●金沢21世紀美術館ミュージアムショップで、先月まで地元ガイドブック「そらあるき展」が開催されていた。そこで「そらあるき本棚」として、同誌に縁のあった執筆者がオススメの本を3冊紹介し、その本を展示するという企画があった。ワタシも参加していたのが、もう展示も終わったことなので、その3冊の選択とコメント文をここに再録。ただ好きな本を3冊選ぶのも芸がないと思い、音楽家を登場人物とするフィクションでまとめた。
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イアン・マキューアン著「アムステルダム」(新潮社)
カズオ・イシグロ著「充たされざる者」(早川書房)
クリストファー・ミラー著「ピアニストは二度死ぬ」(ブルースインターアクションズ)
音楽家を主要登場人物とした現代作家のフィクションから3冊を。「アムステルダム」はブッカー賞受賞作。「ヴォーン・ウィリアムズの後継者」を自認する保守的作曲家を描く。「充たされざる者」はイシグロ作品としては異例の前衛的作風を持つが、現実認識の不確かさ、アイデンティティの揺らぎといった得意のテーマは健在。「ピアニストは二度死ぬ」は自称天才音楽家のための架空ライナーノート小説。三作に共通するのは心地よいイジワルさ。