●出た、「アルテス」創刊第2号。「ジャンル無用の音楽言論誌」と銘打つ通り、今回も「書き手が書きたいことたっぷり書いた感」満載。なにしろ特集テーマは「アップルと音楽」。こんなテーマが成り立つというだけでも、アップル製品が音楽を作る側、聴く側にどれほど深い影響を与えてきたかがわかる。……といいつつ、ワタシはMS-DOS以来の(いや正確にはNECのPC-8001以来の)マイクロソフト野郎なのであり、アップル製品を避けて通ってきた者なのであるが(笑)、そんなPC派にも共感しつつ目ウロコだったのが八田真行氏の「手入れの行き届いた庭で育つ文化とは?」。アップル的なカルチャーあるいはグーグル的なカルチャーよりもワイルドなサードパーティがもたらすカオス大好きダサダサ派としては、改めて四面楚歌っぷりを再認識。
●前号もそうだったけど、特集以外の記事のバラエティ感が好き。安田寛氏が書いている「発見が発見でなくなる時代~音楽研究はいまやGoogleが仕掛けた検索ゲームになった」というエッセイが実に示唆的。何年も苦労して探してきた研究資料が、偶然あっさりとGoogleブックスで「発見」できてしまう。しかし誰にも等しく公開されている情報にアクセスした場合、それは果たして「発見」と言えるのか? シリアスな問題提起であるはずだけど、どこか脱力するしかない笑いがわいてくる。グーグル流のスマートなアルゴリズム主義って、こういうことなんすよね。
●渋谷慶一郎×湯山玲子特別対談「爆音で楽しむモーツァルト」は、これ読んで青筋立ててるヲタの姿を思い浮かべてイヒヒヒとほくそ笑みながら読む、くらいのアクロバットな姿勢で受け止めたい。
April 10, 2012