには多すぎる。序奏つきの第1楽章があって、続く第2楽章はアダージョの緩徐楽章、第3楽章はスケルツォというところまではいいが、第4楽章は変奏曲、第5楽章はメヌエットがあって、第6楽章に堂々たるフィナーレと来る。見ようによっては第4楽章変奏曲が第2楽章のプランB、第5楽章メヌエットが第3楽章のプランB(ハイドン時代の交響曲のように)とも思えなくもない。交響曲の楽章と考えると1-2-3-2'-3'-4。とはいえ変奏曲とメヌエットは他の楽章に比べて柄が小さいというか、室内楽っぽすぎる(第5楽章から第6楽章へと進むときに音楽の柄にギャップを感じる)。その意味では変奏曲とメヌエットは室内楽用に割り切って作った楽章と考えて、これをすっ飛ばして1-2-5-6楽章の4楽章構成交響曲という完成図を夢想してみても楽しいかも。

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