●今回のオリンピックは審判が話題になっているっぽい。たまたま柔道だけはテレビで見たけど、旗判定で審判3人がいっせいに青を上げたら、「ジュリー」という人が物言いをつけて、もう一回旗判定をして3人全員白を上げた。よく知らないのでこれがルールなんだろうけど、だったら「ジュリー」っていう人が審判をすればいいんじゃないのって気はする。体操男子の抗議で得点が変わってしまうっていうのも謎だが、そういうルールの競技なのか。
●審判を審判する「ジュリー」っていうメタ審判は斬新かもしれない。いずれ「ジュリー」の正しさを判定する「超ジュリー」的なメタメタ審判が出現することを予見させる。
●もっとも誤審だらけのサッカーに比べると、これくらいはかわいいものなのかも。サッカーは誤審も競技に「込み」になっている。PKかどうかとか、レッドカードかどうかとか、オフサイドかどうか、ゴールラインを割ったかどうかなど、試合を決定付ける微妙な判定で、常に正しい判定を下せる審判なんて存在しえない。
●サッカー界も現状のままではまずいということで、テニスなんかで使われる「ホークアイ」をゴール判定用にFIFAが採用することが決まっている。「ボールがゴールラインを通過した際、1秒以内に審判員の腕輪に暗号化された情報が伝達される」ということなので、もうゴールラインを割ったかどうかについてもめることはないわけだ。今後の八百長戦略としては、この暗号を解読して、きわどい場面で審判の腕輪にニセのゴール情報を送信するという手段がありうる……わけないか。
2012年7月アーカイブ
超ジュリー
ニッポンU23vsモロッコU23@ロンドン・オリンピック
●スペインに勝利して、中二日で迎えた第2戦、ニッポンU23vsモロッコU23。やはり前の試合の鬼プレスが影響してか、ニッポンの選手たちの体が重そう。先発は右サイドバックに酒井高徳を入れた以外は前の試合と同じ。鬼プレスはなし。序盤からずっとモロッコにゲームを支配される展開で、相手陣内ではほとんどボールを保持できなかった印象。モロッコは全般にフィジカルが強く、イーブンに見えるボールでも大半取られてしまう。前線のアムラバトをはじめ、前へ前へと突破する力は脅威。チャンスの数も質もモロッコのほうが高く、後半途中まではいつやられてもおかしくなかった。
●が、後半の途中からモロッコの運動量が落ちて、選手間の距離も開き、ようやくニッポンのペースに。ハーフウェーライン付近から清武がディフェンスの裏に放り込んだパスにキーパーが飛び出してしまい、先に追いついた永井がワンタッチで浮かせて無人のゴールへ。好セーブを見せていたアムシフだが、永井のスピードを見誤ってしまった。永井はそれまでシュートがことごとく足にヒットしていなかったが、この場面は落ち着いていた。試合を通じて攻撃で目立っていたのは清武。
●これで2戦2勝で決勝トーナメント進出が決まった。1位で抜けるか、2位で抜けるかという問題もあるが、日程の過密さを考えて3戦目は控えメンバーを入れて戦うことができる。宇佐美貴史を先発させるか? 中盤も休ませたいが、悩みどころ。
●この後、スペインがホンジュラスに0-1で敗れるという大波乱があり、なんと、優勝候補のスペインが2連敗でまっさきに脱落してしまった。ニッポンの第3戦はホンジュラスに勝つか引分ければ1位通過、負けた場合は1位ホンジュラス、2位ニッポンが通過ということになった。このグループはヨソから見たらカオス。
ダニー・ボイルの開会式とブラジルU23vsエジプトU23@ロンドン・オリンピック
●オリンピックの開会式だなんて、どれほど退屈なセレモニーかと思っていたら、今回は違った。演出はダニー・ボイル。当ブログではおなじみ、「28日後……」「28週後……」といった「全力疾走するゾンビ」によって現代社会に渦巻く憤怒と怨嗟を容赦なく描き出したあの監督だ。セレモニー冒頭は「イギリスの田園風景」から始まった。これは「28日後……」のセルフ・パロディ? そこに疾走するゾンビの群れを期待したが、そんなわけはなく、その代わりにダニエル・クレイグ扮するジェイムズ・ボンドが女王陛下をエスコートしたり、サイモン・ラトル指揮ロンドン交響楽団が「炎のランナー」を演奏すると(ホントは演奏してなくてフリだけってのは事前に報道があったっけ)、キーボードをMr. ビーンのローワン・アトキンソンが担当していて、ラトルとMr. ビーンで一芝居あったりと、大変愉快なものであった。
●さすが。もし東京五輪が実現したら、だれが演出するんだか……。
●だが本当に見るべきは開会式ではなく、ブラジルなんである。ブラジルU23vsエジプトU23。ああ、ブラジル! 胸が裂けるような思いで「ブラジル!」と叫ぶしか。
●サッカーファンは勘違いしていた。この前のEUROとその前のワールドカップとその前のEUROと、ずーーっとスペインが世界一美しいサッカーをプレイしていて、なおかつ世界最強という夢のサッカーを実現していたのだ、と。そりゃ、スペインは美しいっすよ、でも楽しかった? 特に楽しくはなかった、ポゼッションによって失点をゼロにするサッカーだから。楽しいのは? 「ブラジル!」。たとえU23でも「ブラジル!」
●つなぐサッカーとかいってもスペインとブラジルじゃぜんぜん別物。なんでU23でもこんなに楽しいかといえば、やはり即興性。選手間でボールを回しながら「行くか?」という無言のコミュニケーションが成立すると、ギュン!ギュン!ギュン!とギアチェンジしてスピードアップ、怒涛の波状攻撃が始まる。でも、なにか気が削がれると、臆面もなく「あー、もう守備めんどくさいわ~」のチンタラサッカーを始める。
●ブラジルはマルセロとかフッキ(かつてJリーグで活躍した)がいて、マーケットへの売り込みに必死なネイマールがいる(パトとガンソはベンチ)。エジプトU23も鍛えられた好チームで、技術もある。でもブラジルは前半だけで3ゴールを奪う。得点はラファエウ、レアンドロ・ダミアン、ネイマール。スペクタクルそのもの。そして後半は夏休みに入ってエジプトに2ゴールを奪われた。1点差になってから、ようやくマジメにプレーして3-2で勝利した。楽しい。戦術的なクラブのサッカーではなく、代表のサッカーを見るんだったら断然これ。ブラジルは変わることなく王国だった。
スペインU23vsニッポンU23@ロンドン・オリンピック
●なんとなくサッカーファン的には落ち着かないのがオリンピック。U23の世界大会なんだけど、U23ともなると年齢高すぎで年齢制限は引っかからなくてもスター選手の多くは卒業してしまっている(その一方でメダルが欲しい国のためにオーバーエイジ枠がある)。おまけにヨーロッパのこの大会にかけるテンションの低さ。欧州の出場枠はたった3(スペイン、ベラルーシ、スイス。それに開催国枠として「イギリス」という耳慣れない名前のチームが入っている)。96年アトランタ大会以降の4大会では、2000年シドニー銀メダルのスペインを除いて、すべてアフリカと南米の国だけが決勝戦に進んでいる。オリンピックはヨーロッパ以外の国のための若手世界大会とでも呼びたくなる。
●が、今回のスペインはスゴいメンバーをそろえてきた。マタとかジョルディ・アルバとかハビ・マルティネスとかデ・ヘアとか、トップレベルで活躍している選手が大勢。さすがにこれは優勝候補。強烈。
●で、スペインvsニッポン。GK:権田、DF:酒井宏樹(→酒井高徳)、鈴木大輔、吉田麻也、徳永悠平-MF:東慶悟、山口螢、扇原貴宏(→山村和也)-FW:清武弘嗣、大津祐樹(→齋藤学)、永井謙佑。序盤からペース配分を無視したような猛烈なプレスを永井がかける。スペインのボール回しは惚れ惚れするほどうまいんだけど、低い位置でニッポンにボールを奪われることもしばしば。攻めるスペインとショート・カウンターを狙うニッポン。ニッポンは少々押し込まれても自信を失わずに冷静にプレイするのが頼もしい。前半34分、扇原のコーナーキックから大津が右足であわせて先制ゴール。この試合、大津のミスが多くてずっと試合に入り込めていないと思っていたら先制点。点は決めたが、調子は悪かった。後半からは齋藤学に交代。
●前半41分に前線からのプレスで永井がボールを奪い、ゴールに向かうところをイニゴ・マルティネスが後ろから引っ張った?ということで一発レッド。これはイエローで十分だったのでは。アメリカ人主審の笛の基準は少し独特で、結果的にニッポンに有利に働いたと思う。ただ、スペインも自陣でやたら不用意なミスを連発していて、1失点で済んだのが不思議なほど。ニッポンは後半もカウンターから山のようにシュートチャンスがあったが、ことごとく外した。冗談のように枠に飛ばない。スペインは一人少ないにもかかわらず、ボールを回せてしまう。だからこそニッポンのカウンター天国になるわけだが、永井は何本外したんだろう。でも彼の前線からの鬼プレスが試合を決定付けたのでこの日の殊勲者は永井。齋藤学はもう一段鋭いプレイを見せてほしかった。
●11人対11人の試合を見たかった気もするが、あのスペインに勝ったのは快挙。内容的にも堂々と渡り合っていた。後半、右サイドバックが負傷のため酒井宏樹から酒井高徳に交代した。ニッポンには右サイドバックにSAKAIが二人いる、しかも二人ともドイツのクラブに所属しているが、兄弟でも双子でもありませんと世界のサッカー界には宣言しておきたい(笑)。ドイツ系日本人のほうが酒井高徳。見まちがえることはない。
ミンコフスキとOEK
●25日は金沢へ。石川県立音楽堂でミンコフスキ指揮オーケストラ・アンサンブル金沢。プログラムは古い時代の作品ではなく、20世紀前半プロ。ヴァイルの交響曲第2番、プーランクの2台のピアノのための協奏曲(独奏はギョーム・ヴァンサン、田島睦子)、ラヴェルの「マ・メール・ロワ」バレエ版。かなり思い切ったプログラムだが、出色の出来、客席の反応もとても良好。ていねいで繊細に整えられた響きなんだけれど、ミンコフスキが全身から発するオーラで自然と熱を帯びていくのがすばらしい。プーランクも洒脱というよりも一段柄の大きな腕白っぷりがあらわれていて、きかん感じやね(←金沢弁)。
●OEKの7月定期って、ハーディングとミンコフスキなんすよね。スゴすぎる。金沢の都市圏の大きさ(というか小ささ)では同一演目二公演は現状無理、しかしこれで一公演ではあまりにもったいないわけで、ハーディングは新潟市妙高市でもう一公演開かれた。ミンコフスキは26日東京と、さらにこの後28日(土)に横浜みなとみらいでも公演が開かれる。
●ちなみにOEKの来シーズンのプログラムには、ミンコフスキ指揮ルーヴル宮音楽隊の公演が入っている。OEKの定期なんだけど、OEKは出演しなくてルーヴル宮音楽隊が演奏するという方式。東京だと「どして?」となるかもしれないが、中規模以下の都市では理にかなっている。客席の大半は定期会員だし。あと、エンリコ・オノフリ&OEKという公演もあって、これはバッハ・プロ。
SONYのMusic Unlimited
●クラシック音楽ファンの間ではあまり話題になっていないようなのだが、SONYの定額制音楽配信サービス Music Unlimited が今月からスタートしている。「洋楽中心で最新のヒット曲から名曲まで1,000万曲」という謳い文句といい、トップページのデザインといい、クラシックは関係なさそうに見えるのだが、実はメジャーレーベルを含む多数の音源が入っている。たとえば、はい、カルロス・クライバーのページ。なんと、SONYのサービスなのにユニバーサルの音源が!
●いくつかためしに検索してみたところでは、Naxos Music Library(以下NML)で聴ける音源もかなりの程度含んでいるように思えるのだが、100%まるごとというわけでもなくて、よくわからない。入会しなくても検索はできるので、あれこれ試してみるといいかも。
●30日間定額制で1480円はきわめて安価。ただし、NMLと違って(クラシックに関しては)アルバム情報は日本語化されていないので、「カルロス・クライバー」で検索してもなにもヒットしない。また、一見したところ「レーベル」という概念が希薄なようで、なにかと探しづらい。
●あとは音質。HE-AAC 48Kbpsというクォリティだ(ちなみにNMLはAAC 128k)。一見48Kbpsというビットレートはひどく落ちるように見えるが、HE-AACは通常のAACやmp3とは圧縮方法が少し違っており、聴感上のクォリティは48Kbpsという感じはしない。もっとよい。しかし、じゃあどれくらいまでよいかというのが問題で、これは試聴してみればいいんである。会員にならなくても、30秒の試聴はできる。
●クラシック系利用者のレポートを待望。
ロンドン・オリンピック2012
●夏になってあれもこれもと開幕しているが今年はオリンピックもあるのだった。もしかしたらサッカー以外はなにも見ないままに終わってしまいそうな気もするのだが、本来であれば普段目にする機会の少ないスポーツを観戦したいところ。NHKロンドン・オリンピックのサイトにはテレビの放送予定と並んでネット生中継のスケジュールもずらり。さらにNHKオンデマンドも別途あるわけで、テレビなんてなくてもかなりの程度ネットで観戦できてしまうのかも。
●で、これが今回のマスコット・キャラ、ウェンロックとマンデヴィルだ。怖いと評判である。実際、見れば見るほど怖い。なにしろ一つ目だし。イギリス人やヨーロッパ人はこれを見て愛嬌を感じることができるのだろうか。できるんだろうな、採用されてるんだから。造形的にはどう見ても悪夢系かつザコキャラであり、画面の端にコイツらが見えたら即座に照準を合わせてAボタン、大量にわいてきたらBボタンでボム攻撃するタイプ。
●もし東京でオリンピックが開催されることになったらマスコットキャラはこの人でどうか。三つ目とか百目を加えても吉。むしろこうして並べてみると、ウェンロックやマンデヴィルよりはまだ許せる。
スダーン&東響、バイロイト2012
●21日(土)はサントリーホールでスダーン指揮東響へ。マーラーの歌曲集「さすらう若人の歌」(ヴォルフガング・ホルツマイア)とリストの「ファウスト交響曲」(チャールズ・キム、東響コーラス)。リストの「ファウスト交響曲」がカッコいい。プログラムの流れから言っても、「千人の交響曲」と共通する「ファウスト」という題材からしても、リストの交響曲がマーラーの予見的作品に聞こえてくる。過剰であり絢爛として中二病的でもあり。オケからすばらしく豊麗な響きが発散されていた。
●合唱が入らないまま第3楽章「メフィストフェレス」に突入し、どうなるのかなと思ったら、出番直前ほとんどギリギリのタイミングでゾワゾワゾワッと全員が高速入場した。こんなにすばやく合唱が入場できるなんて。しかも足音をほとんど立てずに。忍者?
●今年は少しでも聴けるかどうか、バイロイト音楽祭が7/25にティーレマン指揮「さまよえるオランダ人」で開幕する。例年のようにopera castの放送予定表が役立つ、かもしれない。「オランダ人」は直前になって題名役のエフゲニー・ニキティンが胸のハーケンクロイツの刺青が理由で降板となり、サミュエル・ユンに交代している。
レッツゴー!クラヲくん 2012 同じ音源を何度も買い続ける編
●連続不条理ドラマ「レッツゴー!クラヲくん」第18回 同じ音源を何度も買い続ける編
コクがあるのに、すっきりした後味
家族にも評判が良く
お財布にやさしいお値段が嬉しいですね。
今回リマスタリングされたのを機にリピしました♪
セーゲルスタムとヒッグズ粒子と読響と
●読響の先々のスケジュールを見て驚愕したのだが、来年の1月にご存知交響曲量産王レイフ・セーゲルスタム(セゲルスタム)が指揮台に立つんである。で、そこで自作の交響曲第252番「ヒッグス粒子に乗って惑星ケプラー22bへ」を指揮するという。いつもなら「うぉ!252番って」とその創作マシーンぶりに驚くわけだが、今回は違う。なんと、つい先日CERNで発見されて大ニュースとなった、あのヒッグス粒子だ。恐るべし、セーゲルスタム、時流に乗りすぎ。物理学の「標準理論」の最後のピースを埋めるといわれるヒッグス粒子の発見を予見していたかのごときプログラミング。そしてぜんぜん関係なさそうなケプラー22bがタイトルにくっついていたりする謎度の高さ。「ヒッグス粒子に乗って惑星ケプラー22bへ」。ぜったい書いてる本人も「ヒッグス粒子」の意味わかってないと思う(笑)。
●しかし「ヒッグス粒子」発見は大ニュースになったものの、「ヒッグス粒子」がなにかについてまともに説明できる人はほとんどいないんじゃないかって気がする。本当に難解。理解のために必要となる物理学的素養が半端じゃない。とりあえず「ヒッグス粒子と質量」(キッズサイエンティスト)、HiggsTan(ひっぐすたん)、ヒッグス粒子(日本大百科全書)あたりを読むしか。結構よくできているのが「ヒッグス粒子が見つかったらしいけど、何がすごいのか」(ニコ動)。セーゲルスタムは必見。
SUPER 8 (J.J.エイブラムス監督)
●WOWOWで放映されていたので、映画館で見逃していた(なんだって見逃している)「SUPER 8」(J.J.エイブラムス監督)を見る。なるほどー、公開時に賛否が割れていたのはそういうことだったのか。製作者スティーヴン・スピルバーグに対するオマージュ満載で、「未知との遭遇」や「E.T.」のような過去の名作成分がどっさり。スーパー8とは8mmカメラを指しており、70年代末に自主制作映画に夢中になる少年たちを主人公としている。ノスタルジーだけでできているような映画で、ストーリー的には綻びだらけでどうしようもないのだが、それでも十分楽しんでしまった。スーパー8mmカメラなんて触ったこともないけど、強いて自分に当てはめて言えば「ラジカセ」みたいな感じかなあ、彼らの年頃で眠るのがもったいないくらい夢中になったアイテムといえば。
●筋の整合性っていうのも、どんなときでも高けりゃいいってものでもないのかも。オペラなんて、もともとまるで整合性がない骨格だけの物語でも、音楽と演出さえあれば生き続けているわけだし。
●とはいえ、この映画のいちばんの見どころはエンドロール。物語が一通り終わったところで、少年たちが映画内で撮っていたチープなゾンビ映画が披露される。これが本編よりずっと感動的(中身はまるでどうってことはない)。オタク男子が撮りたい映画と来たら、きょうびゾンビ映画に決まっているのだ。そして彼らが憧れるクラスで人気の女子といえば、柄の悪い父親がいて(でもホントはいい人)、なおかつ美しくゾンビを演じてくれる女の子しかありえない。
UFWC(サッカー非公式世界王者)の行方
●さて、以前にニッポンが王座に就いて以来、たびたび話題にした「非公式サッカー世界王者」(UFWC)であるが、その後の行方についてはとんと耳にする機会がなかった。2010年10月にニッポンがアルゼンチンを破って以来、15戦に渡ってニッポンがタイトルを防衛していたが、2011年11月の平壌でのよくわからない試合によって、チャンピオンベルトは北朝鮮のものとなった。
●「非公式世界王者ってなんのこと?」っていう方に一言で説明すると、ボクシングのタイトルマッチみたいに有史以来の代表戦について「勝ったほうがチャンピオン」というシンプルなルールを適用したら、今どこが王者かっていう仮想的タイトル(引き分けた場合は王者防衛だ)。
●で、その後、北朝鮮が勝ち取った王座はどうなっているかというと、実はまだ彼らがタイトルを保持している(なんと!)。「試合をしていないから」ではない。意外と試合はしている。ニッポン戦以後の防衛の記録はこうだ。
12年2月 北朝鮮 1-1 クウェート
12年2月 タジキスタン 1-1 北朝鮮
12年3月 北朝鮮 2-0 フィリピン
12年3月 タジキスタン 0-2 北朝鮮
12年3月 北朝鮮 4-0 インド
12年3月 北朝鮮 2-0 パレスチナ
12年3月 トルクメニスタン 1-2 北朝鮮
●3月にたくさん試合をしているのは、AFCチャレンジカップというアジア下位のチームを対象にした公式戦があったから。で、以来試合がないのだが、今後10月にイランvs北朝鮮のフレンドリーマッチが組まれたので、ここでタイトルが動く可能性がある。もちろんそれまでに試合が組まれる可能性もあるので、このイランvs北朝鮮がタイトルマッチになるかどうかは定かではない。
●しかしUFWCがアジアの手に渡って以来、どんどんタイトルが奥地のほう(?)に入っていって、中継もされなければ報道されるかどうかも心配なくらいの山奥に分け入っている感あり。FIFA加盟国で戦う以上は「行方を見失いました」ってことにはならないとは信じているが。
広上淳一指揮読響定期、AKB48松井咲子「読響シンフォニックライブ」
●12日はサントリーホールで広上淳一指揮の読響定期へ。武満徹「トゥイル・バイ・トワイライト」(1988年の読響創立25周年記念委嘱作品)、ベルリン・フィル首席の清水直子を独奏に迎えたバルトークのヴィオラ協奏曲(ピーター・バルトーク版)、リムスキー=コルサコフの交響組曲「シェエラザード」というプロで大盛り感あり。広上淳一指揮の武満作品は5月にN響で「フロム・ミー・フローズ・ホワット・ユー・コール・タイム」を聴いたばかりなので、ここでも打楽器無双な編成の「トゥイル・バイ・トワイライト」で姉妹編を聴くかのような気分に。精悍なヴィオラ協奏曲の後は、意外なアンコールで、ソリストの清水直子さんとヴィオラ首席の鈴木康浩さんとでバルトークの「44の二重奏曲」から2曲という趣向。聴きごたえ大。二人はベルリン・フィルでいっしょに弾いていた間柄のよう。後半の「シェエラザード」は広上節炸裂で豪快だった。もっちり濃厚なアラビアン・ナイト。ブラボー多数。
●同日、AKB48の松井咲子が日テレ「読響シンフォニックライブ」の新司会に抜擢されるというニュースが! おそらくAKBファンがいっせいに「読響ってなに?」と検索したはずであり、この日は読響史上に残る被検索数が打ち立てられたのでは。一方ワタシは「松井咲子って誰?」って画像検索したのであった、スマソ、赤羽48。
近江楽堂でチパンゴ・コンソート
●10日はオペラシティ内の近江楽堂でチパンゴ・コンソート(杉田せつ子vn、懸田貴嗣vc、渡邊孝cemb)へ。これまでにエンリコ・オノフリとの共演で聴いてきたアンサンブルだが、今回は単体での公演(アンサンブル名もオノフリの命名なのだとか)。コレッリのソナタop5を中心にフォンターナ、ジェミニアーニ、ヘンデルらの作品を散りばめたプログラム。ヴァイオリンの杉田さんが師オノフリばりに首に巻いたロングスカーフで楽器を固定するスタイルを披露。親密な空間で、雄弁で精彩に富んだ演奏を楽しんだ。
●そのチェンバロの渡邊孝さんのファースト・アルバム、バッハのゴルトベルク変奏曲が先月コジマ録音からリリースされて絶賛発売中。格調高く、かつ情熱とファンタジーに富んだバッハ。国内盤にしては珍しく一枚に目いっぱい詰めこんだ79分半があっという間に感じられる。奏者自身による精到な解説付き。ジャケットも美しい。
「ファジル・サイ ピアニスト・作曲家・世界市民」(ユルゲン・オッテン著)
●つい先日の来日公演は行けなかったのであるが、来日に合わせて刊行された「ファジル・サイ ピアニスト・作曲家・世界市民」(ユルゲン・オッテン著/アルテスパブリッシング)を読んだ。ファジル・サイ、初のバイオグラフィー。サブタイトルに「ピアニスト・作曲家・世界市民」とあるが、特におもしろいのは「世界市民」としてのサイの姿。なるほど、トルコに生きるアーティストにはこんな軋轢が待ち構えているのかと多くを知った。つい先日、ファジル・サイがTwitter上でイスラム教の価値観を侮辱したということでトルコで起訴されたというニュースが流れたが、そこに至るまでの経緯、さらに大きな背景としてトルコにおける世俗主義とイスラム主義の対立が芸術家にどう影響するか、といったあたりがわかる。
●個人的にはファジル・サイはワーナー系レーベルで世に出た頃の印象が鮮烈で、その後活動の幅が広がってからは関心を失っていたこともあり、なんとなくサイには2種類の人物がいるような印象を抱いていた。その二人のサイがこの本を読んでやっとつながった気がする。あと、最初に世に出てくるまでの話も興味深い。ニューヨークのヤング・ コンサート・アーティスト国際オーディションで優勝して、全米弾丸ツアーでチャイコフスキーの協奏曲を山ほど弾かされていたという「アメリカン・ドリーム」実現時代とか。そのままアメリカを拠点に活動していれば普通のピアニストとしてキャリアを積んだだろうが、彼は9.11を一つのきっかけにしてイスタンブールに帰国する。トルコには兵役の義務もあるんすね。サイはお金を支払ってこれを1ヵ月に短縮し(普通は16ヶ月、学位があれば8ヶ月)、中身も形ばかりのものに変えることができたということなんだけど、一般的なトルコ人男性にとっては人生の一大事になるようだ。
クシュシュトフ・ウルバンスキが東京交響楽団の首席客演指揮者に就任
●先にfacebookページのほうでお伝えしたように、クシュシュトフ・ウルバンスキの東京交響楽団首席客演指揮者就任が発表された。任期は2013年4月からの3年間。1982年ポーランド生まれで、まだ29歳という若さながら2014年5月のベルリン・フィルへのデビューが決まっているとか。現在、インディアナポリス交響楽団音楽監督とノルウェーのトロンヘイム交響楽団首席指揮者(偶然だけどここもTSOだ)。今後どんどん名前を耳にする機会が増えそう。東響にはこれまでに何度か客演しているが、すぐに聴ける機会というと、「フェスタサマーミューザ」の2公演ということになる。8/7のドヴォルザークの交響曲第7番他と8/12のショスタコーヴィチの交響曲第5番他。ミューザ川崎がまだ使用できないので、会場はテアトロ・ジーリオ・ショウワ。思わぬ形で「フェスタサマーミューザ」への注目度が高まったかも。
●パーヴォ・ヤルヴィのN響首席指揮者就任に続いて、ノーマン・レブレヒトがウルバンスキの件もネタにしている。
●下はインディアナポリス響作成のプロモーション・ビデオ。イケメン、なんすかね。キュート? トロンヘイム交響楽団とのオルフ「カルミナ・ブラーナ」映像もあり。
先週はオケ週間
●先週はたまたまオケ週間に。4日はN響「外山雄三の世界」へ(サントリーホール)。作曲家外山雄三に焦点を当てて「ノールショピング交響楽団のためのプレリュード」、ピアノ協奏曲、管弦楽のためのラプソディー、交響曲「帰国」。協奏曲のソリストに中村紘子、司会に檀ふみ、トーク・ゲストに池辺晋一郎という「ドキッ!大御所だらけの管弦楽大会」。指揮は広上淳一で、最後の「帰国」のみ作曲者自作自演。外山雄三が指揮台に立ったとき、オケからものすごく張りつめた音が出てきて驚愕。トーク部分は池辺先生のダジャレ炸裂。これはTwitterに書いた。
●6日はハーディング指揮新日本フィル(すみだトリフォニー)。シューベルト「未完成」+R・シュトラウス「英雄の生涯」。おもしろいし、気力にあふれている。オケの響きは相変わらず美しい。
●7日は日帰りで名古屋遠征。常任指揮者に就任するマーティン・ブラビンス指揮の名フィル(愛知県芸術劇場コンサートホール)。バックスの「ティンタジェル」、ウォルトンのヴァイオリン協奏曲(独奏はコンサートマスターの田野倉雅秋)、ラフマニノフの交響曲第3番という意欲的なプログラム。昔はたくさん聴いた名フィルだが、約四半世紀ぶりに聴くことに。記憶の海に沈んでいるおぼろげな姿からは、すっかり進化している。客席も歓迎ムード全開、沸いていた。マーティン・ブラビンス、以前プロムスでブライアン作曲の「ゴシック」を振ってたっけ。
●8日はオーチャードホールの「N響オーチャード定期」。キンボー・イシイ=エトウ指揮。小菅優独奏のシューマンのピアノ協奏曲が見事。N響定期とは客席の雰囲気がずいぶん違って、若者の姿も多い。年齢層が上にも下にも広がっている。以前はこんな感じがフツーだったような記憶があるんだけど……。
N響首席指揮者にパーヴォ・ヤルヴィ。2015/16シーズンから
●N響首席指揮者にパーヴォ・ヤルヴィが就任。これはびっくり。N響とは2002年と2005年に共演しているとはいえ、前回からかなり時間も経っているし、次期指揮者の候補として予想していた人は少なかったのでは。就任は2015/16シーズンからの3年契約。パーヴォ・ヤルヴィは現在パリ管弦楽団音楽監督、フランクフルト放送交響楽団音楽監督、ドイツ・カンマーフィルハーモニー管弦楽団芸術監督。来季はベルリン・フィルの定期にも招かれるなど超多忙という印象だが、N響には就任に先立って2015年2月の定期公演に出演するとのこと。海外公演も計画されているという。
●在京オーケストラの指揮者陣がどんどん豪華になっていく。現状でもかなり華やかだけど、まさかこんな最前線の人がやってくるとは。
●Twitter上の本人アカウントもNHKニュースのURLをつぶやいている。本人すよね?
Naxos Music Libraryにワーナーミュージックが参加
●今日からNaxos Music Library(以下NML)にワーナーミュージックの3レーベル(Warner Classics、Erato、Teldec)が加わった。ついに(いや、ようやく)メジャーレーベルの一角が参加したわけだ。
●NMLは定額制のストリーミング配信サービスとして、ナクソス以外にも多くの主要中堅&マイナー・レーベルが参加している。レーベル数は500を軽く超え、CD枚数は6万枚以上。どんどん参加レーベルが増えてきた上に、最近は有名アーティストがメジャーを離れて独立系レーベルからCDを出すケースが増えてきたこともあって、このNMLさえあればかなり充実したライブラリーを手にすることができる。なによりストリームなので「所有しなくて済む」のがいい。物も増えないし、データも増えない。聴くだけ。
●CD時代から音楽配信時代への移行の着地点はおおむねこういう形になるだろうと期待していた。まだまだ新譜はCDが必要であるとは思う。コンサート会場ではCDが飛ぶように売れる。ライブの思い出の品、おみやげとしても最適。メディア向けのプロモーションにも物理媒体が必要。でも旧譜になったら、定額でストリーム配信だろう、と。
●2、3年前にナクソスの創立者クラウス・ハイマン会長にインタビューする機会があり、そのときにNMLについて「これだけ参加レーベルが増えてきたのだから、メジャーレーベルも参加しないのか?」と尋ねたことがある。なんとなく、メジャーがナクソスに乗るというのは業界的にありえないんじゃないかとか、ウチはメジャーとは違うやり方をしますよ、的な答えが返ってくるのかと予期していたら、そうではなく、「そうしたいと思っているが、メジャーは配信に関して国ごとに契約が必要になっていることが多い。一括してワールドワイドに配信できなければ困る」というような返答だった。純粋にビジネス視点だし、メジャー側も門前払いという状況ではないんだなという印象を受けた。
●今回、Warner Classics、Erato、Teldecが加わったことで、アーノンクールやバレンボイムもNMLに入ってきたわけだが、とはいえ、まだこの3レーベルのタイトル数はほんのわずか。膨大な音源があるわけで、これからどこまで拡充してくれるのか、気になるところ。
●以前購入したCDが家の棚にあるのに、同じ音源をNMLで聴くことがある。棚のどこにあるかわかならい1枚のCDを探してウロウロと時間を費やすくらいなら、NMLで検索して聴くほうが手っ取り早いから。
●とまあ、NMLは大変結構なものなのだが、残念なところもあるのでそちらも書いておこう。まず、1)ブックレットを置いていないアルバムが多い。PDFでブックレットも添えてくれるところもあるが、音源だけ置いてそれっきりというところも多い。 2)連続するトラックの間で音が途切れる。たとえば「運命」の第3楽章と第4楽章の間に一瞬の空白が入る。3) 本国版NMLには以前からEMIが参加しているのに、日本国内では聴けない。
●しかしナクソスの先見の明はすごい。メジャーの一角がナクソスが作ったプラットホームを利用するようになったわけだ。彼らが廉価レーベルとして登場した頃にタイムマシンで戻って、将来こんなことが起きると業界関係者に教えても、絶対に信じてもらえない。
二期会の「カヴァパリ」
●昨日、二期会の「カヴァレリア・ルスティカーナ」&「パリアッチ(道化師)」公演(7月13日~16日、東京文化会館)の通し稽古を見学。演出は田尾下哲、指揮はパオロ・カリニャーニ。歌手はダブルキャストで、この日は14&16日組。写真のように(元)体育館での稽古で、装置や衣装はほとんどわからないのだが、演出の田尾下氏が見学に先立ってプレトークをしてくださり、コンセプトはかなり伝わった。
●舞台設定としては「カヴァレリア・ルスティカーナ」はオリジナルそのまま、一方「パリアッチ」は1960年代のシチリアという設定になっている。で、この「パリアッチ」演出は秀逸! どの程度まで事前のネタバレが許されるものか悩むところだが、やはり何も知らずに見たほうがおもしろいと思うので詳細は控えるとして、例の「前口上」の場面でなるほどと膝を打つことになるはず。アイディアばかりが先行する読み替えではなく、もともとのドラマにより明快に筋を通し、なおかつ物語に現代的なリアリティを回復させるためのものとして、作品本来の意図に寄り添った演出になると思う。オリジナルでは書き割りみたいなキャラのシルヴィオにも納得できる役柄が与えられていて、「なぜネッダにとってシルヴィオなのか」が、はっきりわかる。あと、ネッダ役の髙橋絵理さんがすばらしい。歌も演技も。
EURO2012 決勝 スペイン対イタリア。最強チームが優勝
●ついに決勝戦。退屈な試合になるかもしれないと恐れていたが、こまったくの杞憂だった。スペインは結局「ノートップ」システムを貫徹、セスクの「偽9番」。GK:カシージャス-DF:アルベロア、ピケ、セルヒオ・ラモス、ジョルディ・アルバ-MF:シャビ・アロンソ、セルヒオ・ブスケツ、シャビ-FW:シルバ、セスク・ファブレガス、イニエスタ。一方のイタリアは内容のよかった準決勝の4-4-2を踏襲、悪悪ツートップ。GK:ブッフォン-DF:アバテ、バルザーリ、ボヌッチ、キエッリーニ-MF:ピルロ、マルキジオ、モントリーヴォ、デ・ロッシ-FW:バロテッリ、カッサーノ。
●序盤からコンディションの差は明らかで、有利な日程のスペインがボールを回す展開。しかもこれまでと違ってゴールに向かうパスが多く、この大会初めてといっていいくらいのスペクタクルにあふれたスペイン。早くも14分にイニエスタのスルーパスに飛び出たセスクが深い位置からマイナスのクロス、これがビタッとシルバの頭に合ってゴール(シルバのヘディングとは!)。前半からスペインのパス回しに「オーレ!オーーーーレ!」が出てたし。イタリアは長いパス一本でもバロテッリやカッサーノが前を向ければ何かを起こせそうではあったが……。41分、後方からゴール前へと猛然と走りこんだジョルディ・アルバに対して、シャビがレーザービームみたいなスルーパスを通して(あそこに通るの!?)、落ち着いて一対一を決めて2-0。
●イタリアはあまりにも不運。前半にキエッリーニが負傷交代、後半頭にカッサーノをディ・ナターレに交代、で、後半モントリーヴォに代えてモッタを投入したら、そのモッタが5分で負傷。接触ではなく筋肉系のトラブルのようで、これはもうどうしようもない。交代カードがないので、その後10人で戦うことになった。こうなるとあとは耐えるだけ。スペインは容赦なく攻めて、84分にシャビのスルーパスから途中出場したフェルナンド・トーレスが、さらに88分にはフェルナンド・トーレスのアシストで(自分でも打てたみたいだがプレゼント)交代して入ったばかりのマタがゴールを決めて4-0。イタリアが10人になった時点で、あとはスペインの美しいゴールを見る以外に試合の楽しみはなくなっていたので、その意味ではスペインは大会を盛り上げてくれたともいえる。決勝で4-0なんて、まず見る機会はないから。
●モッタはバルセロナ育ちの選手なんすよね。もともとブラジル人だし、この対戦だと「どうしてイタリアのほうにいるの?」みたいな不思議な感じがするんだけど、彼の負傷はあまりにも気の毒。イタリアに唯一幸運があったのはペナルティエリア内でのボヌッチの退場級ハンドを見逃してもらったことだけ。
●試合後のスタッツを見るとポゼッションがスペイン51対イタリア49でほぼフィフティ・フィフティになっていて、あまりに実感と異なるので驚く。まちがってない?
●スペインはこれでEURO2008、ワールドカップ2010、EURO2012と大会3連覇。かつてこんなに勝ち続けた代表チームは見たことがない。試合後のセレモニーがよかった。トロフィーをみんなで掲げて、セルヒオ・ラモスが亡き親プエルタのTシャツを着たり、選手の子供たちがピッチに入ってきて散っている紙ふぶきで遊んだり、父親といっしょに記念撮影したり……。なんだか泣ける。敗者とのコントラストも鮮やか。不満げな表情のバロテッリ、疲れ切って一段と皺が深くなっているピルロ、号泣するボヌッチ、プラティニと笑顔で握手をしてなんとなくさばさばして見えるブランデッリ監督。最後にスペインが持ち味を発揮してくれたので、大会の印象はずいぶんよくなった。決勝はシャビ、大会を通じてはイニエスタがすばらしかった。
東京ドームで「トゥーランドット」
●フィレンツェ歌劇場が今年11月の来日を発表している。なんと、チャン・イーモウ演出の「トゥーランドット」を東京ドームで上演するのだとか(Il Maggio torna a Tokyo con Turandot)。指揮はズービン・メータ。
●東京ドームでオペラというとバブル期の「アイーダ」を思い出す。代々木体育館でもあったっけ。「オペラ」という言葉が誰でも知っている日本語に登録されたのは、世の中全体が狂騒的なお祭り気分に浸っていたあの時代だったと思う。
●さてEURO2012、まもなく決勝戦、スペイン対イタリアへ。ここまでを見ているとスペインにはかつてほどの輝きは感じられない。ポゼッションという点では相変わらず最強で、イタリアに対してもゲームを支配するだろうが、見ようによってはゲームを停滞させるための守備的ポゼッションであって、「伝説」の予感はかなり薄い。あるとすればイニエスタのなにか。傍から見てイタリアのほうがおもしろそうとはなんという予想外な展開なのか。1-0でスペインが勝つといういかにも寂しい決勝戦は避けたいものだが。