●「プロコフィエフ自伝/随想集」にラヴェルのエピソードが紹介されている。プロコフィエフはラヴェルのことを高く買っていた。ラヴェルの訃報を聞いて、ラヴェルの音楽は「現実からかけ離れすぎているというまちがった思考のせいで」ソヴィエトではあまり演奏されないが、同時代でもっともすぐれた作曲家であったと讃えている。ラヴェルとは1920年に初めて会ったそうだ。ボレロや弦楽四重奏、パヴァーヌを例に挙げ、彼の死を悼んでいる。
●プロコフィエフはパリ・オペラ座でラヴェル自身が指揮したバレエ「ボレロ」に立ち会ったという。ラヴェルは決して指揮を得意としていないが、曲の最後まで見事にオーケストラをコントロールした。で、最後の和音が鳴って、ダンサーたちがピタッと固まった姿勢をとった後、なぜか幕が下りてこない。ラヴェルは平静を保とうとしたが、いらついていた。ダンサーたちはじっと同じ姿勢をとり続けている。突然、ラヴェルは譜面台の上にあったボタンを押した。すると幕が下りた。ラヴェルがボタンを押し忘れていただけだった……。
November 14, 2011