●すでにグループリーグ2試合目に入っているEURO2012。「死のグループ」B組で、オランダvsドイツ。ほかにポルトガルとデンマークがいる大変な組である。1試合目でオランダがデンマークに負けてしまい、なおさら混沌としてきた。ドイツは(いつものように)順調にポルトガルを下して、この対決。オランダにしてもドイツにしても、もともと強すぎて(そして体格的にも恵まれすぎていて)ぜんぜん応援しようという気にならないのだが、ここでオランダが勝ったほうが混戦になるからという理由で仮想オランダ贔屓モードで観戦。
●が、ダメなんである。このオランダ、かつてのオランダほど楽しくない。そして(いつものように?)チームに助け合いの精神を欠いている。タレント揃いの攻撃陣と守備陣の間に隙間風が吹く寒い光景を幻視する。でも会場は29度でウクライナって暑いの?
●一方、ドイツは相変わらずチーム一丸となって勤勉に戦う。ドイツの選手たちは代表チームになると強くなるし、オランダのスターたちは代表チームになると弱体化するような気がする。終盤に交代で入ってきたベテラン、クローゼがわずかな相手のミスの可能性に賭けて相手ゴールキーパーに向かって猛然とダッシュした象徴的な場面があったけど、ドイツってこうなんすよね。憎たらしいほど強いのは、勝敗を決する小さな可能性に逐一賭けるってことなんだと思う。サッカーってもともとそうじゃないすか。コーナーキックはサッカーでは比較的得点の可能性の高いチャンスとみなされているし、事実そうなんだけど、1回あたりの得点確率は1/40しかない(以前書いた)。1/40って、とても小さく見える。でもこれを10回繰り返したら、1-(39/40)^10で、22%の確率で1本以上のゴールが生まれる。これはもはや小さな可能性ではない。あそこでクローゼが猛ダッシュをすれば、1/40よりは高い可能性でゴールが生まれるんじゃないか。まあ1/40かどうかはわからないが、とにかくそういう可能性の積み上げがチームのDNAとして染み付いているんじゃないかな、と戦慄。
●かつて「ゲルマン魂」って呼んでたものの実体の多くは、そういったクローゼ的な骨身を惜しまない勤勉さとそれを実現可能にする体力に依拠していたに違いない。でも今やドイツも他の欧州諸国と同じように(そしてニッポンも明白にそうなっているように)他民族化していて、ぜんぜんゲルマン軍団ではない。で、プレイぶりもドイツらしからぬおシャレ度の高さ。あのマリオ・ゴメスの得点シーン、反転トラップ見たすか? 美しすぎる。巨体なのに。もちろんエジルはいつだってエレガントだし。
●そういえばオランダはむしろ他民族化に逆行している感もあり。一頃はスリナム系選手だらけで白人選手が肩身が狭そうにしていた頃もあったのに。
●マリオ・ゴメスの2ゴールに対して、オランダは終盤にファン・ペルシが1点を返したものの、そこからのドイツに隙はない。1-2、ドイツが勝利。ドイツは連勝で勝点6、一方オランダは連敗で勝点0。犯人探しがさっそく始まりそうなイヤな雰囲気。しかし実はドイツの決勝トーナメント進出もオランダの敗退もまだ確定していない。ポルトガルがデンマークに勝利したので、3チームが勝点6で上に並ぶ可能性もあるし、3チームが勝点3で下に並ぶ可能性も残されている。
●グループリーグの順位決定レギュレーションは、勝点で並んだ場合、まず当該チーム同士の成績が勝点、得失点差の順で優先されるものと理解しているんだけど、合ってる?
June 15, 2012