●もうすっかり記憶の彼方に去りつつある、今年のLFJ。でもいまだにその残像が消えずに目に焼きついている光景が、初日と二日目の22時台ホールAの聴衆。ガラガラの巨大ホールAで、ベレゾフスキーが弾いたチャイコフスキーとエル=バシャが弾いたプロコフィエフ、ともにピアノ協奏曲第2番。あのときの客席の熱気、「打てば響く」感は普通のコンサートとはぜんぜん違っていた。
●最初、普段となにが違うのか、よくわからなかったんだけど、後で客層が若かったってことに思い当たった。夜22時開演だと、年配層はぐっと減る。ワタシは行けなかったんだけど、同じホールAの三日目ラスト・コンサート(これは21時開演)は完売になって、公式ブログの写真だとこんな雰囲気でほとんど総立ち。前夜と前々夜の22時は人がぐっと少なかったのでこの雰囲気には至らないにしても、足を運んだ層は近かったはず。
●22時の聴衆は拍手からして違っていた。ズダッ!と音が立ち上がる。普通の演奏会だと、しばしば「もう手を叩くことに疲れたましたよ私の人生は」的にドッコイショと開始される拍手モードが、あそこではロケットスタートで起動していた。なんすかね、体のキレかな。若いと単純に立ったり座ったりする動作でも、自然とシャープで滑らかだったりするじゃないすか、オッサン特有のモッサリ感がなくて。この「え!?」っていう切れ味はまちがいなく舞台上にも伝わっていた。
●で、いいな、若いって、と思う頃には自分オッサンが世の理。心から心へ、若者からオッサンへ、オッサンからジジイへ。若さが足りないぜとか天に向かって唾すると即座に自分レッドカードのワナ。でも、22時の雰囲気が19時にももう少しあっていいんじゃないかと思うし、以前はあったと記憶する(いやそれは記憶の捏造か?)。どこかで読んだけど、日産スタジアムのピッチから最前列の席までの距離は、フクアリ(JEF千葉のフクダ電子アリーナ)のピッチから最後列までの距離より遠いっていうんすよ。それくらい日産スタジアムはピッチが遠い。でも22時には日産スタジアムだってフクアリになりうる。それを知ったのがLFJの22時。
June 1, 2012