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October 13, 2011

「オスカー・ワオの短く凄まじい人生」(ジュノ・ディアス著/新潮社)

オスカー・ワオの短く凄まじい人生●やっと読んだ、「オスカー・ワオの短く凄まじい人生」(ジュノ・ディアス著/新潮社)。なるほど、これはスゴい。オタク青春小説とラテンアメリカ文学のマジック・リアリズムの融合というまさかの離れ業。男も女も「リア充」しかいないドミニカに生まれながら、モテないオタクとして生きるオスカーの物語を、カリブの呪いに囚われた一族の物語とトルヒーヨ独裁政権下のドミニカの不条理を交えながら描く。ドミニカってのは作者が実際にドミニカ生まれのアメリカ人だからなんだが、そんなギラギラとまぶしそうな国でオタクがオタクとして生きるんだからもう大変。痛々しくて切ない。でも美しい物語ともいえる。でもな、やっぱり切ないぞ。
●マンガ、ゲーム(テーブルトークRPGとかやるんすよ)、SF、アニメ、特撮にどっぷり浸かったオスカーは、日本のオタクカルチャーにも詳しくて「AKIRA」が一番のお気に入りで、「宇宙戦艦ヤマト」なんかも大好き。小松左京原作、草刈正雄主演の映画「復活の日」なんてどれだけ見てるかわからないっていうくらいなんだけど、よりによってなぜ「復活の日」。日本のオタクだってもうそんなの見てないって。オタク(原語ではナード)描写はくらくらするほど秀逸。クラヲタはジャンル違いのオタだけど、それでもきっと身につまされるはず。
●オタクカルチャーとマジック・リアリズムっていうどう考えてもつながりそうにないものが、「カリブの呪い」をキーとして違和感なく結びついている。ニッチなマーケットでウケたわけじゃないんすよね。ピュリツァー賞、全米批評家協会賞をダブル受賞して、英米100万部のベストセラーとなったという破壊力。ガルシア・マルケスを連想させる、一族の物語として「百年の孤独」を、独裁者小説として「族長の秋」を。
●オスカーのお姉さんとか母親の物語がまた強烈。ドミニカ女、恐るべし。あと怖いのはトウモロコシ畑、いつだって。

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