September 9, 2011

3Dで見るラトル指揮ベルリン・フィル「音楽の旅」

撮影中のラトルとベルリン・フィル
●以前にロイヤル・オペラの3Dカルメンをご紹介したが、今度は3Dのオーケストラ・ライブだ。なんと、ラトル指揮ベルリン・フィルの3D映像が映画館で公開されるんである。ソニーのLivespireで、10月頃公開予定。2010年11月にシンガポールのエスプラネードホールで収録されたライブ映像で、曲はマーラーの交響曲第1番「巨人」とラフマニノフの「交響的舞曲」。試写会に足を運んだ。
●「でもどうしてオーケストラに3D?」という疑問はひとまず置いて、3D用のメガネをかけて見る。もう、すんごく3Dなのだ。実物よりも3D。3D映画を見たことがある方ならわかると思うけど、現実の肉眼にはあんなふうな奥行き感はない。肉眼よりももっと立体的に飛び出て見える。ステージ上の「手前」と「奥」の距離感がすごい。で、「手前」にフォーカスされたときの画像の解像度もすさまじくて、左からホルン・セクションを映すとサラ・ウィリスの腕の毛穴までくっきり見えそうな鮮明さ(笑)。いやもう、ホント、すごいんですよ。フルートのアンドレアス・ブラウの白くなったヒゲの一本一本まで識別できるっていうか、オーボエのアルブレヒト・マイヤーの髪の脱色感まで伝わるっていうか。ときどき自分が舞台に立っているかのように錯覚する。
●つまりオーケストラを「見て楽しむ」ことができる。「聴いて楽しむ」ものなのは当然だけど、そこに「見て楽しむ」の要素を発見させるのがこの3D映像。で、オーディオ一般についてよく思うんだけど、たまにどこかで本格的な高級オーディオを聴かせてもらうと、ものすごい臨場感があるじゃないすか。コンサートホールに行っても、絶対に客席でそんな音は聴くことができないよっていう音が鳴る。「生」より生々しい。「いつもこんなオーディオ装置で聴いてたら、生のコンサートホールじゃ臨場感がなくてつまらなくなってしまわないか」と心配になるくらい。じゃあ、オーディオがそうなら、ビジュアルもそうであってもいいんじゃないか、っていう発想もありうるかもしれない。3D映像で見るベルリン・フィルの臨場感は、生のコンサートホールでは体験できないわけだから。サントリーホールのP席だったら少し体験できるけど、でもそれとも違うなにかがある。浮遊できる透明人間になって、演奏中に舞台の上やら横やらを自由にふらふらして、奏者のすぐそばで演奏を眺めてる感じなんすよね。そう考えると「生より生々しい」という点で、ビジュアルでオーディオに負けないくらいのインパクトを与えうるのが、この3D映像なのかなと思った。
ピアニストを3Dカメラがとらえる●でも、実際にこの映像を見てると、だんだん3Dだということを忘れてくる。演奏そのものがあまりにも強烈なので、ただただベルリン・フィルのすごさに圧倒されてしまう。映画としてはまず「巨人」のほうを純粋なライブ映像として見せて、続いて、ラフマニノフ「交響的舞曲」をシンガポールの風景画像(これは意味がよくわからない)をさしはさみながら上映する。休憩がないし(ほしかった)、「巨人」でクライマックスが来ていることもあって、後半のラフマニノフはぼんやり眺めるモードになってしまった。映画館ではこの形式だけど、パッケージで販売する際には普通のコンサート映像として(風景映像なしで)、ラフマニノフ、マーラーの順に収めるとのこと。これは納得。

配給:ソニーPCL Livespire / photo © Context tv (上) Monika Rittershaus (下)

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