●31日(木)は準・メルクル指揮N響へ(サントリーホール)。ドビュッシーとラヴェルで組まれたプログラムが非常におもしろい。ラヴェルは「亡き王女のためのパヴァーヌ」「ラ・ヴァルス」と通常のレパートリーだが、ドビュッシーはバレエ音楽「カンマ」、サクソフォンとオーケストラのための狂詩曲、前奏曲集の管弦楽編曲版から数曲、「古代のエピグラフ」管弦楽編曲版。100%ドビュッシーによる作品が一曲もない。「カンマ」はケックランが、サクソフォン狂詩曲はロジェ=デュカスがオーケストレーションを完成した作品。前奏曲集オケ版はコリン・マシューズの編曲、「古代のエピグラフ」はアンセルメの編曲。準・メルクルによる準・ドビュッシー・プロなのか。
●作曲者の意を汲んで管弦楽用に編曲したというアンセルメ版「古代のエピグラフ」がとてもよかった。コリン・マシューズの前奏曲集よりよほど楽しい。あまり取り上げられないのが謎に思えるほど。繊細で鮮度の高い音楽が続いた後、コンサートは最後に熱気渦巻く「ラ・ヴァルス」で爆発、客席は沸いた。
●2日(土)、サントリーホール チェンバーミュージック・ガーデンが開幕。ブルーローズ(小ホール)を会場に、17日まで室内楽を中心に多彩な公演が予定されている。オープニングはブラームスのトリオが3曲という構成で(トリオのトリオ)、クラリネット三重奏曲イ短調、ホルン三重奏曲変ホ長調、ピアノ三重奏曲第2番ハ長調。堤剛(チェロ)、豊嶋泰嗣(ヴァイオリン)、ラデク・バボラーク(ホルン)、須関裕子(ピアノ)、橋本杏奈(クラリネット)と重鎮から若手まで。バボラークのホルンが圧巻。どんな弱音でも安定していて、しかも音楽が生きている。技術も表現もすべてが人外の域で怪物的存在感を醸していた。
●このチェンバーミュージック・ガーデン、8日からヘンシェル・クァルテットのベートーヴェン・サイクルが開催される。5公演にわたって演奏される弦楽四重奏曲全曲。曲目はうまく分散されていて、どの日を選んでも初期・中期・後期作品を聴けるようになっている。8日の1番・11番・大フーガ・13番のセットにお得感を感じる。といいつつ別の日に行くのだが。楽しみ。
June 3, 2012