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January 11, 2012

映画「ピアノマニア」

ピアノマニア●まもなく公開される映画「ピアノマニア」を一足先に見せていただいた。調律師とピアニストを巡るドキュメンタリー。題材も大変おもしろく、カメラワークも優れていて、見ごたえ大。1月21日~新宿シネマート他、各地で公開。
●主役となるのはスタインウェイ(ハンブルク)の技術主任を務める調律師シュテファン・クニュップファー(いいキャラの持ち主だ)。そして彼とともに理想の音を求めるピアニストたち、ピエール=ロラン・エマール、ラン・ラン、ティル・フェルナー、アルフレート・ブレンデル他が登場する。
●で、このドキュメンタリーの中心となっているのが、調律師シュテファンとエマールが二人三脚でバッハ「フーガの技法」(DG)のレコーディングに挑む部分。早くも録音の1年前からエマールとシュテファンの打ち合わせが始まる(エマールは忙しい)。妥協を知らないエマールは完璧なピアノを求めて、次々とシュテファンにリクエストを出す。「広がる音と密な音の両方」「クラヴィコードのような音、チェンバロのような音、オルガンの音……」。一台のピアノに多様な音色を求める。シュテファンは難題にぶつかりながらも、エマールの要求を少しずつ満たしてゆく。エマールとシュテファンの関係はF1ドライバーとエンジニアの関係を連想させる。
フーガの技法●これ、ゴールは知ってるんすよね、ワタシたちは。エマールが弾いたバッハの「フーガの技法」はすでにCDがリリースされている。エマールはついに最後に求める音に出会って、シュテファンを讃える。「響きが最初から最後まで表情豊かで、しかも控え目だ。私はこの音を夢見てたんだよ」。そう……それがあの録音に入っているわけだ。ところどころクラヴィコードのような音がしたり、オルガンのような音がしたりするだろうか。それともふくよかなモダンピアノの音しか聞こえないだろうか(笑)。
●エマールのフレーズはいいすよね。汎用性高そう。「ん、このラーメンうまい! スープが最初から最後まで表情豊かで、しかも控え目。私はこの味を夢見てたんだよ」とか。