●日比谷公会堂で「日露友好ショスタコーヴィチ・プロジェクト2012」として井上道義指揮OEK、アンナ・シャファジンスカヤ(S)、ニコライ・ディデンコ(Bs)によるショスタコーヴィチの交響曲第14番を。ビゼー~シチェドリンの「カルメン組曲」と合わせて、弦楽器+打楽器の編成。OEKは前日に石川県立音楽堂で同じプログラムを定期公演で演奏しているようだが、たぶん実際にホールに響いた音はぜんぜん違っていたはず。
●日比谷公会堂は本当に残響が少ない。カサカサに乾いたむき出しの音が飛んでくる。日比谷体験皆無の世代としては、なにもこんなところで公演をしなくても、と最初は思ったが、そのうちこの作品ならむしろこれがふさわしいんじゃないかという気になってきた。これは死の歌なんだから。
●潤いレスなデッドな響きのなかで、整然と美しく奏でられる14番を聴いて、鬱々とひたすら気が滅入る。死神、自殺者、兵士の死、地下牢、詩人の詩……。しかしショスタコの鬱展開って気難しい、いや難しい。同じ鬱作品でもたとえばベルクの「ヴォツェック」の救いのない鬱に直面すると「豆、食おうぜ!」的な鬱ハシャギが可能であるのに対し、ショスタコ14にはハシャげない、どうしたって。
March 5, 2012